第167話 侵入者

ここ一か月ほど、何か台所にいる気配がする。

小さいフンも度々発見するし、物が移動していることがある。


衛生的に問題があるからと、アルコールスプレーをたくさん使ってみた。

そうするとニオイが多少残るのか、使った場所には入らないようだ。

フンがないからわかる。


屋根裏でも毎日何かが運動会をしている。

うちの中に数か所、小動物が嫌がる音を出す機会を置いているけれど、嫌がっているのかわからない。毎日来ているから効果があるのか怪しい。


お昼にペペロンチーノを作ろうと、パスタをゆでる準備をしていたら、小さいかわいいヤモリが圧力鍋の隣にいた。


これまでネズミかと思っていたが、どうも気配の主はこのヤモリのようだ。

家から出してやろうと捕まえようとしたが、逃げられてしまう。


ヤモリの好物は家に棲む害虫らしいから、もうしばらくこのままにしておいてもいいのか。

アシダカグモも出てくる年があるが、あれも害虫を食べてくれるからほっておけと言われるね。でも、急に現れると背中がぞわっとする。サイズにどうも慣れない。


家に居続けるということは、家に害虫が居るという証拠。

せっかくだから食べ尽くしてもらって、いなくなってから出て行ってもらえばいいかな。


去年、夜トイレでアシダカグモに出くわして、卒倒しそうになった。

思いのほか近距離にいたから叫びそうに。

意外にもあんな姿なのにアシダカグモの方が人を怖がって、見つけるとスゴイ勢いで逃げていく。その逃げていく様子もなかなか怖い。


今、捕まえ損ねたヤモリのほかに、カメムシも飛んでいたから、そっちの方をまず見つけねばなるまい。カメムシは臭いからなあ。


家の中にあれこれと入ってくるから油断ならない。

変わった侵入者が見つかると、家族はみんな迷いなく私を呼ぶ。

いや、私も全部怖いから、あんまり頼ってもらうのは…。


田舎のお母さんはこうやって少しずつ強くなっていく。

虫も動物も免疫がついてきて、「はいはいわかった。放置で大丈夫よ。」と言う。

駆除しないとならないものは、確実に仕留める。

高校生の頃の私が今の私を見たら、どう思うのかな。

肩に毛虫が乗って半泣きになっていた少女は、ふてぶてしいオバサンになった。

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