第63話 プールサイドの格差社会を中和するレアぴっぴ ~格差社会の象徴・もえもえを黙らせろ~

 山森幻桃さん。

 近衛宮萌乃さん。


 水着に着替えてプールへ登場。


「……小松さん!! なんというか、お脱ぎになられると! もえもえの想像以上に逞しくて、もえもえの胸がキュンキュンしました!!」

「お嬢はなーんも知らねっすね! 秀亀さん、フィジカルやべぇんすから! 腹筋バキバキだし、お尻で割り箸粉砕できんすよ? 力こぶとか、ウチの凡パイよりデカいんす! パナップなんでー!!」


「ヤマモリレアピーチちゃんはやっぱり物知りですね! では! もえもえも小松さんの力こぶともえもえのバレーボールの大きさ比べを!!」

「いや何してんすか!! ダメに決まってぃーんすけど!! お嬢のボインはもう直死の魔乳なんで!! んなもん秀亀さんに当てたらどうなるか! 分かんねーんすか!!」


「殿方はバレーボールを愛してやまないと伝え聞いておりますけど。父と祖父と曾祖父も、バレーボールの虜です!!」

「なんすか、お嬢の家! 乱れってぃーなんすけど! あー、ヤダ! 格式が聞いて呆れるパイパラダイスじゃないすか! どー思うすか、秀亀さん!!」


 桃さんがよその家の性の乱れを指摘すんのかよ、とか。

 近衛宮家ってやんごとないのに歴代当主の性癖もやんごとねぇな、とか。

 色々とツッコミたいことはある。


 あるが、まずはね。

 君たち。


 準備運動すっ飛ばして、プールに入ってもらえるかな?



 小春ちゃんが俺の横で、全集中・乳の呼吸してっからさ!!

 斬られるの俺なんだよ! ヒデキ知ってる!!



「……ははっ。秀亀さん? スクール水着ってね。喜津音女学院はみんな同じデザインなんですよ。ご存じでした? マリーちゃんみたいに競泳水着選ぶ子もいますけど、太ももと胸元のバーゲンセールしているかどうかの違いで、同じデザインなんです。そのはずなんですけど。……私が知らない間に、デザイン変わってますよね?」


 小春ちゃんの視線は、一直線に萌乃さんのバレーボールへ。

 まずいな。


 運動が苦手なはずのこはるん、今にも強烈なスパイク叩き込みそう!!


 よし。

 生贄を捧げよう。


「あれれー! 小春ちゃん! 見てごらん! 桃さん! 真っ赤なビキニだねー! なんだか、胸のところに穴が空いてて、とってもセクシーだねー!!」

「うっす。え? なんすか、その頭はギンギン、体はショタショタな名探偵ムーブ。ウチ、麻酔針で眠らされんすか? 優しくしてくだすぃー!!」


 こうするしかなかった。

 萌乃さんは確かに小春ちゃんと同じスクール水着。

 ばあちゃんいわく「清楚に隠れてた方が、色々捗る時代なんだよ!!」とか、学院長が言っちゃダメな事を口にしていたが、今ならなんか分かる!!


 ぴっちりとガードされてるだけに、もう破壊力がすげぇことは秀亀も分かる!

 ヒデキ? ああ、しょんぼりしてるよ?


 戦争が起きようかってのに、元気になるヒデキとか不謹慎じゃん。


「……レアピさん。泳げないんですよね?」

「うす! 運動は好きな凡ピーチっすけど、水泳はダメダメピーチっす! ……こはるるーさん、目がアリエッティな鋭さなんすけど?」


「良くないと思います。私。泳げないのに、胸に通気口開けるとか。危ないじゃないですか。いざという時に、よく分からないですけど、危ないですよね?」

「えっ? 何がどうなってそうなんすか? や。ウチのがっこ、水泳ないんすよ。で、喜津音女学院時代のスク水探したら、パパピがホストクラブのじゃんけん大会の商品にしてて。急遽買ったんすよ」


 相変わらず、煩悩まみれの一休さんだね、パパピ。

 史実の一休さんも結構な畜生だったけど、転生者かな?


