第71話 バッグその2

あたくしは、バッグ。

ヴィトンのバックざます。

あたくし、今、質屋のショーウインドゥにいるざます。

まあ、あんな女に使われるより、ここで下々の者たちに。

眺められるほうが、まだ、ましざますわ。

ああ・・・みなの視線が、あたくしに刺さります。

なんていって、もう2年。

そろそろ運命の持ち主、出現希望ざます。

ん?サラリーマン?あたくしをずっと見てる。

ん?店に入った。お!あたくしを。

つれていきなさい。あたくしを。

・・・・・・・・

この家には紳士とその奥様。そして年端もいかない女の子。

そうね。奥様なら・・・あたくしを持つ・・・ちょっと足りないけど、

心の広いあたくしざます。立派な淑女に育てて見せるざますわ。ふふ。

「ちょっとなにそのヴィトンのバック。私に?」

「かなあ。」

「かなあ。ってなによ。私そんな高いの使わないわよ。」

なにこの女。あたくしの良さがわかってない。ふうう・・・前途多難ざますわ。

でも、立派に育てて見せるざます。

「わああ。ばっぐ。ばっぐー。何入れよう??」

ちょっと小娘。なにいってるざますか?

「だめよ。それ高いバッグなんだから。ヴィトンっていうのよ。振り回しちゃだめ。お父さんが買ってきたんだから。」

「へへへ。びとんー。びとんー。びとん怪人参上~~。」

ちょっと小娘。あたくしをかぶって走り回るのやめるざます。

「あーあ。ヴィトンとられちゃったね。どうするお父さん?」

「ん~。しょうがない。娘にあげちゃうか。」

「ちょっと。それ、おかしくない?」

「まあ、宝くじに100万当たって調子乗っちゃったしな。それに質屋のショーウインドウみてて衝動買いしちゃったし。お母さんにはちゃんと別のプレゼント用意するよ。」

「高いのいらないからね。」

なにこの親子3人。あたくし信じられないざますわ。

チョット婦人。小娘止めなさい。

「だめよ。ポテトチップスいれちゃ。」

「明日公園に持っていくのー。」

「食べ物入れちゃいけません。」

「んー。じゃあ。」

チョット婦人。あたくしにままごと道具つめてるざますわよ。止めなさい。

「お外に持って行っちゃだめよ。おうちの中だけね。」

「はーい。」

チョット婦人。そうじゃなくって、あたくしにおもちゃいれるのって・・・。

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