幼なじみのことが好きではない俺が、学校一の美少女から告白されたら、ハーレムになった件

譲羽唯月

第0話 美少女から告白されたら…

「今日から付き合ってくれない?」


 ある日の朝。

 校舎裏。

 東浩乃あずま/ひろのは、黒髪ポニーテイルな美少女から告白された。


「付き合うっていうのは……」


 いきなりすぎて、浩乃は動揺していた。


「私とデートってこと」

「え? でも、急には……」

「もしかして、今、付き合っている子がいるとか?」

「それは……いないけど」

「じゃ、問題ないんじゃないかな?」


 浩乃が積極的になれない理由。

 それは以前、恋愛関係で幼馴染と揉めてしまったことがあったからだ。

 だから、女の子と付き合うことに抵抗があった。


 また、女の子に迷惑をかけてしまうのではないかという不安が、脳裏をよぎる。


「ね、どう?」

「……わ、わかった」


 浩乃は一応、頷いておく。


「本当? ありがと」


 桐野由羽きりの/ゆうから向けられる笑み。

 その表情を見、浩乃はドキッとしてしまう。


 学校内で、一番の美少女なのだ。

 男子であれば嬉しくないわけがない。


 恋愛に対してはまだ、奥手なところがある。

 でも、このチャンスを逃したら、一生美少女から告白されることはないと思ったからだ。


「あとの話は、また放課後ね」


 由羽は気さくな感じ言い、校舎裏から立ち去っていくのだった。






「というか、東君って、あの子と付き合うことになったの?」


 浩乃は、黒髪ロングな美少女の問いかけに対し、頷いた。


「へえ、そう。意外ね」


 昼休みの今、浩乃は部室にいる。

 先輩でかつ、部長の南海果那みなみ/かなと同じテーブルを囲み、席に座っていた。


「……」

「先輩、どうしたんですか?」

「いいえ、なんでもないわ」


 急に果那先輩が無言になったことで不安になってしまう。


「でしたらいいですけど」

「それで……今日の部活はどうするの? 来れる感じ?」

「それがちょっと用事できまして」

「……用事というのは、デートみたいなこと?」


 浩乃は頷いた。


「まあ、いいわ。今日はそこまで忙しいわけでもないし……」


 浩乃は果那先輩からちょっとばかし、敵意を向けられている感じではあった。


 でも、現在、浩乃が在籍している部活はフリーな感じであり、好きな日に来て好きな日に休むことが可能なのである。

 けど、一週間に二回以上は来なければいけない。

 そんなルールがあった。


「では、今日は来ないってことね」

「はい、すいません」

「まあ、わかった。別の日ね」


 浩乃は申し訳ない程度に頷くことしかできなかった。






 浩乃は果那先輩とのやり取りを終え、校舎の廊下に出た。

 そして、教室に戻るために廊下を歩いていたのだ。


 刹那、足音が聞こえた。


「先輩ッ」


 ん?


 急に背後から声を掛けられる。


 足音と、その特徴的な声。


 隣にやってきて話しかけてきたのは、ショートヘアで小柄な体系の後輩――多岐川朱莉きたがわ/あかりであった。


「さっき、部室にいましたよね。何してたんですか?」

「何って、部活のことだけど」

「ふーん、そうなの?」

「うん」

「というか、浩乃先輩って、誰かと付き合い始めたんですよね?」


 今日に限って、朱莉はグイグイと攻め込んだ話題を振ってくる。


「な、なんで知ってんだ?」

「そういう話を耳にしたので」


 後輩の朱莉から、ちょっとばかし嫉妬深い感じに言われてしまう。


「私とも付き合ってくれませんか?」

「え? 付き合う? それは無理というか。付き合っている子がいるし」

「でも、二番目でいいので」

「そういうのは俺が困るから。じゃ、じゃあ、友達っていうのは?」

「……友達? それは元からじゃん」

「そ、そうだな」

「でも、私、浩乃先輩のことが好きなので。先輩が、その彼女を振るまでずっとアプローチし続けますね」

「⁉」


 それは流石にキツいって……。




 桐野由羽は学校の美少女なのだ。

 そんな子を振ったら周りからの敵意が物凄いものになるだろう。


 浩乃は今後のこと考えると、ドッと疲れたが増した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る