第28話 門出
出立の日、装備品の買い出しも兼ねて、ノエルの父の下へ報告に訪れた。
「というわけで、王女様の護衛をしながら冒険を続けることになりました。なんとかしばらく食べて行けそうです」
広い魔道具店、カウンターで勘定を行っていたノエルの父に娘から旅立ちの報告。報告を聞いたノエルの父は何度か瞬きをしてから
「よかったな、王女様の護衛と言うことは女王陛下に認められたということだろう? まさかそこまで我が子が成長するとは思わなかったが、私も嬉しいよ」
父からの賞賛の言葉にノエルが胸を張る。
「そうでしょうそうでしょう、お父さんが思っているより私はずうっとすごいんです! だからきっと、今回の旅も無事に帰ってこられます。だから……」
言いかけて、ノエルの声に嗚咽が混じる。
「だから、心配、いりません……さんざん冒険して、もっと立派になって、そうしたらまた帰ってきますから」
ノエルの父の目にも涙があふれ、それを隠すようにノエルの頭を撫でる。
「……元気でな、強くなって帰ってこい」
俺とレンはそっと店の外へ退出し、これからの行程について話し合った。
十分ほどしてノエルが合流し、王都正門で待つミルーナの下へと向かう。時折ずずっと鼻をすするノエルを励ましながら、家族との別れについて考える。
俺は生まれた時からいつか転生の時が来るとわかっていた。だからこそ、親と急に別れるなんて当たり前のことで、親も親の親もそうしてきた。だがノエルは、こんなに泣いていても親と別れ自分の道を進むことを選んだ。
なら俺もこの旅路の目的くらいは、自分で選んで決めよう。そうーー
「なあノエル」
「ぐすっ、何ですかタスクさん」
「俺、強くなるから。ノエルも、レンも、ミルーナも、全員守れるくらい、二度とあんなことさせないくらい強くなるから」
俺の決意に、なぜかノエルが笑い出す。
「おい、笑いどころじゃないぞ今のは」
「ふふ、すみません。だってあんまり格好つけて、あんまり格好良かったので」
頬に朱がさすノエルに、レンが抗議を始める。
「ノエルと言えどもタスクは渡さない。厳重注意、二度は無い」
「そ、そういうのじゃないですから!! 私はタスクさんの保護者というか、責任者なわけで、その辺の観点からですね……」
「はいはい」
顔を真っ赤にして怒るノエルと、それをあしらうレン。こうして見ると仲の良い姉妹のようだ。ノエルの長い銀髪と、レンの短い青髪が、風に吹かれてふわりと揺れる。
「二人とも、そろそろミルーナとの合流だぞ。女王陛下とも会うんだから、気を付けてな」
街の正門が近づくと、ミルーナと女王が馬車から降りて別れの挨拶をしているところだった。遮る形で申し訳ないと思いつつミルーナに声をかける。
「あら、タスクさん、予定よりお早い到着ですね」
ミルーナは白金製と思われるプレートが随所に縫い付けられた戦闘服を着こんでいた。女王は依然と変わらず、真紅のドレスに同色のハイヒール。女王の歩く場所にはレッドカーペットが敷かれる徹底ぶりだ。これが身分の差と言うやつか。
「おう、前も言ったがくれぐれもよろしく頼むぞ。どんな意味だろうと傷物にして返してみろ、どこへ逃げようとその首刈り取ってやるからな、ヒヒヒ!」
からかってるのか本気なのか、いまいちよくわからない人だ。
「女王陛下への忠誠に誓ってお約束いたします」
「バカめ、異世界人に忠誠など求めるものかよ。とにかく全力で守れ、以上」
レンが反論しかけるも、ノエルが必死で押さえて事なきを得る。
「さて、それでは諸君、女神の祝福があらんことを」
四人、声をそろえて返事する。
「「「「行ってまいります。グランドツアーへ!!」」」」
異世界転生三代目~作ろう! 異世界攻略マニュアル~ レモン塩 @lemonsalt417
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