第12話『クリスマスの繫忙・後』
ユカとファミレスでドリンクバーとデザートで粘って、イチゴと交代する午後三時になった。
「楽しかったわ。それじゃあ、次は初詣の時にね」
「ああ、またな」
ユカとクリスマスプレゼントとキスを交わして別れ、俺はイチゴとの待ち合わせ場所に向かった。
「ねえあなた。今一人?私と遊ばない?」
待ち合わせ場所の駅前広場で待ってると、知らない女の人が声を掛けて来た。
もしもイチゴが待ってる間に変な奴に絡まれるのが嫌だったから俺の方が先に着いていたんだが、まさか俺が逆ナンされるとは……
「いえ、人待ちなので」
「そう?それって男の子?それとも女の子?」
その言い方って答え次第でどう言うか後出しで変えるって事か?
「それは……」
「きょーくん!おまたせ!」
目の前の女の人をどう突き放すか悩んでいると、横からイチゴの声が聞こえた。
振り向くと、白い冬コートを着て、コンタクトとメイクをした気合入れたスタイルのイチゴがいた。
イチゴは逆ナンして来た女の人を見て、すぐ状況を察し俺の腕を抱き寄せた。
「この人、私の彼氏なんで、帰ってくれますか?」
「あら、デートだったの。ごめんね、じゃ」
女の人はイチゴを見るとすぐに引き下がってくれた。
粘られると面倒だったので助かった。
「やっぱり恭一ってモテモテだね」
気のせいかイチゴは嬉しそうに言う。
ただ額面通りの意味なのか、皮肉なのか分からない。
「……デート前に他の女の人と絡んで悪い」
「いいよ。きょーくんがモテると私も鼻が高いから」
どうやら本気で言ってるみたいだ。
イチゴは中学三年のあの時に歪んでから、嫉妬とかそう感情が壊れてしまったのだろうか……
まあいい。今はデートだ。
「出発しようか」
「うん!久しぶりのデート、楽しみだね」
いや本当に久しぶりのデートだな。
前のデートっていつだったか。
アリアさんが初めてユカをホテル呼び出した後の、今から二週くらい前の一回だけだったか?
まあ、ほぼ毎日部屋でイチャついてたから、感覚が麻痺してるのもあるけど。
まずは映画館でユカと見た映画をもう一度見て、動物カフェに行って、その後はファミレスで少し早い夕食を取った。
しかしこれは……
「なあ、イチゴ。このコースって……」
「うん、上書きよ。こういうのも久しぶりだね」
「……そうだな」
まあ、何も言うまい。イチゴが楽しそうだからな。
夕食を終えた後はアリアさんが借りてたダンススタジオを借りて一緒にダンス。
……流石にホテルまでは行けないので、適当な洋菓子店でクリスマスケーキを買って部屋に帰る事にした。
「楽しかったね、きょーくん!」
「ああ……、楽しかったな」
デートコースにちょっとした悪意を感じたけど、それでもイチゴとのデートだから楽しめた俺はチョロいのかも知れない。
「ただいまー」
「あっ、姉さん、兄さんも。お帰りなさい」
イチゴの部屋に帰ると、友達と遊びに出掛けていたらしきリナが帰っていて俺たちを迎えた。
「リナちゃん、こっちがクリスマスプレゼントで、こっちがケーキね。ケーキは後で一緒に食べよ?」
イチゴは次々と手土産をリナに渡した。
「あっ、ありがとうございます!」
そして部屋でささやかなパーティをした。
これで忙しいクリスマスの予定も終わったのかと思ったら……
『恭一さん、本日は
翌朝、アリアさんからこんなメッセージが来た。
『恭一、明日時間ある?
さらにユカからもメッセージが。
昨日の今日だぞ。
それに君たち、いつの間に仲良くなったんだ?
取りあえず返事を保留してイチゴの部屋でイチゴやリナと一緒に朝食を取ったが。
「ねえきょーくん。明後日時間空いてるよね?
とイチゴにまでスケジュールを抑えられてしまった。
しかも示し合わせでもしたのか、三人ともご丁寧に日程をズレらして。
もしかして、俺の恋人三人で、友達三人をそれぞれ取り込んだ?
