第14話 新たな1日



薄暗い部屋の天井でほのかに光るブランコがゆらゆらと揺れていた


(何だろう あれは)


眠い目をこすってよく見るとそのブランコは小さな玉が数珠のように連なってできていた


あれは微小精霊か?


ただの丸い球にしか見えないが、よく見ると細かく小さくて丸い精霊の赤子ともいえる微小精霊たちだ。小さな目がとても愛らしい。


その微小精霊たちが数珠のように連なってブランコを作っていた。


(…一体何をしているんだ?)


しかし、珍しいこともあるもんだ。


彼ら精霊は思い思いに動くことが大好きで、団体競技なんてやった日にはただのカオスにしかならない。


ただ、たまにみんなで一緒に何かをつくって遊んでいたりしていて、今日はブランコを作る日だったらしい。


(あれはドラ吉か)


ふわふわゆらゆらと揺れるブランコの土台には俺がよく知る 精霊が座っていた。


幼い顔を持つ赤いドラゴンのドラ吉が満面の笑みを浮かべながらブランコを漕いでいた。


(朝からすごい楽しそうに遊んでるね、君)


ドラキチはゆらゆらと ブランコを漕いで そして勢いがついたところで空へと飛んだ。


両手を前に伸ばし、ドラゴンの羽をいっぱいに広げたドラ吉は、綿毛のようにゆっくりと落ちていった。


俺の隣に寝ている母親のカグヤのお腹の上へと。


正確には 肌着がめくれている母親のカグヤのお腹のへその周囲にだ。


どうやらドラ吉は、おなかの中心にあるへそを目指して飛んでいたらしい。


へその周囲をよく見ると他にも 精霊たちがいて、へその一番近い位置にはゴブリンのゴブリオもいた。


彼はその位置に座りながら自分よりも へそから遠い位置にいる 精霊たちを煽っているようだった。


煽られた 精霊たちは悔しそうに地団駄を踏みながらも その位置から動かなかった。


何をしているの 君たち


しばらく待っていると次の精霊のオークのオクトンがまたブランコに乗り、ひょいっと飛んでへそへと落ちていった。


オクトンはドラ吉にぶつかり、目を回しながらドラ吉は外へと飛んでいった。


反動でオクトンはへそに見事ハマり、ガッツポーズをして、踊り狂っていた。


先ほどまでへそに一番近かったゴブリオは今度は悔しそうにしてコミカルに怒っていた。


…これはひょっとして母親のへそを中心とした カーリングをやっているんだろうか


いわば ブランコ カーリングだ。


へー、面白そう…。


いや人の母親のへそで何しとんねん。


そのへそは神聖なものなんだぞ?


俺のそんな思いとは裏腹に、この競技は精霊たちみんなが興味津々 らしく、周囲には他の微小 精霊 や天使のラプコ など が母親の服や 布団を観客席扱いにして座り、身振り手振りで応援や拍手をしながらブランコ カーリングを見ていた。


よく見ると俺の体にも精霊たちが止まっていて 俺の霊力を ポップコーン代わりに食べていた。


おい 俺の体は自販機じゃないぞ。


別に俺の霊力なんて有り余っているから問題はないんだけれどその扱いはちょっとなんかなぁ…。


しばらく ぼーっと見てると 俺が彼らをジト目で見ていることに気づいた 精霊たちが一人また一人と増えていき みんなで慌て出して一斉に隠れた


今更遅いよ 君たち


頭隠して尻隠さずな 精霊たちの様子をあくびを噛み殺しながら見て、周囲をぐるりと確認した。


ここは昨日見た場所だ。


だが昨日とは違うのは新しい高価な家具や装飾品が敷き詰められていることだ。


領主の息子の部屋としてふさわしい部屋だろう。


ここが今日から俺と母親が住む部屋だ。


そして新しい一日が始まる。

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精霊の隣人~餌付けした精霊たちが強すぎて困ります サプライズ @Nyanta0619

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