何らかの犯罪か条例違反だよ
『長谷川理玖くんへ
あなたがこの手紙を読む時、私はこの世にいません…。などと、まるでドラマのような文章を書く機会が訪れるとはね。ともあれ、いつもうちの雪兎と仲良くしてくれてありがとう。
あなたが初めて家にやって来た時、私にはすぐに分かりましたよ。昔うちに入院していた、樽見さんのお孫さんだって。彼女とは、とても仲良くさせて頂いたから。懐かしいわねぇ。小さなあなたと妹さんは、いつも彼女のお見舞いに来ていた。それが、まるで昨日の事のように思い出されるわ。
少しばかり日に焼けて髪を染めていたようだけど、内に秘めた心優しさと言うのはそう簡単に変わるものではない。敬老の日は、素敵なプレゼントをありがとうね。ベッドの傍に飾って、いつも心の慰めにさせてもらったわ。あぁ。やっぱりあの頃とちっとも変わらない、素直で優しいりっくんだなって思った。
その優しさを、どうかこれからも世の中の色んな人に向けてほしいの。あなたなら、きっと言われずともそうするのでしょうけど。そしてその中に、うちの雪兎も含まれていればこんなに嬉しい事はないわ。私からの願いは、たったのそれだけ。
ここからは、伊勢嶋家の一同に宛てた内容よ。彼…りっくんが雪兎のために訪れる機会があれば、それがどんな願いでも聞いてあげて頂戴。くれぐれも、頼んだわよ。それではね…。
○月△日 伊勢嶋
追伸:りっくんは、私の初恋の人…。幼馴染の野球少年に、ちょっとだけ似てるのよ。なんて言ったら、年甲斐もないと思われるかしらね。ほほほほ』
一同が、シンと静まり帰った。オレは、知らぬ間に目から涙が流れ落ちていて…。しばらくの間、それがとどまる事はなかった。静寂の中で、最初に沈黙を破ったのはその場で最年長の方だった。
伊勢嶋京平(以下・京)「なんだい、うちの婆さんたら…。本当に、年甲斐もないったらありゃしない。『どんな願いでも』と、来やぁがったよ。しかし、これで決定だね。りっくんとやら。君がここに来る前に、すでに当方の返事は決まっていたってこった」
理「そ、そうなんですか?それじゃ、ちょっとお願いなんですけど。オレと雪兎くんが結婚した暁には、伊勢嶋家の土地屋敷財産その他を一切合切…」
俊「そこまでにしておきたまえ。足るを知ると言う事も、人生にとっては必要だよ。さて。請われるがまま親族一同を集めたが、これは一体どう収集をつけようか」
京「せっかく雁首を揃えたのだから、一人につき二言三言コメントするフリートークでいいんじゃないかなぁ」
理「フリートークですか」
京「そうだよん。それじゃ改めまして、雪兎の祖父の京平ですよ。名前のモチーフは、BL漫画家のあ○゛み京平さんだとさ。君が通っていた、接骨院の院長…。ソウスケくんとは、同い年の幼馴染だよん。雪兎の事を、これからもどうかよろしく。僕からも、お願いだよ。さて、それじゃ次は直くんの番ね」
辻村直(以下・直)「えぇー!?俺ですかぁ?順番、おかしくないです?たまたま遊びに来てたら、なんか拉致られただけなんですけど…。まぁいいや。りっくんとは、この前ご挨拶しましたね。雪兎の叔父の、辻村直でございます。俺の方からも、雪兎くんをどうぞよろしくね!差し当たっては、お知り合いの球児を二人か三人くらい紹介してくれたら嬉しいなぁ♡」
伊勢嶋雪兎(以下・雪)「叔父さん…。いくら彼氏と別れたばかりで、男日照りだからって。りっくんのお知り合いとか、何歳離れてると思ってるの?下手したら(下手しなくても)、何らかの犯罪か条例違反だよ」
直「そんな、ひどい…」
理「そうだ。犯罪で思い出したけど、次男の蛍さんに聞きたい事があったんだ」
伊勢嶋蛍(以下・蛍)「犯罪で、俺の事を思い出すのはやめてくれないかなぁ!?」
理「端的に、あなたと言う人間を表現出来る言葉だと思うので。それじゃ直球で聞きますけど、オレが幼い頃に草むらに連れ込んであれやこれやといかがわしい事しました?」
蛍「本当に、直球だね!?そ、そそそそそそんな事する訳ないじゃん?この俺が、神聖なるショタに向かってさぁ。ショタってのはこう、触れたら壊れるガラス細工みたいなもんなんだよ。だからこう、信仰の対象としてそっと崇め奉る必要があるんであってね…」
伊勢嶋楓(以下・楓)「言い方が、すでに犯罪くせぇんだよ。この、ショタコンクソ兄貴」
蛍「うるっせーぞ、このブラコンクソ弟が!実の弟の等身大POP作成して部屋に飾ってる、お前だけには言われたくねぇわ」
楓「フッ。だけど身内だけに、犯罪ではない!決して、犯罪ではないのだよ!」
雪「小さい頃、俺を苛めてた近所の子供たちが後でどうなったか…。俺、忘れてないからね」
楓「アーアーアー、聞こえませーん。可愛い雪兎を苛める不逞の輩など、どうなってもいいんじゃないですかね。ってか俺らの変態さなんて、桜兄さんに比べたら微々たるもんだよね」
蛍「その点についてだけは、お前と同意する」
理「マジか。桜さん、そんなにも変態なの…?ってか、結局どう言う変態にするかの方向性は定まったの?」
伊勢嶋桜(以下・桜)「読者のみなさん、こんにちは。伊勢嶋家長男の、桜です。すでに医師免許を取得して、実家の病院を手伝っておりますよ。俺も作中で話すのは初めてなので、口調が安定しないかも知れません。先程の質問ですが、変態の方向性を三つくらいで検討しておりますよ。①実の親父に恋い焦がれる余り、世間の熟年のおじさま方に恋するようになった②実の叔父、つまり直さんに恋をしている③身内は特に関係なく、世間一般のDKにただならぬ執心を燃やしている」
理「いずれに転んだとしても、ロクでもねぇ変態だな」
桜「ははは、照れるよ。この中でどれが一番性癖に刺さるか、読者の皆様の忌憚ないご意見を頂きたい」
理「登場人物の変態ぶりについて、読者に問う作者って初めてじゃねぇか…?ってかこれ、どうすんだ。マジで、収集つくのか?話のオチは、どうつけるつもりなんだよ?」
桜「そうだねぇ。それじゃせっかくだから、オチは家政婦の市ノ原さんにお願いしようか」
市ノ原閲子(以下・市)「はい。ただいまご紹介に預かりました、市ノ原閲子でごさまいます。伊勢嶋家の家政婦として、長年勤務しております。なので、一族の変態さには慣れました。だから、今更みなさんが怖いと言う事はございません。わたくしが今一番に怖いのは、そう言った変態さにカケラも戸惑う事なく平然と接している…。長谷川理玖さん、あなた様でございます」
親族一同「「「「「それな」」」」」
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