第179話 噂話 その2
田舎の恐ろしさはここまでたくさん語ってきた。
思い出したことがまたあった。
夫が田舎では珍しい職業なので、同年代の男性たちは夫のことが気になったのだろう。
そして就職後比較的すぐに結婚した私の存在も。
馴れ初めなど近所に語るほどおしゃべり好きでもない私は、壮大な勘違いをされていたようだった。
簡単にいうと、大人しそうな夫を結婚に無理やり持ち込んだバカ女だと思われていたよう。
それに気が付いたのは、地区で義務付けられる清掃作業中に、同年代の独身男性たちが聞えよがしに嫌味をずっと言ってきていたからだった。30になる前だったなあ。
「ああいった仕事は、すぐ結婚したがる女が寄ってくるんだよな。
バカは目が眩むっていうし。」
最初はその人たちの幼馴染や同級生の話でもしてるのかな、もてない男はみっともないなと聞いていたのだが、話ながらちらちらとこちらを見てくるので
(これは、なんだ?私に聞かせようと?…え?私に言ってるのか?)
別に話しかけられているわけでもないから、涼しい顔をして黙々と清掃作業をして終わらせて帰った私。
そんなことを何回も繰り返して、こちらから訂正しようにも何をどう勘違いしたのかよくわからないし、知らないもてない男に構うのも気味が悪いし、気分は悪いけれどスルーすることにした。
今、その男たちは私に対して前のようなことを聞えよがしに言ってくることはなくなった。そして彼らはみな独身のままだ。
どこかで誰かが訂正したのか、その中で一番私に対して言葉が汚かった男が急に丁寧に接するようになった。
私と夫は同じ大学で同じ学部の先輩後輩だ。
別に学歴が釣り合わなくたって、お互い尊敬しあって仲良くやっていく夫婦だって珍しくはないだろう。
そのあたりがわからないから、悪口男軍団は一人でいるんだろう。
全然知らない女一人に集団で悪口言って平気な精神なんだから。
この1年、敬語を使われるようになって、逆に気持ち悪い私である。むず痒い。
そこまでずっと勝手に判断して見下げてきたくせにさ、みっともないな。
ここまでやってきたんなら、貫けよと思うのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます