第23話 みしらぬほしでわたしはひとり



あ?

えっと……何だっけ。


意識すると知らない場所にいた。

ここは何処だろう……?

あぁそうだ。混乱して……私。歩いてきたの?

本当に私たちは授業としてここへ来たの……?

何だ?何で?


¿?¿?¿?¿?¿?¿?¿?¿?¿?¿?¿?¿?


わからない、や。


ぐるぐると嫌な気持ちが私の中を巡っている。取り巻いている。

ゆらゆらと視界が蠢く。ひたすらに気分が悪い。


嫌だ嫌だ戻りたくない。戻りたくないって。


元気で楽しい私で居させてよ!!

まだ、これからだったじゃん!!


お願い……また会わせて。

何かの間違いだって。


その叫びに返事はない。

三人とも動かなかったんだ。

他のラノハクトの人達も。

地球人と同じで。

嘘でしたと言って。

世界に閉じ込められた。

誰も動いてない。


ただただ、虚しかった

なにも私にのこされてないんだって


あぁ




もういいや


ぷつりと、なにかがきれたような。

こころがおれてしまったような。

あきらめてしまったような。


あのわたしにもどったの、か、な。


おちつけたけれど、

いまのわたしはほんとうのわたしじゃないんだ。


っておもっていたいのだけれど。

ほんとうのわたしはこっちなのかもしれない。


おちついたけれど。かわらないや。

なにも。げんじつは。

あああ。いっそわたしもいっしょにとまってしまいたい……


ときめいていたすこしまえのわたしのこころにはもうもどれないの?


……。


おもいかえすとずっとじぶんかってでよくかんがえずにこうどうしていた。ちきゅうにきてもかわらなかった。

かわれなかった。


もうだめだ、いくらあかるくふるまってもめいわくかけてばかりでどうせわたしはわたしなんだよ

ぬりかさねてもぬりかさねてもなかみはおなじ。そしていつかはがれるんだ。


このせかいにはあらがえないんだ──


なにをしてもかわろうとしてもわたしはわたしだし

せかいはせかい。

いつもいつまでも


いつまでも いつまでも いつまでも


そらがきれいだなぁ

いつまでも いつまで──



……はっ!


私は蝕まれながら疲れて……、いつの間にか寝ていたらしい。

何日ぶりだろうか。


まだ視界が歪み、揺れ、定まらない。

でも体はうっすらとこの世界の太陽の暖かさに包まれていた。

いろいろな事をひたすら考えていた気がするけれど、

答えは見当たらなかったと思う。

ぼやけた地球のまま辺りを見渡す。

少し不思議な雰囲気を感じとる。

“伝統的”というやつだろうか……?

凝った建物、古そうな石の道、石の門……あとは?


「鬼祥神社」?


"キキザシジンジャ"

石柱に力強く刻まれた、そこまでされた文字列はこの場所の名前だろうか。

心が落ち着かず頭も回らない。

不気味な大木たちに囲まれ辺りは薄暗く、その重たい光景に飲まれている。

この辺には誰も居ないのだろうか……?


地球の見たことの無い場所、残された私は一人きり。重たい感情が全身にのしかかり、この場に凭れるしかなかった。

このまま、消えていくのかな。

だめ、まだ諦めないよ。

萎んで小さくなった心の中にまだ仄かにいるんだ。

あの子が。

今いる場所をどうにかして伝えなきゃいけないのに。

うぅ……。

気分が悪い。そんな状況ではない。

端末を握る力も出なかった。


「先生たちへ連絡……」

画面は固まり、正常な表示はない。

だめ?入り直しても?


……ん。だめか。


え……と、ビデオ通話……戻さなきゃ。


呼吸を整えようと……する。

ふぅ。

はぁ。

ひぃ。


ん?


遠くからかけ足の音が聞こえてくる。

あれ?来てくれたの……?


石の階段を上りきった彼の姿を見てホッとしつつも彼の困惑した表情をこの現実が真実であることを確信した。

「どうしてこんなことに……?」

「……わからない」


5秒間の世界に閉じ込められたあの三人の顔が不意に過る。

あぁ……。

そんな私に息を切らした灰色くんが寄り添ってくれる。


「動かなくなったって、……この事態に何も心当たりは無いの?」

「無いよこんなの。知らない。」

今の私の感情を全て乗せながら言う。知っていたらこんな苦しみ味わわずに済んだのに。


「本部ってとこに連絡はできないのか……?」

「だめ、エラーが出る。何度やっても繋がらない。」


「僕ら以外にも動いている人がいるかもしれない。ここである程度休んでから一緒に色んなとこ行ってみよう」

そんな提案が何も出来ない私を少しだけ勇気づけてくれた。

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