派閥でも出来上がるのか?
友達だと思ってたあの三人も、もう安全じゃないんだな……。
それから28日まで忙しなくデートしまくった。
「ウチに任せな!アリアっちに庶民の遊びを教えるから!」
「ええ、楽しみにしてますよ」
26日は鈴木さんの案内を受け、ゲームセンターやネカフェ、カラオケなど所謂普通の遊び場をアリアさんと回り……
最後には何故がホテルに連れ込まれてしまった。俺が。
「ちょっ、アリアさん?鈴木さん?」
流される内に、両手、両足を手錠で縛られて身動き取れない俺に、アリアさんと鈴木さんが迫って来た。
「ごめんなさい恭一さん。これも私たちの未来の為に必要な事なのです」
アリアさんは訳の分からない理論で謝って来て。
「ユウリって呼んでよ。楽しもうね恭っち」
鈴木さんはウキウキしながら服を脱いで、俺の服も手錠に邪魔されたが脱がせるだけ脱がした。
くっ、こうなったら鈴木さん相手に起たせなければ……!
………。
………。
結果、鈴木さん相手に起ってしまい、そのまま3Pを致してしまった。
「はあー、これで私も経験者かー。痛かったけど気持ち良かったよ、恭っち」
「……どうして私にだけ……」
事後。
鈴木さんは満足していて、アリアさんは色々複雑な感想を漏らしたが、俺は俺で泣きたかった。
27日はユカ、伊藤さんと三人で街を遊び回った。
「そう言えば恭一の部屋はどんな感じなの?今まで行った記憶がないんだけど」
結構な時間が経った後、ふとユカがそんな事を聞いて来た。
「普通の1DKのアパートだけど、それがどうかしたか?」
「せっかくだから、遊びに行ってもいい?」
「いや、それは……」
ユカ一人だけならともかく、今は伊藤さんもいるからな……。
「あ、あの、私も葛葉くんの部屋、見てみたいな……」
俺の視線に気付いたのか、伊藤さんがおずおずと言う。
「ケイコも一緒に行っていいでしょ。減るもんじゃないんだから」
「……分かった」
結局は二人の要望に押されて二人を部屋に迎え入れた。
直後、ユカにベッドの上で押し倒された。
「なっ、ユカ!?」
「ごめんね、恭一。あんたは天井の染みでも数えて楽しんでいればいいから」
「良い訳あるか!伊藤さんだっているんだぞ!」
「これで私も葛葉くんと初めてのアレを……」
……ってまさか伊藤さんもグル!?
悲しいけど俺はユカ相手にはちゃんと起つので、伊藤さん相手に起つかどうかは分からないまま、またも3Pを致してしまう事に。
鈴木さんの時もだが、避妊だけは徹底したのがせめてもの抵抗だった。
28日はイチゴ……はいなくて小林さんと二人きりでデート。
この前の続きという事で、ネカフェでアニメや映画、ネット動画を見たり、適当なゲームをしたりして時間を潰した。
小林さんに寄り掛かられたり、手を握られたりしたけど、それ以上のスキンシップはなくて結構気楽な時間を過ごせた。
「まさか小林さんが癒しになるとは……」
「むっ、二人きりの時はカヨと呼んで」
「ああ……ごめんな、カヨ」
おかげで名前で呼ぶだけで機嫌が取れるなら取ってあげられるくらいには、心に余裕が出来た。
「実はユウリやケイコにマウント取るみたいに自慢された。あの二人と最後までしたんだって」
「……あの二人、それを言ったのか……」
「どうせクリスマスにも誰かとしたんだろうし、流石に恭一も四日連続は心身共に厳しいだろうから、……私はここまででいい」
言葉の直後に俺はカヨに顔を掴まれて唇にキスされた。
そう言えば前回はここで頬にキスされたんだったか。
昨日までがアレだったからか、キスまでなら割と抵抗を感じない自分に気付いてしまった。
最後までしないのなら、休めるのには違いないからな。
他の二人との比較的な感じだが、カヨとのデートは癒しのまま終わった。
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最後の信号娘の所、載せるべきか悩みましたが、引き込んでから進展を引っ張り過ぎるのもあれだと思ってざっくり?済ませました
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