第2話 爆弾処理のような選択に追い込まれている…

「ねえ、どっちがいい?」

「私の方だよね、浩乃先輩?」


 双方から聞こえてくる可愛らしくも脅迫染みた口調。

 美少女から板挟み状態になっている今、浩乃は色々と絶望を感じていた。


 昼休みの今、東浩乃あずま/ひろのは校舎裏のベンチに座って食事をしているわけだが、両隣を見れば、二人の少女がいる。


 一人はこの前から付き合い始めた美少女――桐野由羽きりの/ゆう


 もう一人は、中学の頃からの交流がある、後輩の多岐川朱莉たきがわ/あかりである。


 その二人の弁当を食べる羽目になり、気が気ではなく困惑していた。


 美少女が作ってくれた料理を食べる。

 それだけであれば、至高の一時かもしれない。


 しかし、そんな生易しいものではないのだ。


 彼女らに見られながら、どちらかを選ばなければならないという絶望。


 女の子に好かれるというのも怖いものである。


 判断を一回でも間違えば、地獄。

 正解すれば、天国かもしれない。

 そこに確証はなかったのだ。


「君は、私の方を選ぶよね?」

「断然、私の方ですよね、先輩?」


 互いに張り合うように、箸で摘まんだ、各々おかずを浩乃の口元へと押し付けてきている。


 由羽からは卵焼き。

 朱莉からはタコさんウインナーだった。


 彼女らが押し付けてきているそれは自信作のおかずなのだろう。


 どちらからもいい匂いが漂い、食べ応えのある香りに浩乃は圧倒されつつあった。


 ど、どっちを選べばいいんだ?


 浩乃は困迷い、双方のおかずに悩んでばかりいた。


 付き合いたての彼女のおかずを無視するわけにもいかない。

 それに、後輩からのおかずも魅力的であり、拒否するのも申し訳ない気がした。


 昔、浩乃は幼馴染とのやり取りで失敗したことがあったのだ。

 だからこそ慎重になっている。


 いわゆる爆弾処理のような感じであり、どちらの配線を選ぶかで、学校生活が色々な意味で爆発するだろう。


 まだ、クラスメイトとかには、この現状を見られているわけではなく、まだ何とかなっている感じだ。


 しかし、安心はできない。


 もしかしたら、どこからか、この美少女らとのシチュエーションを見られているかもしれないからだ。


「私のから食べてよね、浩紀」


 由羽は気軽な感じに、浩乃の口に強引におかずを詰込んでくる。


「んッ」


 突然の行為に、戸惑う。


 少々むせてしまった。


「そんなの強引すぎますから」


 後輩はちょっとばかし怒りを露わにしてくれている。


「浩乃先輩、水です」

「あ、ありがと」


 朱莉は気が利いていて、ちゃんと水を用意してくれていたのだ。


 浩乃はその水で喉を潤し、口内をリセットさせたのである。


 これで、一安心か……。


「では、次は私のですからね」


 と、後輩も躊躇することなく、おかずを口内へと押し込んできたのである。


 そ、それはまずいって。


 浩乃は反応を返そうとするが、後輩からの強引なアプローチにより、対応しきれずにいた。


「……⁉」


 朱莉の手作りのおかずを口にする。


 確かに美味しい。


 それはわかっている。


 後輩とは中学からの付き合いであり、体育祭の時なんかには、なぜか弁当を作ってきて来たこともあるくらいだからだ。


「どうですか? 美味しいですよね?」

「あ、ああ」

「私、朝早くから先輩のことを思って、一生懸命に作ったんです。それは美味しいはずです」


 後輩は自信ありげに胸を張って、自画自賛していた。


「ねえ、ちょっと、浩乃が困ってるじゃない」


 由羽の声が聞こえる。

 が、その直後、右腕に柔らかいものが接触した。


 何かフワッとするものであり、浩乃はドキッとしてしまう。


 浩乃は右の方を見る。

 すると、由羽の胸が接触していたことが判明したのだ。


 まさかとは思っていたが、それはさすがに積極的すぎる。


 食事中に別の方も満たす羽目になるとは……。


 浩乃は唾を飲む。

 そして、料理で圧迫されていた口内をリセットさせたのである。


「そういうのは反則なのでは?」

「何が?」


 後輩の発言に、由羽は何の話といった感じに、言葉を切り替えしていたのだ。


「そういう風に誤魔化すんですね。でしたら、私にも考えがありますから」


 後輩も急に加熱したような口調になる。


「私もッ」

「⁉」


 突然なほどに接触する胸の膨らみ。


 それは今、双方から伝わっていたのだ。


 これは逃れられない運命になるのかもしれない。


 たとえ、ここが、校舎の裏庭だとしても、やっていいことと、やってはいけないことがある。


 多分、今のこれはやってはいけないことであろう。


 誰かが、こんな場所にやってきたら、何かと面倒なことになりそうなシチュエーションである。


「私のはどうですか?」

「そ、それは……」


 浩乃はどぎまぎしていた。


 昼食中だったのに、今では双方からおっぱいを感じているからだ。


 由羽のおっぱいと後輩のおっぱい。

 それぞれに違う感触と魅力がある。


 けど、接触しているからこそわかるものがあり、発育具合が違うのが一目瞭然。


 由羽のおっぱいには膨らみがある。


 朱莉からまだ、そこまで大きさは感じないものの、昔と比べるとそれなりに成長していると思う。


 どちらがいいのかと言われれば、由羽の方かもしれない。


 しかしながら、成長の見込みのある後輩のもいい。


 料理の味とかではなく、おっぱいの見定めのような感じになっていたのである。


 そういうことじゃなくて……。


 浩乃は必至に、エロいことから思考をもとに戻そうとする。


「というか、食事は?」

「そうですね。では、もう一度、食べてもらいましょうか」


 由羽はそう言うと、おっぱいを押し当てたまま、おかずを口元へと近づけてくるのだ。


「私も」


 後輩も負けじと、箸でおかずを掴み、浩乃の口元へと近づけてくる。


 浩乃は二人からのおかずは再び口に含んで咀嚼することになった。


「浩乃先輩、私の方がいいですよね」


 おっぱいを押し当てて言う。


「付き合っている私の方が美味しいわよね?」


 由羽もおっぱいを使って、攻めてきている。


「……ん……」


 浩乃はようやく咀嚼し終わる。


 そして、口を開いた。

 最終結果を告げるかのように――


「ゆ、由羽の方かな……」


 左には後輩がいて気まずかったのだが、やはり、おっぱいには勝てなかったのである。


 浩乃は欲望に忠実な発言をしまったのであった。

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