第8話 訓練


 俺の体力は完全に回復した。

 ジャンプして走り回ると、俺の能力値が大幅に上昇している事が分かった。

 更にユキナさんに服を作って貰った。

 俺が前着ていた物と同じデザインだが、明らかに防御力が上がっている。


「ユキナさん、服をありがとうございます」」

「ふふふ、待っていてね。もう少しでもっと防御力が高い服を作るわ」

「え?今着ているのも高性能ですよ」

「それは即席品よ」


「お待たせしました!」


 ヨウカが走って来た。

 

 回復したヨウカとユキナさんから魔法の訓練を付けてもらう事になったのだ。


「ヨウカ、大丈夫か?」

「大丈夫です!少し体がむずむずして熱いですけど、チャクラヒール!」


 ヨウカの体が光った。


「チャクラヒールは傷だけではなく、状態異常も少しずつ治せますよ」

「回復スキル!便利だな」


 ユキナさんの顔が不機嫌になった。

 ユキナさんはヨウカと同じで勘がいい。

 すぐに俺の性格を見切っていた。

 嘘はつけない。


「どうして私はユキナさんなのにヨウカは普通に呼ぶのかしら?」


 分かっているけど怒っているから聞いている感じがする。


「ヨウカにそうして良いと言われたからです」

「どうしてヨウカとだけ普通に話すのかしら?」

「ヨウカにそうして良いと言われたからです」


「ユウヤさん、ユキナも私に言うように普通に話しましょう」

「それがいいわ」

「ユキナ、これから頼む」


「うんうん、いいです、すんすん、ユウヤさん。ユウヤさんからユキナの匂いがします」

「そ、そうだな」

「ユウヤさん。ユキナさんとナニかしました?」


「いや、温めて貰っただけだ。あれだ、ユキナに服を貰ったからじゃないか?」

「……ユウヤさん、今日から私の家で寝ましょう」


「あら、ユウヤは私の家で大丈夫よ」

「私はユウヤさんと一緒がいいです」


 村のみんなが俺達をにやにやしながら見ている。

 村人は子供と若い女性が多い。

 大人の男がいないのか?


「私の家はユキナと反対方向です。訓練が終わったらお家に行きましょう」

「何で2人は人里の外れに住んでいるんだ?」


「モンスターが結界を攻撃したら倒す為です」


 村人をヨウカとユキナが守るように住んでいるのか。

 

「2人共戦えるのか」

「私はファイターでとユキナは錬金術師です。2人でモンスターを倒しています」

「そっかー。俺は才能が無いと言われ続けてきたから基本的な事も難しいかもしれない」


「……おかしいわね。ユウヤは強いと思うのだけれど。ユウヤ、ステータスを見せて」

「スキルを見せてください」



 俺は2人にステータスを見せた。




 ユウヤ 男

 ジョブ ????

 レベル ????

 体力  ????

 魔力  ????

 速力  ????

 スキル:『生活魔法』『バリア』『シールド』『セイバー』『ショット』『ホーミング』



「生活魔法以外全部バリア魔法で埋められてるだろ?俺は才能が無いと言われているんだ」


 通常ならバリア魔法を覚え、1つのスキル枠だけを消費する事ですべてのバリア魔法を使用できる。

 だがバリア魔法としてではなく、バリア・シールド・セイバー・ショット・ホーミングのスキル枠を5つ消費してスキルを覚え、スキル枠を埋め尽くしている。

 俺には才能が無いのだ。


「良いわね。ユウヤは伸びしろがあるわ」

「いいですよ!ユウヤさんはもっと強くなりますよ」

「ん?」


 2人と俺の考えが噛み合っていない気がする。


 ヨウカが俺の顔をじっと見た。


「ユウヤさん、大丈夫です!バリア魔法をこんなに使えるのは凄いです!」

「そうよ、別々の枠でバリア魔法を使える人の方がスキルの成長は良いわね」

「でも、スキル枠が埋められているだろ?」


「その点も大丈夫、ふふ、お楽しみにしておきましょう」

「え?何々!」

「気になりますよね。でもユウヤさんならすぐに結果が出ますよ」


「訓練するならバリア魔法ね。ユウヤ、バリア魔法を全部見せてくれるかしら?」


「バリア!」

「いいですよ!次行きましょう!」


「シールド!」


 目の前に設置型の盾を発生させた。


「シールドを腕に付ける事は出来ますか?」


 シールドは目の前に出して固定させるだけのものだと思っていた。

 俺の腕に盾として展開して、俺の移動についてくるイメージで出す。


「シールド!」


『シールドが進化しました』


 腕を振るとシールドも一緒に移動する。

 更にシールドの大きさを変化させることも出来る。


「おおおおお!」

「ユウヤさん、かっこいいです!」


「次はセイバー!」


 俺の手にセイバーが生成された。


「初めて見るバリア魔法だわ」

「もしかしてこれも長くしたり短くしたり出来るのか?」

「出来ると思うわ」

 

 セイバーが俺の意志で伸縮し、形も自由に変える事が出来た。


『セイバーが進化しました』


「ユウヤさん、いいですよ!次はショットです」


「ショット!」


 手の平から魔法弾を発射して岩に撃ちだした。


「バリア魔法を撃ちだす魔法も始めて見たわ」

「確かに、日本でも見ない気がする」

「ユウヤさん!凄いです……う~ん……ショットで貫通させることは出来ますか?」

「ヒットの瞬間に破裂ではなく、貫通するイメージを頭に思い浮かべる!ショット!」


 ショットが岩を貫通した。


『ショットが進化しました』


「ユウヤさん!最高です!はあ、はあ!」

「ヨウカ、疲れてないか?」

「大丈夫です!」


「ヨウカは発情しているだけよ」

「最後はホーミングです!」

「ホーミング!」


 2つの球体が何度も岩を攻撃する。


「もっと速く飛ばせませんか?」

「もっと速く動かしましょう」


 多分、もっと速く出来るんだろう。

 ホーミングが一番苦手らしい。

 2人の反応を見て分かった。


 発動後1分ほどでホーミングが消える。

 俺は何度もホーミングを使った。


「ちょっとだけ、早くなった気がします」

「もうちょっと練習してみる。他にやった方がいい事ってあるか?」

「今はホーミングの練習を続けましょう」


「ユキナ、ヨウカ、ありがとうな。もう少し頑張ってみる」


「お、おう、い、良いわね」

「体が熱くなってきました」


 2人が照れている。

 癒される。


 2人のおかげで数分で強くなれた。

 もっと頑張ってみよう。


 俺はホーミングの魔法を続けた。

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