第269話 懸念
一時期、全国各地のゴミ屋敷が特集されて、レポーターが持ち主に直撃に行ったりしていたことがあったが、街だけでなくゴミ屋敷は田舎にもある。
独居ということでゴミ屋敷化するのは街も田舎もそう。
あちこちからゴミを集めてきてというパターンのほかに、自分が生活で出すゴミを出せなくなってというパターンがある。
田舎の場合、ゴミを他の場所から集める人もいるにはいるが、私が最近心配しているのは、自分の家のゴミを出せずにいて、ゴミを積み上げている近所のお宅である。
一人で生活している男性で、仕事をしているのかしていないのかは不明。
健康であることは間違いはなく、食べ物を自分で調達しているから、近所の人間に見つからない時間を狙って出かけて帰ってきているのだろう。
車がないと買い物にも不自由な場所だから、自転車で出かけているのだと思う。
稀に車ですれ違ったり、追い越したりするからわかる。
道路から見える家の玄関部分は、大人の背丈までゴミ袋や段ボールが積み上げられている。パッと見たらまさか人が住んでいるとは思えないような。
そんな状況だからか家の中で食事をするのが躊躇われるようで、玄関を出た場所で買ってきたお弁当などを食べているのを見かけることがある。
それも人の気配がすると中に急いで入るから、挨拶をするということはなく。
ゴミ屋敷になる前は挨拶をしてたのだが、こうなってみると人と接触したくないのだろう。
害虫や害獣、火の不始末など、こういったゴミ屋敷では心配される。
その家の周りは高齢化が進んで、普段そこで生活をしている人間がほとんどいないのはいいのか悪いのか。
あそこの家の人、生活大丈夫なのかな?なんて他の人に訊いたら、そんなに心配しているのならあなたお世話してあげなさいよということを言い出す人もいるから、うっかり何も訊けないし。
何も起きませんようにと思いながら、前を通る。
それくらいだ。
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