番外編

day1.咲姫と忍者正愛

 ※正愛まさちかがまだ生きていた時の、ほのぼのイチャイチャ話です。


 私は(俺は)ホラーが読みたいんだ! イチャラブなんていらないぜ! という方は、このお話を飛ばしてくれて構いません。


 並行世界でお会いしましょう。


 イチャラブばっちこいの方のみ下へ↓





 ⌘ ⌘ ⌘





「……おにいちゃん」


「何だー? さきー?」


「体、いたい……」


「はははっ、咲は相変わら体が硬いなー。そんなんじゃ新体操選手になれないぞー?」


「べつに私、しんたいそう選手、めざしてない」


「そうかー、残念だなー。お従兄にいちゃんと一緒がいいって言ってくれると思ったのにー。じゃあ今日はこれでお終いな」


 ある日の大人たちが宴会で不在の夕方。正愛まさちかは咲に長座前屈をさせていた。だが、咲の体は硬く、手は足に届かない。


「おにいちゃんはどうして、しんたいそう始めたの?」


「んー? ほら、俺って元々、体ががっしりしているだろ?」


 正愛まさちかは床に座ると、準備体操のように、体をゆったり曲げ、手をべたりと床につけ開脚前屈をした。


「うん」


「だから、これに体の柔軟性も付いたら、俺は最強なんじゃないかと思ってな!」


「…………」


「何だー? そのジト目はー」


「おにいちゃんって、大人っぽくてかっこいいのに、私より子供っぽいとこあるよね」


「ん? んー? んー、ん!」


 正愛まさちかは一瞬だけ苦い顔をしたが、何かを思い出し、すぐに嬉しそうな顔をした。


「咲、さっきのもう一回言って?」


「……私より子供っぽいとこあるよね?」


「その前」


「……大人っぽくてかっこいいのに?」


「もう一回」


 正愛まさちかは満足げに目を閉じた。


「——もう言わない」


 照れることを言わせられていると気づいた咲は、口を尖らせ外方そっぽを向いた。


「悪かった! 調子に乗りましたー! だから咲さーん、こっちを向いてくださーい!」


 正愛まさちかはわざとしく土下座をした。


「——……」


 咲は口を尖らせたまま振り向いた。


「よいしょっと」


 正愛まさちかはそんな咲を軽々と持ち上げると、自分の足の間に座らせた。そして、後ろから抱き締めた。


「咲さーん? どうしたら機嫌を直してくれますかー?」


「……アイス」


「アイスですね! 何味がご所望でしょうか?」


「……いちご」


「ストロベリーですね! かしこまりました!」


 正愛まさちかは立ち上がると、後ろを向き、たんっ! と華麗に跳び、座っていた咲を跳び越えバク転し体を捻りながら、両手を広げ庭に着地した。


「この正愛まさちか! アイスに辿り着くまでお守り致します!」


 そして、忍者のように左の膝と拳を地につけ跪いた。


「——おにいちゃん、かっこいい」


「だろ?」


 ニヤリと笑い、正愛まさちかは咲を見上げた。


「ま、そんなわけで」


 そして、立ち上がり膝と手、靴下の裏をパンパンと払った。


「単純な理由で始めた新体操だが、あのけだもの共からお前を守れることになり、結果オーライってわけだ」


「けっかおーらい?」


「良い結果になったんだから、それでいんじゃね? ってことだ」


「——わかんない言葉、たくさんある」


 咲は落ち込んだように俯いた。


「では、咲姫? 今度はこの正愛まさちかと図書館に行ってくださいますか?」


 正愛まさちかはまた傅き。


「——うむ」


 咲は顔を赤くしながら呟いた。


「ははっ、ありがたき幸せー! ではまず、コンビニ限定『ストロベリーオンザストロベリー、ストロベリーまみれカップ』を買いに参りましょうか」


 正愛まさちかは右手を差し出し。


「——うん」


 咲は庭に置いてあったサンダルを履くと、正愛まさちかの大きな手に小さな左手を重ねた。


「では、行きますか」


 そのまま手を繋ぎ、正愛まさちかも庭に置いておいたスニーカーを左手で履き、塀が崩れた部分を乗り越え、二人は近くのコンビニに向かった。





「咲姫? ちなみに正愛まさちかは、バニラ味が好きなんですが、二つ買って半分こ、というのはいかがでしょう?」


「——うむ」


「ははーっ、ありがたき幸せー!」



 ⌘ ⌘ ⌘



 あとがき。


 こうして、四、五歳の時から正愛まさちかに柔軟性を仕込まれたおかげで、咲は化け物花のつるを交わしたりする身体能力がつきました。


 あと二回ぐらいで、ほのイチャ終わる予定ですので、よければもう少しお付き合いをー。

 

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