第5話

「アナタ、イツキのオンジン。サンキュー」

 ローラがにっこり笑いながら伊織に言う。

 樹とは真逆で、これでもかというほど笑顔が溢れている。

「あの、樹クンは普段からあんまり笑わないんですか?」

 不意に伊織に問いかけられたローラは、きょとんとして表情で答えた。

「エ?イツキはネェ、クールなトコロがイイノヨ」

「そうなんですか」

 ローラは、うっとりとした表情で夢でも見ているようである。

「イツキはネェ、アタシのアルバイトシテタ、エイカイワのガッコウでネェ、イチバンのハンサムデシタ。コクハクして、1カイメはフラレタけど、2カイメでツキアイマシタ」

「あ、そうですか。馴れ初めは別に聞いてないんですけど」

 伊織は、ローラが一人で盛り上がってしゃべり出したので少し面食らった。

「イツキのカヨッテルダイガクでアルバイトボシュウシテタカラ、スグにオウボシマシタ」

「へぇ」

「サイヨウサレタノデ、イマコウヤッテイッショのガッコウにイマス」

「恋人と一緒にいられる時間って貴重ですよねぇ。分かります」

 伊織は、やたらとうんうん頷いて共感している。

 自分にも思い当たる節があるのかもしれない。

「ワカッテクレマスカ!イツキのホウが三サイトシシタナノで、ワカイオンナがイルダイガクのセイカツがシンパイで」

「樹クン、ハンサムですもんね。ていうかローラさん、日本語お上手です」

 伊織に日本語を褒められ、ローラは嬉しそうだ。

「イツキがオシエテクレマス。ワタシもイツキにエイゴオシエマス」

 ローラはうっとりしながら話していた。

 話しぶりから想像するに、よっぽど樹のことが好きらしい。

 いつまでも彼女の周りにはハートがぽんぽんと飛び交っていたので、伊織はそっとその場を離れることにした。

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