第2章 ギルド難航編
第14話 四人で初めてパーティーを組みます。
どうしてオフ会したのか、それは単純な理由で断固としてボイスチャットを拒否するおっさん三人が、オフ会したいと言って聞かなかったからだ。
オフ会をすればレアアイテムもくれるし、それ以降はボイスチャットにも――。
『ごめんなさい、恥ずかしいのでやっぱりユズさん以外の方がいるときに話すのは……』
ルルから送られてきたテキストメッセージに、
「え、でもノノさんともアズキさんともオフ会で顔合わせたし……ギルドの仲間だから……」
『すみません……』
パーティーの連携を高め、各々の操作性向上のためにも今後は全員でボイスチャットするつもりだった。
――というか、オフ会ってそのためにやったんじゃなかったけ!?
いや、よくよく考えてみれば、ボイスチャットの交換条件にオフ会を提示してきたのはノノだけだ。
返事すらしてきていないが、アズキもマイクミュートのままだし。
『別に二人はいいんじゃないのー? ユズとアタシの二人でイチャイチャしてよーよ』
と唯一しゃべってくれているノノはろくな言葉を口から出さない。
ノノは身バレ対策――正確には、親しくない相手に自分がアイドルであることを気づかれないためにボイスチャットしていなかった。
だからもうアイドルの
ただ後の二人は、ノノに便乗してレアアイテムの代わりにオフ会へ来ただけ。
え? あのオフ会って本当になんだったの? 私が貢がれただけのやつ?
レアアイテムが増えることにはなんの文句もないし、三人がおっさんではないと知れたことは良い面もある。
ただし、失ったもの大きい。
相手がおっさんではなく美少女と知ってしまったことで、今までのように接することができなくなってしまった。
そして何より――。
私のファーストキスがカラオケの女子トイレの前で奪われてしまったのだ。
いや、いいんだけどね、別に。
元々誰にくれる予定があったわけでもないし、相手が可愛い女の子だったからか、かなりの驚きとちょっとした抵抗感はあれど不快な気持ちにはなっていない。
――もしかして、私ってけっこう同性もいけるのかな? いやいや、そういうんじゃないんだよ。なんていうかルルはお人形みたいな美少女で、小動物みたいな感じだから、子犬になめられたような気持ちで。
「……とりあえずじゃあ、ダンジョン潜るから二人はテキストで適宜連携取ってこうか」
不毛なことを考えても、
私には打鍵音シンフォニアムを最強ギルドにするという使命があるのだ。
時間は一分一秒でもおしい。
ヴァンダルシア・ヴァファエリスで上を目指すとなると、具体的な事で言えば主に三つの目標がある。
一つ目が、期間限定ダンジョンを攻略するランキング勝負だ。
イベントのために新規実装されるダンジョンを競って攻略するものだ。
情報のないダンジョンをどれだけ早く攻略できるか、またダンジョン内に隠されたいくつかのギミックをどれだけ回収できるかなどので、ポイント算出した結果をランキングして発表することになる。
新ダンジョンはかなりボリュームも難易度もあって、攻略に与えられる期間も一ヶ月ほどだ。その間でいかに隠し要素を見つけつつ、早く攻略するかを競うのである。
二つ目が、PVPつまりプレイヤー同士のリーグ戦だ。
ランダムでいくつかのグループに分かれて、グループ内での総当たり戦をして、勝ち上がりでまたいくつかのグループで総当たりをして――と最終的には、一つのパーティーが勝者になるまで戦うことになる。
プレイヤー同士の戦闘は基本的に時間がかからないので、四日間で行われる。
仮にすべてのグループリーグを勝ち上がって、最後のリーグにまで残るとその短期間に五十戦近く戦うことになるそうだ。
三つ目が、ギルドによる拠点攻防戦だ。
ある一定以上のギルドランクになると、ホームとは別に攻防用の拠点を構えることができるのだが、そこには他のギルドから攻撃を仕掛けられることがある。
こちらについては、直接戦うわけではなく拠点に用意した防御対策でどれだけ攻撃を
逆に攻撃した場合は、向こうの防御をかいくぐって相手の拠点を制圧できるかということになる。
拠点制圧されれば、ギルドランクを決定するランクポイントが下がるし、ギルド内の資金やアイテムの一部も奪われてしまう。
もちろん攻撃側であれば、ポイントも資金もアイテムも手に入れられる。
これに関しては期間が決まっているものではなく、恒久的にギルド間での小競り合いが行われていて、現状のギルドランクが勝敗そのものとなる。
と、この三つなのだが共通して言えることは、どれも一人では勝負できないのだ。
ギルドの拠点攻防戦はもちろんのギルドがなければ参加できないものであるし、ダンジョン攻略とPVPリーグ戦については四人でパーティーを組めないと話にならない。
――エントリーするだけなら、一人だけのパーティーでもできるんだろうけど。
つまり四人いる。
もしギルドの拠点戦についても本格的に考えるならもっと人数が必要だが、こちらは短期間で結果を出すことに向いていないため今は考えていない。
ダンジョン攻略とプレイヤー戦闘の二つで、上位の結果を残す。
上を目指すためには、息の合った固定メンバーでの四人パーティーが必須なのだ。
それなのに。
『ねえねえー、ユズってゲーム中はどんな服着てるのー? 部屋着見たいなぁ』
「ノノさん、ゲームに集中してって」
『えー? アタシのプレイ全然問題ないでしょ。普段チャット打ちながらでも大丈夫なくらいなんだし、雑談しながらやっても問題ないってー』
「そうかもだけど……」
たしかに、ノノ――ノノんがノノのキャラクターはいつもと変わらない機敏な動きで、モンスター達を
『ノノさん、わたしも今はそういう話するべきじゃないと』
「あっ、ちょっとルルさんっ!! 防御補助切れてるからっ」
ルルのテキストメッセージよりも、私はアズキにかかっている防御補助魔法の効果がなくなっていることに目が行った。
普段ならこんな凡ミスはしない。会話で気が散っているのだろう。それか。
『すみません……わたし、うっかりしていて』
「いいよ。たいしたミスじゃないから次気をつけてくれれば」
『でも、わたし許せないんです』
「いや誰にでもあることだから」
ルルのテキスト相手に、ボイスチャットで返事をしていると。
『ノノさん、さっきからユズさんが迷惑そうにしているのがわからないんですか?』
「え? 許せないってそっち?」
『なになにールルちゃん、自分のミスあたしのせいにする気なの!?』
『……ミスはわたしの責任です。でも、ノノさんがユズさんに迷惑をかけているのも事実ですから、それをやめてほしいんです』
たしかに迷惑といえば迷惑なんだけれど、これくらいのセクハラまがいな要求は日常茶飯事だった。
だから今更取り沙汰されると、私もどうしたらいいか困るのだけれど。
「えっと、いやぁ、まあ仲良くね? 私もそんな気にしてないし……でもまあ、戦闘には集中してほしいかなぁ。……アズキさんもそう思うよね?」
『僕のデータでは、ユズはゲーム中に高校のジャージを着ていることが多い。そして色や生地感、だいたいの住所からユズや通っていた高校は――』
「ちょちょちょっとアズキさん!? やめてってば!!」
ジャージはよく着ていたが、部屋着写真をおっさん達に見せたことはない。
どうして知っているのか。そしてなにより卒業高まで絞り込まれていることに恐怖しかない。
だが今それよりも問題なのは。
――このパーティー壊滅的に相性が悪いし、問題が山積みだよねっ!?
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