第5話 転生
ウーラノスからの提案で私の決心は簡単に傾いた。
「本当に地球の美味しい料理がこれからも食べられるの?」
「ええ、約束します」
これでほぼ私の心は決まった様なものだった。だけど、何度も聞いてしまう。
「もし、私がウーラノス様の世界に転生することになったらちゃんとサポートしてくれる?」
「ええ、もちろん!」
ウーラノスは笑顔で答える。
「それから、転生しても自分で料理を作りたいから地球のレシピとか教えてくれる?」
「そうですね、料理は発展してほしいところでもありますし僕としてはいいですが……ちょっと地球の神様と相談しますね!」
そう言うとウーラノスは目を閉じた。
――ほんの数分その状態が続いた。
その間に天音は考えていた。
このままウーラノス様の世界に転生することになるのかなぁ……。まさか自分に異世界転生なんてこと経験するとは思わなかった。地球では私突然死みたいな感じで亡くなったってことになってるのかな? それなら迷惑掛けただろうな……。お父さんとお母さん、悲しませちゃったかな……。はぁ……もっと親孝行しとけば良かったよ。それにしても、これからのことを思うとやっぱりウーラノス様の世界に行かなきゃ、あとは賭けみたいもんだよね〜。えっと、次の転生先はランダムに決まるって言っていたよね。次の転生先がいいところならいいけど、正直悪い転生先になんて生まれ変わりたくなんて無いし……。結果、ウーラノス様の世界に転生した方が安全ってことだね。それなら手厚いサポートを受けられる様にだね! やっぱり人間食事が大切だからレシピ件許可してくれないかな〜。
5分くらい経った頃にウーラノスは静かに目を開けた。
「天音さんお待たせしました! 地球の神様から許可が出ましたよ!!」
「本当にですか!! ありがとうございます!!」
私はウーラノスからの答えに満面の笑みを見せる。
その笑顔を正面から見たウーラノスが頬を少し赤くしていることには私は気づかなかった。
やった! これで食事に関しては自分で努力すれば美味しいものが食べられるわね!
私は美味しい料理のレシピの方に思考が向いていた。
「ゴホンっ! 天音さんどうですか? アズフェールに転生する気になりました?」
ウーラノスは赤面した顔を誤魔化すように言った。
私は明後日の方にいっていた思考を元に戻し、改めて真剣に答えた。
「ここまでサポートしてくれてるし、これからも助けてくれるんでしょ? なら、どこに転生するか分からない未来を選ぶよりウーラノス様のアズフェールへ転生することに決めたわ」
私の答えにウーラノスは嬉しさを隠せなかった。それから、私の手をとり握手をした。
「天音さん! ありがとうございます! 絶対幸せにします!!」
突然のプロポーズ的なセリフを言われ、それから手を握られたことで私は一瞬ドキッとした。
私はしどろもどろになりながらも答える。
「あ、はい。 よろしく、お願い、します……!」
「よろしくお願いしますね! 天音さん!!」
ウーラノスはご機嫌にニコニコと笑っている。
対して私は至近距離のウーラノスの笑みに少なからずダメージを受けていた。
いや! 近いって!! ウーラノス様の笑みは凶器ね……! 心臓に悪いわ!
と、ドキドキしていた。
「それでは、改めて転生について説明しますね!」
ウーラノスはご機嫌のまま説明する。
アズフェールに転生するにあたって体を新しくする必要があるらしい。その為に今の外見とは違くなってしまうということ。
「どんな外見になりたいとかあります?」
一応要望も聞いてくれるんだ。
「特にこの外見にしてくださいということは無いですね……。 不便がないような外見でいいです」
うん、平均的な外見でいいよね。美人過ぎても大変そうだし、かといって可愛くない外見も嫌だし……。普通が一番無難だね。
ウーラノスは私の答えを聞き爽やかに承諾する。
「分かりました! 不便がないような外見にしときますね!!」
あと、能力に関しては神の使徒という事で必然的に高くなってしまうようだ。
「私の使徒ですからね、世界の誰よりも強くなくてはいけないので!」
ははっ……。転生する前から最強が決まってしまった。これじゃ、初心者にも優し過ぎるね……。
苦笑いを隠せない私。これからの生活にちょびっとだけ不安になる。
「まあ、弱いよりはいいか……」
そんなことを呟いて自分に言い聞かせた。
◆◆◆
あれからその他色々聞いた。とりあえず、聖域と言われるところに降臨(笑)させるらしい。その土地はまあ私の土地みたいなものだから好きにしていいと。そこには誰も人は住んで居なくて、というか住めるようなところでは無いらしい。そんなところに降臨させるのかよ!!って思ったけどウーラノス様が人がいっぱいいるところに降臨させたら即教会行きですよと言われ思わず表情が抜けてしまったのは仕方がない。ごもっともでしたね……。そんな訳で人が住めない険しい山々に囲まれた森に降臨することになりました。まあ綺麗な森らしいから良かったけど。
「大方の説明はこんなところですね! あとは、世界に降りて疑問に思ったことをその都度聞いてって感じです」
「分かりました」
「それじゃあそろそろアズフェールへ転生させますがよろしいですか?」
私は目を閉じて深く呼吸をした。そして再びウーラノスの目を見て言った。
「はい」
「次に目覚める時はアズフェールに降り立った時です」
それからウーラノスは優しい微笑みを見せながら両手を前に出した。両手から溢れる光が出てくるとその光は私を優しく包み込んだ。
私は優しい光に包まれると自然と瞳を閉じた。そして意識がふわふわしてくる。意識が完全になくなる前に聞こえたのはウーラノスの優しい声。
「アマネにとって素敵な世界であることを祈って……」
その言葉を聞いた後に私の意識は眠るように沈んでいった。
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