第8話 病院

熱が出る。ケガをする。なんとなくだるさが抜けない。


病院へ行って処置してもらって薬をもらって帰ってこようとなるけれど

田舎に住んでいるとなかなかそういう訳にもいかない。


自分で車に乗って病院へ行かねばならないからだ。


そういうときくらいはバスやタクシーを使うべきだろうというのもわかる。


しかし、路線バスの本数は病院に行って帰ってくる時間帯にはほぼなく、

タクシーもわざわざ電話して呼ばねばならない上に、片道が病院に

一回かかるくらいの料金だったりする。

セレブでもない我が家では現実的ではない。


となると、自分で車を運転できる体調になるまで我慢ということになる。

夫に仕事を休んで連れて行ってもらうという選択肢もあるにはあるが、

専業主婦に限りなく近い身には申し訳なくて言い出せない。

それにそこまでは自分の症状が酷いとも言い切れない。


ひたすら自分の治癒力を信じてしばらく寝込み、ピークをこえてから

自分で運転をして病院へ向かうことになる。

そして、病院では「どうして我慢するんですか。すぐ来てください。」と

叱られる。

親族が集まって住んでいる田舎では、大人は皆免許を持っていて

家に居る誰かが病院まで送ってくれるのが当たり前だから

核家族ではそういうわけにはいかないのだと説明はしたいのだが

それを言う元気もなく叱られっぱなしになる。


診察も目的の科が毎日やっているわけでもなく、下手すると行ったはいいけれど

専門の医師がやってこない曜日で「予約をとってからきてください」と

追い返されることだってある。


歩いていける距離に内科や外科の個人病院があって、総合病院もバスに乗って

行ける。

そんな場所で生まれ育った人間からしたら結構な苦行である。

とりあえず今のところは無事に生きていられるが、もっと重篤な病気や症状だったら

まずいのではないかと思う。


救急車を呼ぶにしても、救急病院に自家用車で行く方が早いという事実。

消防署から救急車を出してもらって迎えにきてもらうより、自分で信号を守って

車を運転する方が半分の時間で済むようだから。

近所の方に「何かあったら、自力で行った方が早い」と教わった。


健康で持病がないからこそ、核家族でも田舎に住めているのだなあと

つくづく思うのであった。

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