第38話  蛍を見に

子どもたちを連れて、蛍を見に行こうということになった。


あまり遠くに行くのは翌日学校なのでやめて、学区内の

静かな場所へ車を走らせる。


多分このあたりなら飛んでいそうだねということで

車を皆で降りて辺りを見渡す。

真っ暗なだけで小さい光は見当たらなかった。


四方をよく見ても真っ暗なだけ。


「ここはいなかったのかなあ」


後ろで急にガサガサと茂みが揺れる大きな音がした。



「みんな、急いで車に乗って!!」


夫がそう言うので、ダッシュで車に乗り込んだ。



何がいたのかはわからない。


クマなのかイノシシなのか。



どっちにしても出逢ってこちらが無事で帰れる保証はないから

帰ることができてよかった。



「あれ、何の動物だったんだろうねえ」

「すごく怖かったね」


家に着くまでそういう話をしていた。



怖かったからそれからは蛍を見に車では出かけていない。

流星群などを見る時も、家から歩いて出るくらいで

あまり長い時間外に出ているのは危険だと学んだから

ねばらずにさっと帰ってきている。


後日明るい時間にその場所を車で走ってみたが

けものみちと道路とが交わった場所だったよう。


なにか中型か大型の動物が出てこようとしていたんだろう。


たまに家の前の道を何か動物が走り抜けていく音がする。

怖いからあえて見ないようにしている。

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