「レアピさん」

「やー! でも、あれすね! こはるるーさんはスク水より、ビキニ似合いそっす!」


 ここで桃さん、予想外の反撃に打って出る。

 本人は戦ってるつもりないみたいだけど、俺はもう爆風で身が焼かれ、流れ弾がいつ鍛えた胸筋を貫いても良いように覚悟してんだ。


「え? え?」

「こはるるーさん、スリムっすから! ビキニってあれっす! ムチってる女子が着ると、デザインによっては品がなくなるんで! お嬢とかが着たら、マジでもえもえどころかそこらのメンズがバキバキっすよ。一緒にプールサイドなんか歩けねっす。そこいくと、こはるるーさんはぜってぇ上品に着こなせるんで! 可愛い清楚とかイケイケっす!」


「え、あ。わ、私、学校指定の水着しか、その、買ったことがないので」

「そーなんすか!? もったいにぃーっすよ! 今度買いに行きましょ! レアピーチ! こはるんピーチに合うディなヤツ、一緒に探しまてぃーすよ!!」


 ギャルのコミュ力ってすごいや!

 桃さん、商学捨ててさ、交渉術とか学ぶのはどう?


 世界から争いが減りそう!!


「ええと、小松さん? こはるるーさんは何か憤慨しておられたような? もえもえも近くで寄り添って差し上げた方がいいですよね? 先輩として」

「よし! もえもえは俺と一緒にストレッチでもしとこうな!! 絶対に近づいちゃダメ!!」


「ひっ!? あぅ……。もえもえ、殿方にここまでストレートに求婚されたのは初めてです。某大手メーカーの御曹司様がもえもえのバレーボールについて15分語った時には、気付けばゴム弾でハチの巣になっておられましたけど、小松さんはきっと大丈夫ですね!!」


 どっちに移動しても爆弾が道ふさいでるボンバーマンの気持ちがすげぇ分かる。

 いつも殺してごめんな、白ボン。


 俺もすぐにそっち逝くから、その時は謝らせてね。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 小春ちゃんと桃さんが組んで準備体操を始めてくれた。

 ありがとう、ギャル。

 ギャルじゃないけど、もう名誉ギャルってことで秀亀は認めようと思う。


「よーく体ネジっとかねぇと、いざって時にやべーっすからね」

「あぐぐぐ! い、痛いです。あ、あの? レアピさん!? ねじる必要ありますか!?」


 小春ちゃんがねじ切られそうだけど、今そっちには行けないんだよ。


「小松さん! もっと強くお願いします! もえもえ、身長が低いので! 目いっぱい押してもらえないと、バレーボールが突っかかって、ストレッチになりません!!」


 これ持って行ったら、ダース・こはるんになるでしょう!?


 ぼっち警察とマリーさんは何してんだ!!


 どっちも小春ちゃんに特効ありなのに!!

 さては飯でも食ってやがるな!?


 おい! マリーさん!! 早く来い!!


(急かさないでくださいよー。あと、泳ぐ前にご飯食べるほどあたし、バカな子じゃないですから!!)


 マジかよ。

 そこはちゃんとアホの子でいて欲しかったな。


(どうしてアホにならないといけないんですかぁ!? このインテリマリーが!! あ! なんか語呂がいいですよ! インテリテリテマリー!!)



 良かった!! ちゃんとアホの子だ!!



 で、何してんの?


(新菜さんの着替えをお手伝い中ですよー。聞いてくださいよー。新菜さんってば、大学生になってから泳ぎに誘われたことないから、高校時代のヤツ持って来たぜー! とか言ってー。全然サイズが合わないんですよー! しかもビキニ! こんなの、ちょっと泳いだらポロリどころか、ズルリですよ!!)


 やっぱこっち来ないでくれる?


 ビキニについて散々フォローしてくれたレアぴっぴの演説がね、全部着火剤に変わるから。

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