第42話「なんかしてたタカキ」
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……。
…………。
ここはブオンバプの街の外れのうらぶれた路地。
そこは殆ど人の寄りつかない、密談するにはうってつけの場所。
そんないかにもな場所で誰かが会話をしていた。
「……どういうことなんだい……。
全くエレガントじゃない。
この状況は全くエレガントじゃあないよぅ!!」
誰かのうちの一人が大袈裟な身振りと共に叫ぶ。
「僕がどれだけお小遣いを叩いて、善行をしても、……しまくっても、全く勝てないじゃないか!
しかも、あいつはお小遣いじゃ出来ないことばっかり!!
全然エレガントじゃぁないよぅ!!」
怒りにも似た劣情を露わにして叫んだ。
「……いやぁ。
俺達は頂いた金の範囲で出来ることをやってるんでさぁ。
結果、あなたも、どんどん名を上げて行ったじゃぁないですか。
ねぇ……、タカキさん。」
もう1人の誰かが続ける。
「あなたは、俺達、"鷹の団"を使って、支払った金で出来る最大のパフォーマンスの恩恵は受けているんですよ。
ただ、相手が悪いと言う奴です。
もっと周りを見ましょうや。
あなたはとても恵まれている。」
"ジャラリ"と鷹のペンダントを揺らしながら言う。
どうやら、ブオンバプを騒がしている鷹のペンダントの集団は、タカキ・ワーヤサカの依頼を受けて事件を起こしていた様だ。
それを、タカキが解決し、騎士団としての自身の栄行として、ポイント稼ぎをしていたと言う事だった。
まさに自作自演である。
「確かに君達、鷹の団にシンパシーを感じて、依頼を始めたら、どんどん僕の名前は売れて行ったさ。それは事実さ。
でも、僕は勝ちたいんだよ、唯臣・矢倉・ソンギブに……。
たかが豪商の、貴族の世界を知らない奴に負けては行けないんだよぅ!」
タカキは言う。
「ここに僕のお小遣いを貯めた全財産がある。
ざっと35万プオンほどあるだろう。
このお金で昇級試験の時を狙ってくれ。
……もう直接実力行使だ。
秘密裏に唯臣・矢倉・ソンギブを血祭りにあげて欲しいんだ。
出来るよね?鷹の団?」
悪い顔をしながらタカキは言う。
「……35万プオンですかい。
…………、確かに。
頂いたお金で出来る事はきっちりやりますぜ。
へへっ。タカキの旦那。」
暗がりで良く見えはしないが、口元がにやりと緩むのは分かった。
「じゃあ、頼んだよ!
こんなとこに居たら僕の気品に泥が付く。
くれぐれも事はエレガントに遂行してくれたまえよ!」
捨て台詞の様に言葉を吐いて、逃げるようにタカキは去って行った。
一番声を荒げていた男が去り、路地は少し静寂を蓄える。
しかし、それも一瞬。路地奥からまた別の声が聞こえて来た。
「お頭ぁ。
35万。
……美味いですねぇ。」
先ほどから居たのか分からい、完全に気配を消していた男が呟いた。
「……ジュンターウか。
ふっ。
貴族のお坊ちゃまのプライドは往々にして御しやすい。
美味しい金づるだったが、これが最後になるだろうなぁ……。」
鷹のペンダントを引き千切り、”ジャラㇼ”と手で遊ぶ。
「くくくっ。
鷹の団のラストミッションですね。
最後は俺にやらしてくださいよ。」
ジュンターウが言う。
「ふふふっ。
もらった分はしっかり働けよ。
ジュンターウ。上手く行けばたっぷりと褒賞金を与えよう。
……さぁ、アジトに戻るぞ。」
お頭と呼ばれた誰かが言う。
そう言うと、お頭は右手で髪を掻き揚る。
すると、カメレオンのチャームの付いたピアスが”シャナリ”と揺れた。
と、その瞬間。
うらぶれた路地はいつもの静寂を取り戻し、誰かがここに居た形跡は何一つ残ってはいなかったのだった。
…………。
……。
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