第148話 去年の夏の思い出

暑い日だった。

夫の職場に車で迎えに行くことになっていて、急いで向かった。


昼に車に乗った時は特に何事もなかったのに、どうしてだかかなりの振動がハンドルに伝わってくる。

ディーラーでは「そろそろ買い替えませんか?」と言われてきているので、古くなってきたせいなのかなと思いながら、夫の元に車を走らせる。


振動はどんどん酷くなる。


職場につくまで、対向車もなく、暑いせいか人もいなかった。


怖い顔をした夫が後方を指さした。


パンクしていた。


夫が手際よく汗だくになりながら、パンクしたタイヤとテンパータイヤと交換してくれた。


そのままディーラーへ向かった。


「なんで、変だと思ったら車を降りて確認しないの?」


分かった時点で車を停めていれば、ちょっとした修理で済んだだろうに、もしかしたらタイヤのホイールもダメになっていたら、タイヤとホイールを4本分買わなくてはならないこと、車にもダメージがあるかもしれないことをしっかり叱られた。


ディーラーで確認してもらうと、ホイールや車体は無事で、タイヤはすでに他の3本も消耗していて交換時期も近いから、4本一緒に新品を購入することを勧められて注文した。ご厚意で、ディーラー所有のタイヤを履かせてもらって、交換まで貸してもらえることになった。

安全の為ということだった。


帰り道に夫が

「それにしても、マッドマックスかと思ったよ。

 すっごい音出して、平気な顔して走ってくるんだもん。

 ワイルドすぎるよ!」

と大笑い。


この件で、しばらく私は家族にマッドマックスと呼ばれたのであった。


パンク時にあんまりディーラーでしょぼんとしていた私を可哀想に思ったのか、次に新品のタイヤが届いて、それに交換してもらうためにでかけたら、ディーラーの営業マンも整備士さんも私が待っているテーブルにきてくれて、


「タイヤがパンクしても、そんなみんながすぐにわかるなんてことはないですからね。そういうこともありますよ。」


と言ってくれたのだった。


それにしても、マッドマックス状態の時、誰も見ていなくて良かった。

見ていた人がいたら…。

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