第232話 下りてくる

裏が山なので、よく動物を見る。

そろそろ慣れてきてもいい頃だとは思うが、見かけるとまだぎょっとしてしまう。


先日は久しぶりに帰省してきた子どもを駅まで車で迎えに行く途中で、鹿が2頭飛び出してきた。

これまでの経験で、一頭見かけたらそれだけで終わりではないとはわかっていたが、二頭目が出てきた時は息が止まりそうだった。

車に当たらなくて良かった。

夜は本当に注意して走らねばならないなと思った。


人口減少が著しい田舎。

人を恐れていたはずの動物たちがどんどん気軽に山から下りてきているのが、減少具合と正比例しているようだ。

これまでは夜にそっと下りてくるくらいだったのが、昼間に堂々と下りてくる個体もいたり、たまにだったものが連日となったりで、徐々に人里が自然に飲みこまれている感じがする。


ニュースで、わりと都会だと思っていた市で野生動物が暴れていて問題になっているが、あれもそういう流れ。

それと、市町村合併で思っている以上に田舎もその市に入っているからということもある。


田舎に20年以上住んでいる人間の実感としては、動物を見る回数、種類が増えたのは確か。

クマも20年前の出没頻度とは比べ物にならないくらい高くなっているから、気軽にやってきて山に入るのは怖いこと。


昨日、買い物帰りに見たのは、道路脇に車を停めて一心不乱に山菜をとっているそこそこ若そうな夫婦。

手にたくさん持っていたのは、細い竹。あれ、山菜だったのね。うちの庭も生えてくるんだ。

その山の所有者でもないのだから違法なのに、あんなにたくさん採ってどうするんだろう。

自分のお店で調理して出すつもりか、売るつもりなのか。

家庭用にしてはたくさん持っていたから、悪質だなあ。


その場所、獣道と交わる所なので、大型の怖い動物と遭遇してしまえばいいのにとか、お地蔵さんもあるので、罰が当たればいいのにと思ってしまった。


クマもイノシシも鹿も狸も狐もそこで見たことがある。

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