第134話 夢姫、誓う。(20)

 あまりに突然の忠告に、エメラルドの瞳は零れ落ちるのかというくらい大きくなりました。

 

「それは何故ですか?」

「……分かりません」

 

 理由が分からないと言う第二王子に、夢姫はさらに驚きました。

 

「正直にお話して良いのですよ。ここには他の兄弟は誰もおりませんから」

 

 木漏れ日が差すかのように、ふわりと温かい空気が第二王子を包みました。三兄弟の中では軽薄を装っている第二王子ですが、それは自分の印象を決定づけるためのものです。その内実は決して軽薄ではなく、姉と兄が輝くためにはどうしたら良いかと立ち回る健気な弟なのです。

 

 それゆえ、第二王子は自分の理由なき感情を押し殺してしまう場面があります。夢姫はそのことをずっと知っていました。なので、二人きりになったときは、なるべく第二王子の理由なき感情を教えてほしいと思っているのです。

 

「理由は分かりません。ですが、王弟殿下のことをなんだか嫌だと思いました。どのような方なのか存じ上げないのにこのようなことを申すのは、とても失礼だと思っているのですが……」

「そうですか。でもなんとなく第二王子が言わんとするところは分かりますわ。わたくしも今日、初めて王弟殿下をお会いしましたが、なんだか何とも言えない感情が沸き立ちました。お父様が王弟殿下を島に配置された理由がなんとなく分かるような……」

「そう!それなのです!わたくしも同じようなことを考えました。島に配置されるとは到底思えない王弟殿下然とされるお振舞いですが、その奥底から感じ取ることができる魂胆のようなものが見え隠れしていらっしゃって……。今回王城へとお越しになられたのも、何かお考えがあってのことのように感じてなりません」

「お父様は王弟殿下をご招待されたのかしら……」

 

 その後に続く言葉はありませんでしたが、夢姫も第二王子も「そうとは思えない」と意見を一致させていました。

 

 一方その頃、夢姫の執務室を後にしていた面倒姫は、第一王子の背中を追っていました。「お話したいことがある」と告げると「ではこちらへ」と案内されたのです。

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