第289話 太鼓

お祭りの前にはお囃子を練習するために、夜集まって練習しているそうだ。

遠くからお囃子が聞こえてくると、「もうすぐお祭りだなあ」と楽しい気持ちになる。


意外にもかなり遠くの場所で練習しているはずなのに、笛も太鼓もよく音が届くのだ。

間に建物がないということもあるんだろう。

他に音がするものがないというのも。


お祭りは、自分の住んでいる地区は参加していないので、ただ聞こえるだけなのだが、神輿が移動しているらしいことは家にいると音で分かる。

音が段々と近づいてくるから。


神社にいる神様もこういった音は楽しくて好きなのだろうね。


私が小学生高学年になって、何かのクラブに入らなくてはならないことになった時に、「太鼓を叩きたい」と鼓笛隊に入った。

昭和の時代なので、女子は金管楽器を担当することができず、鼓笛の太鼓の部分だけで、私はひたすら太鼓を叩き続けた。

中太鼓とよばれる太鼓を担当した時は、バチが折れて飛んだ。


そんなアグレッシブさをかわれて、ベルリラというマーチング用の鉄琴を担当することもあった。

あれ、小学生女子にはかなりの重さで、力強く叩かないと澄んだいい音が出ない。


叩いて叩いて、鼓笛隊のドラムメジャーもやることになった。

あのバトンもずっと振り続けると腕がぱんぱんになってくる。

体力自慢だったので根を上げるわけにはいかず、体幹を鍛え、基礎体力も上げて乗り切った。


どこからか太鼓の音がすると、昔の血が騒いできて、「がんばれ!」と応援したくなる。


そして、推しのメタルバンドのライブでも、飛んでくるギターピックではなく、飛んできたドラムスティックを拾う。


つくづく太鼓が絡む人生だなと思う。

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