第48話 1日遅れのバースデー
七海の両親から色違いの貝殻の形のキーホルダーをもらった2人
「海斗さんはこっちのブルーの方」
「ありがとう。けんど七海へのプレゼントにお二人が買おてこれたもんを、俺が使おてええんかの
「これは私にじゃなくて、私達にくれたんだと思います。だから半分こですよ」
「そう?ほんなら…」
海斗はそれを車のキーに付ける。
七海は鞄に付ける。
それを見せ合って微笑み合う。
「色々気を遣っていただいて、本当にありがとうございました」
「俺は何も…。上手う話せんかったし…やき、七海が東京に帰ったらもうここに戻って来られんやないかて、そがな事ばっかり考えちゅう」
海斗は下を向いてそう話す。
七海はその手を握った。
「絶対戻ってきます。だってこれからも海斗さんと一緒にいたいから。海斗さんは私が戻ってこなくても平気ですか?」
「平気なわけないろう?やき、こがに不安なんちや。なぁ…七海」
「ん?何ですか?」
「今から俺のアパート
「じゃあ、お邪魔します」
「ほんなら昼飯どっかで食うて、帰りにケーキ買おていのうか(帰ろうか)」
「外食するってことですか?」
「うん。たまには外で食いたいがやろ?」
「う〜ん…外食もいいですけど、何か作っちゃダメですか?」
「俺はえいけんど、かえってえらいろう」
「じゃあ作ります!キッチン貸してください!」
スーパーで食材を買ったり、
ケーキを買ったりして海斗のアパートに着いた。
七海は具沢山のナポリタンを作った。ナスやピーマン、玉ねぎ、ウインナー、長ネギが入り、ケチャップとウスターソース、隠し味に砂糖と牛乳、バターも入れる。手際よく作る様子を見て、海斗は感心している。
「えい匂いがしちゅう」
「あんまり見ないでくださいね!」
「どういて?」
「プレッシャー感じますよ(笑)」
「そうは言うても見てたいがやち」
「もぅ…」
出来上がったパスタから湯気が上がり
向かい合って食事が始まる。
「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
海斗はナポリタンを口にすると目を丸く見開いて七海を見る。七海は首を傾げ、ドキドキしながら見つめている。だが海斗は何も言わずに食べ続ける。七海も一口食べ、自信なさげに呟く。
「ちょっと味薄かったかな…」
「そがなことないき、美味いちや!七海は料理も上手いのう」
「そうですか?簡単なのしか作れませんけど」
「前に作ってもろたサンドイッチも美味かったし、朝飯も美味かったし、七海はええ奥さんになるがよ」
「大袈裟です。誰でも作れるものばかりです」
「七海が作ったもんは特別なのちや」
食後はソファーで寛ぐ。
七海は海斗の肩に寄りかかり、海斗も七海に寄りかかる。いつの間にか眠っている海斗。七海は海斗の体を倒して膝枕をしてやり、その髪を撫でた。しばらくして海斗が起き上がり、寝ぼけながらキスを繰り返す。
「フフフ!ワンちゃんみたいで可愛いです」
「ワンちゃんって…」
「ごめんなさい(笑)なんかいつもと違うから」
「そうちや。ケーキ食わん?」
ホールのショートケーキに
数字のロウソクを立て火をつける。
Happy birthday to you,
Happy birthday to you,
Happy birthday, dear Nanami,
Happy birthday to you.
海斗が照れながら歌い終えると
七海が小さく拍手を送る。
「あらためて…誕生日おめでとう」
「ありがとうございます♡」
七海はその歌を嬉しそうに聴いてから、
フーっとロウソクの火を消した。
「これから毎年、俺が祝うてもえいか?」
「はい。お願いします」
バースデーケーキを食べながら穏やかな時間が流れる。
食後、七海が食器を洗っていると、
海斗が後ろから抱きしめた。
「邪魔かえ」
「いえ、大丈夫です。」
「ほんならこうしとる」
「ケーキ、美味しかったですね」
「パスタも美味かったのう」
「また作りますね」
「うん…。俺、3日間…頑張ったが?」
「はい!とっても頑張ってました」
「七海のためなら、何でも出来るき」
「嬉しいです」
「七海は?俺のために何でもできるが?」
「出来ますよ。なんでも…」
「ちょっと海斗さん、くすぐったいです…」
「頑張ったご褒美…くれん?」
「いいですよ。ご褒美、何しましょう」
「もう決まっとるちや。こっち向きや」
日が傾くまでまで愛の時間が続いた。
残り1ヶ月を切った派遣期間。
それが終われば一時期会えなくなる。
だから時を惜しむよう互いを求め合う。
南国土佐に本格的な春が到来した三月下旬。
土佐湾ではカツオの一本釣り漁が始まっていた。
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