第59話  彼女の隠していた事実とは(1)


「はいはい、わかりました。言えば良いんでしょ。もうバレる事だから話してあげるよ。でも、信じて欲しいんだよね。これから話すことは日奈ピとは無関係。私が勝手にやった事だかんね」

 同意を求められて日奈は無言のままコクコクと頷いている。

「わかった、日奈は無関係って事ね。じゃあ、あなたは一体何をしたの?」

「何となくは気づいているんじゃない? 私、夏休み前くらいからSNSで裏垢作ってご飯奢ってくれたり、お金出して遊んでくれるお友達を探しててたの」

 その返答に意外性はない。聞く限りカラオケの一件が初めてではない気はしていたのだ。

「なるほどパパ活って奴ね」

 私が滝田さんから聞いた情報は限られたものだったが、その内容だけでも彼女がずいぶんと遊び慣れている様には感じられたのだ。

「あ、でもウリはしてないよ、これも本当。ただ、DMとか通じて色んな人がアプローチしてきてさ、結構気分がいいの。本当に一緒にご飯食べたり遊びに行くだけ。しかも偶きなもの買ってもらったお小遣いも貰えるしね。それだけでも私に価値を見出してくれる。もう本当バイトするのが馬鹿らしくなっちゃうくらい」

 中々に刺激的な彼女の独白。でも、内容とは裏腹に彼女は全く悪びれた様子がない。

「じゃあ、例のカラオケもそういうパパ活相手と示し合わせて行ったって事?」

 もしそうだとしたら、一緒にいた日奈も同罪という事にはならないだろうか。関係ないとは言えないぞ。

「ああ、あれは違うよ。純粋に日奈ピとカラオケ行きたかっただけ。ただ、偶に、一人で行くこともあるとこではあるけどね」

「一人? ヒトカラって奴?」

「うん。でも、歌う事だけが目的じゃなかったりもする。あのお店、一人で歌ってると偶に男の人が声かけてきたりするの。しかもお店があんまりうるさくないからさ、一緒に歌ってお金出してもらってご飯奢って貰ったりってしてたんだよね。だからあの時もその延長みたいなもん」

 流石に余りの内容に呆れて返す言葉も失いそうになる。でも、全く危機感も罪悪感も無いようだ。

「身体を売ってないからってそんなもん学校に知れたら大変なことになるとは思わないのか。下手すりゃ退学とかだってあり得るぞ。危険じゃないか」

「ふふん。それがね、バレてもそう簡単に私を処分できない筈だったんだよね」

 少し落ち着いて話していた様に見えた彼女に再び激しい動揺が見られていた。私は私で彼女の言った意味がのみこめずに聞き返してしまう。

「はあ? な、なんでそんな事が言える訳?」

「SNSの裏垢。アプローチしてくれた内の一人がね、知ってる人だったの」

「パ、パパ活求めるような奴が知り合いだったって事?」

 流石に私もその言葉には驚いてしまう。パパ活するっていうことはある程度の大人だろう。彼女の周りの大人にそんな相手がいたというのか。

「うん、何とそれはね……」彼女は私の反応を見て何だか満足した様な顔をして言葉を区切った後、何とも言えない表情を浮かべて言った。

「この学校の、あの校長先生だったの」

「は、はあああああ?」


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