第11話『クリスマスの繫忙・前』

 文化祭が終わった後はすぐ期末テストが近付いて来て、テスト勉強で時間が飛んた。


 そして期末テストは無事に終わった。


 一年の知り合いの順位を上から数えて、アリアさんが一位、イチゴが二位、俺が九位、ユカが十位と生徒会のメンバーは大体面子が面子が保つ順位を取れた。


 伊藤さんたちは全体の中間くらいで上から下にばらけてたから、あまり探す気にはなれなかった。


 後、俺が成績十位以内に入った事で、特待生になる提案を受けたが、学業への制約が割と厳しかったので辞退した。


 具体的な内容を言うとは避けるけど、ユカは良くこんな制約に耐えられると思った。


 期末テストが終わった後はすぐにクリスマスと冬休みが到来した。


「恭一さん。今日は楽しみましょ」


 コートとマフラーに耳あてと、冬の装いをしたアリアさんが長い金髪を煌めかせる。


「……ああ」


 俺はイブの日からクリスマス当日まで、アリアさん、ユカ、イチゴと順番にデートする事になり、まずはアリアさんと出掛けた。


 いつもの事だが、アリアさんとデートする時のプランはアリアさんが決める。


 今回のデートはイルミネーションで飾られた街道を歩く。


「ふふ、こうして歩いていると誰がどう見てもカップルに見えるのでしょうね」


「……そうだな」


 アリアさんは俺の腕を組んだまま歩いていて凄く上機嫌だった。


「ほら、さっきすれ違った人がこっち向きましたよ。美男美女でお似合いとか思ってるんじゃないのでしょうか」


「かもな」


 お似合い……なのかはともかく。


 適当に歩き回ってクリスマスの空気を満喫した後は、文化祭の時のダンススタジオを貸し切り、そこで二人きりになった。


「すみません、恭一さん。こんな狭い所しか借りられなくて」


「いや、二人で貸切るには十分に広いと思うぞ」


 広さだけなら俺の部屋の倍以上はあり、物が少ない分余計に広く見える。


「で、ここで何をしたんだ?」


 一応聞いてみたけど、ダンススタジオでやる事なんて名前の通り大体決まっているよな。


「それはですね。ここで私と踊って欲しいのです」


 ほらな。


「俺、踊りとかあまり知らないけど?」


 一応、イチゴに何度か基礎に関する動画を見せられたりはしたが。


「大丈夫です。私が教えますので。ええ、文字通り手取り足取りで」


「……じゃあ踊ろうか」


 別に何処かの発表会で踊る訳でも無いから、気後れする理由も無い。


 後、一応俺はアリアさんの彼氏だからな。彼女のお願いは出来るだけ聞いてあげないと。


「姿勢はこうで、ステップはこんな感じで……」


 まずはお触りとしてダンスの基本を学ぶ。


 大体形になってからは、アリアさんがスピーカーにスマホを繋げてクリスマスに良く聞くような曲を付けた。

 そしてそれらの曲をBGMにしてアリアさんの気が済むまでに踊った。


「素敵な時間でした……」


「そうか。ならよかった」


 踊り終わった後のアリアさんは頬を赤く染めてうっとりしていた。


 俺としてもまあ、悪くない時間だった。


 ダンスの相手がイチゴだったらもっと良かったが、イチゴはこういう体動かす事が一回やったら飽きるだろうからな。


 ダンススタジオを出た後は、もはやいつものとなった高級ホテルのスイートルームに移動。


 そこでアリアさんと二人でイチャつくのかと思いきや……


「呼ばれて来てやったわよ」


 ユカがスイートルームに来た。


 冬用のコートの上に、今日も今日とて長い髪をツインテールに纏めている。


「なあ、アリアさん。何故ユカがここに?」


「それはですね……その、恭一さんと色々と繋がるには他の方の協力が必要ですのと、どうのみち次の順番はユカさんですから、時間短縮の意味も込めてですね……」


「私としてもまあ時短もそうだけど、食事も出るし、いい部屋で恭一とさせて貰えるからね」


「……そうか」


 どれだけ性に積極的なんだ?


 少なくともアリアさんは婚前交渉は避ける性格だったと思っていたけど。


「そうだ!せっかくだから動画を撮ってイチゴさんに見せつけ……お送りしましょう。イチゴさんだけ仲間外れじゃ可哀想ですから」


「あんた、性格悪いわね。まあ……思い出に残すって意味では、別にいいけど」


 さらにはアリアさんの思い付きでクリスマスイブの思い出……を動画に残す事に。


 正直、引いた。


 普段なら抵抗しただろうけど、今はクリスマスで、アリアさんとユカは曲がりなりにも恋人で、俺の本命の恋人なイチゴはこれを浮気だと言って悲しむ所か、むしろ送りつけられる動画を見て喜んでくれるだろう。


 だから俺も素直に応じたが……、常識との板挟みで胃が痛かった。




 翌朝。

 三人でルームサービスで朝食を取り、名残惜しむアリアさんとクリスマスプレゼントを交換してからキスも交わし、アリアさんと別れユカと二人で街に出た。


「ここからは私の時間ね」


「プランはどうするんだ?俺が決めようか?」


「安心しなさい。私がちゃんと考えて来たから」


 ユカは堂々とした歩みで俺を腕を引っ張る。


 夕べの疲れ……もあってデートコースは大人しめの物だった。


 まずは話題の話題のミステリー映画を見た。


「途中までは良かったわね。途中からトリックにオカルト要素を使い出した時から白けたけど」


「そうだな。ちょっと予告詐欺だったな」


 移動しながら映画の感想を言い合い、次に到着した猫カフェで癒された。


「猫ちゃん、可愛いよねー。ウチは母さんが嫌がるから飼えないけど、恭一、あんたの所はダメ?」


「世話押し付けて可愛がるだけのつもりか。まあ、ウチのアパートは規約でダメだが」


「そう、残念ね。大学上がる時に一人暮らしになったら考えようかしら」


 昼食の時間になるとファミレスに移動して食事しながら友達の事や冬休みで遊ぶ予定とか割と他愛のない雑談を交わした。


「冬休み、もっとフリーな時間増やせないの?」


 ユカは俺とデート出来る日があまり取れない事に不満そうだった。


 と言っても、週に二回は会えるんだが、遊びたい盛りの学生の長期休暇だから、それこそ毎日は会いたいのだろう。


「もうモデルの仕事増やすって決めてたからな。雑誌社も追い込みとばかりにスケジュール抑えて来たし」


「じゃあ、あんたの撮影に見学しに行ってもいい?彼女として」


「いいけど。あそこ、一応アリアさんが紹介してくれた所で、俺とアリアさんがそういう関係だと思われてるからな」


「そう、なら尚更都合がいいわね。見せつけてやるわよ」


「……ほどほどにしてくれよ」


 割とクレバーだとは思うが、あまり時間を取れない埋め合わせになれればと思って止めたりはしなかった。


 ……俺って、イチゴよりは下だけど意外とユカにも甘いな。


 これがアリアさん相手ならなんとかはぐらかしたかも知れないのに。


―――――――――――――――

 更新前に色々書き足してたら6000字近くなり、今回はいい区切りもあったので分けました

 こうして出来た余裕で毎日更新する為のストックを書いてます


 後編はイチゴの番と+Extraになります

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