記入者に関する情報と環境について その42

やられたな...。


物資や食料などは、どれだけ持ち出されたのだろうか。


まさか私と山下君以外の全員がここを出て行ったとは思いたくないが、他の学生達と会わなかったところを見ると、かなり多くの者が車で出て行ったと考察できる。私と山下君を除けば11人か。


どうしたものか。

その場で腕組みして考え込んでいると、山下君が、やってきた。

気弱な坂本と、ゾンビに咬まれた倉橋を連れている。良かった。彼らは残っていたのだ。


「あー、やっぱり。車が無い」

山下君が言った。


「一大事ですよ。あいつら、車を盗んで逃げやがった。倉橋の言った通りだ」


「え?え?どういう事?」


「有田紗智ですよ。中瀬美月さん達を煽ってたんです」

倉橋が応えた。


「それで、何人くらい逃げたの?」


「4人か5人かな」


思っていたより少なかった。

いや、考えてみれば、持って行かれた車は、普通の乗用車だったよな。それほど大勢は乗れないはずだ。

ギュウギュウに押し込んだとしても、荷物を入れると、せいぜい4,5人までが精一杯か。そんなものだな。


「その他の人達は?全然、見当たらないんだけど」


「雑木林の方だと思います。薪を拾いに」


大学の構内には、雑木林がある。この正門とは真逆の場所だ。

プロパンガスを節約するため、晴れた日は外に作った竃で薪を燃やし、料理している。

そのため、時々、総出で薪を拾いに行く事があるのだ。それにしても、このタイミングで?


そうか。正門から皆が離れたタイミングだから、決行したというわけか。小賢しい。


どうしようか。追いかけるのは難しそうだし、そもそも追いかける必要があるか?

我々4人で考えていると、塀の向こう側から、誰かがヒョイと顔を出すのが、視界に入った。


何と有田紗智だ。

塀の向こうに梯子が立てかけてあるらしく、ゆっくりと塀を乗り越えてくる。

有田紗智は、こちらに気付くと、手を振ってきた。

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