第9話 ヨウカの家
俺は魔力が切れるまでホーミングを使い続けた。
ホーミングのスピードは少しだけ早くなったが、他の魔法のようにすぐに進化しなかった。
ホーミングの練習が課題か。
「ユウヤさん!さあ、家に行きますよ!」
ヨウカが俺の腕に絡みついた。
家に向かうと温泉の匂いがする。
「ここも温泉なのか?温泉が多いな」
「そうです。温泉でゆで卵が作れますし温泉の熱を利用したサウナもありますよ」
「おお!」
「サウナやお風呂もありますが、その前に食事を終わらせちゃいましょう」
ヨウカは風呂が好きなんだな。
食事を早く終わらせたいようだ。
ヨウカが食事を持ってきた。
山菜と根菜の煮物・豆の煮物・漬物・お吸い物・焼き魚の切り身・とろろ・麦飯
7品目!
凄い!
高級料亭に出て来そうなメニューだ。
「作るのに手間がかかっただろ?」
「私の家なら毎日これが食べられますよ。食べてください」
「うん、うまい」
素朴な素材を使っているけど塩や出汁、すべてが丁度いい。
俺は黙々と平らげた。
体を作り変えてくれるような、自然の恵みから生命力を貰うような食事だった。
「お茶です」
「ありがとう」
お茶のタイミングも丁度いい。
ヨウカが俺の隣に座った。
「ユウヤさん、ユウヤさんの話が聞きたいです」
「う~ん。俺は落ちこぼれだったし、面白い話は出来ないぞ」
「良いんです。ユウヤさんの声や話し方が好きです。聞いていると心地が良くなってきます」
ヨウカは王げさだな。
俺は話を始めた。
ヨウカは話を聞くのがうまくて、俺もすらすらと言葉が出てきた。
そう言えば、高校やバイト先では話の途中で遮られたり、否定されたり、意見を押し付けられる事が多かった。
その半分以上は鬼道だった。
でも、ここは居心地がいい。
ヨウカとユキナだけでなく、皆意地悪では無く、素直だ。
考えてみれば自分の事だけをやると決めてすぐだったけどヨウカは助けたいと思えた。
高校を卒業したらここに住むのもいいのかもな。
話している内にヨウカが俺に近づいてくる。
「話し過ぎてしまった」
「いえ、食べているのを見るのは好きです」
「食事を食べていい時間になりました。お風呂に入りましょう」
「ヨウカの風呂がまだだろ?」
「ユウヤさん、入ってください」
「ヨウカは風呂がまだだよな?」
「ユウヤさんが入ってください」
ヨウカは笑顔のまま言った。
俺の言葉を聞かない?
こういう所は譲らないのかな?
ヨウカは良かれと思って風呂を譲ってくれている。
好意を受け取らないのも失礼だ。
早く入って上がろう。
「分かった」
俺は風呂に入った。
「ユウヤさん、湯加減はいかがですか?」
ヨウカが入って来た。
「ん?」
「はい?」
「ここは混浴が普通なのか?」
「一緒に入りたかったです」
俺の質問に答えていない気がするけど、細かい事はいい。
細かく言って来る鬼道のような行動はここでは合わない。
お互いが譲り合う気持ち、これ大事。
「ユウヤさん、お願いしたいことがあります」
そうか、裸の付き合いで頼みたいことがあった。
そういう事か。
「俺に出来る事なら言って欲しい」
ヨウカには助けて貰った。
出来る事なら手伝いたい。
そう思える。
「よかったです。私を洗ってください」
「ん?」
「え?」
「洗うというのは?俺がヨウカの体を洗うという事デショウカ?」
「はい。お願いします」
「わ、分かった」
俺はタオルを手に取った。
「ユウヤさん、手で、お願いします」
手で直に!だと!
俺の理性は、いや、手はある。
「わ、分かった。頭と背中、それを尻尾を洗う」
俺はヨウカの頭を洗った。
そう、頭なら大丈夫。
「んおん!はひ!」
「わ、悪い」
「はあ、はあ、いえ、良いんです。もっと強引に、遠慮せずにやって、はあ、はあ、下さい」
「あの、耳を洗ってるだけなんだけど」
耳を洗っているだけだ。
なのに良からぬ妄想が膨らんでしまう。
「きつね耳は、はあ、はあ、弱いんです」
俺はヨウカの声で理性が狂いそうになりながら洗い上げた。
よく耐えたと思う。
頑張った自分を褒めてあげたい。
ヨウカは尻尾も弱くて何度も声を上げた。
後、上目遣いでとろんとした顔で見つめて来るのは反則だと思う。
俺は湯船で呼吸を整えた。
「ユウヤさん、ありがとうございます。今度は私が背中を洗いますね」
「もう俺は洗ったんだ」
「洗わせてください」
洗われるなら、大丈夫か。
「ユウヤさん、うつ伏せに寝てください」
俺はうつ伏せで寝た。
あお向けよりもうつ伏せは難易度は低い。
OKOK!
洗われるのは背中だけ。
余裕だな。
あお向けならまずかった。
ヨウカは自分に油を塗る。
「ヨウカ?」
「オイルマッサージです」
ヨウカが手を使わずに俺を洗った。
だがそれさえも俺は耐えた。
そろそろきつい。
俺は湯船で深呼吸した。
俺の呼吸が荒い。
落ち着け俺!俺落ち着け!
「ユウヤさん、話を聞いていると日本は息苦しそうですね」
ヨウカが俺の耳元で囁いた。
「そ、そうだな」
「ナニをしてもセクハラ扱いです。でも、私はユウヤさんに触って欲しいと思いますよ?」
「男女の関係は色々難しいよな」
「そうでしょうか?ここは難しい日本ではありません。例えばですが、私とユウヤさんがエチエチな事をしたとしますよね?」
ヨウカが前から俺に抱きついた。
そして言葉を続ける。
ライフポイントがゼロになる!
「私はユウヤさんとシテも子供を産まないように出来ます。苦労はかけません。裁判もありません。私は望んでユウヤさんと一つになります。ここは離れで回りの目も、耳もありません。ばれても誰もユウヤさんを責めません。それどころか、他の子も、ユウヤさんにしてもらいたいと思うでしょう。ユウヤさん、またお願いを聞いてください」
「……」
「……」
「ユウヤさん、私をおかしくしてください。ここにレディーキラーがあります。私を後ろから抱きしめて押さえつけて飲ませて欲しいです。そして後ろからお願いします」
ヨウカが俺を椅子にするように俺の前に座った。
俺はレディーキラーの瓶を手に取った。
2人、朝まで、風呂で過ごした。
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