231.吊り天井

 盾を持つ隼人と幸彦がそろりそろりと前に出る。槍の昴と大太刀の翼は呪森の隠者カーズフォレストハーミットの後ろに回り込む。


 最初に仕掛けたのは呪森の隠者カーズフォレストハーミット。杖を掲げると地面から蔦が伸びヤンキー四人組に絡み付き締め上げる。初っ端から大技だな。それも範囲攻撃だ。


 柊が火の玉を放って攻撃。蔦が燃えるが、同時に燃え広がりヤンキー四人組も火に包まれる。まさしくフレンドリーファイアー。蔦が消えたが味方にダメージも加えたので、プラマイゼロかな? いや、マイナスだな……。


 動けるようになったヤンキー四人組が一斉に攻撃を仕掛けるが、土の壁がせり上がり防がれる。そして、翼が見えない攻撃を受け吹き飛ばされる。風魔法か?


「柊! BP管理はちゃんとしろよ! そっちも危なくなる前に自分で回復するなり、合図するなりして回復してもらえよ!」


 昴の体が淡く光る。身体強化だな。動きが早くなり呪森の隠者カーズフォレストハーミットに昴の槍が突き刺さるが、槍に刺されながらも呪森の隠者カーズフォレストハーミットが反撃し昴が炎に包まれる。


 それでも、離れない昴は漢だな。その漢気に応えようと隼人、翼、幸彦が呪森の隠者カーズフォレストハーミットを攻撃。その隙に柊が昴をアンクーシャで回復。昴を包んでいた炎が消えた。


 炎に包まれていた状態は異常状態だったってことか? 初めて知った。俺もまだまだだな。


 その後、双方攻撃回復を繰り返し一進一退を繰り返す。三軍全員がヘトヘト状態になり、チラッチラッと目で助けて~と訴えかけてくる。


 仕方ない。そろそろ、終わりにするか。


 身体強化、加速を使って体落しからのロメロ・スペシャル! 人型の化生モンスターだからできる技だな。三軍がなぜか引いているが、早く攻撃しろよ!


 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー

 ーー

 ー


「「つ、疲れた……」」


「「し、死んだ……」」


「あの技はないわ……」


 なんだ、一人だけ俺をディスってる奴がいるな。特訓・極だな。


 歩いてすぐの所に六等呪位がいる。三軍が撮影機材を運びセッティングしていく。


 ガングレト 六等呪位 北欧神ヘルに仕える下女。ヘルの下男ガングラティのパートナーでもある。


 民族衣装を着たおばさんがいる。あれが化生モンスターなのか?


 北欧神ヘルというとロキの子どもでフェンリルとヨルムンガンドがヘルの兄弟になる。大物の下女ってことか。


 さてと、問題はかりんだな。


 かりんをPTメンバーに入れられるのか? んー、駄目だな。名前は出るがグレーアウトして選べない。


「きゅ~?」


 やはり、幼体というのが問題なのか? 今日のところは諦めよう。赤星さんに預ける。


「駄目でしたの?」


「駄目だったな」


「かりんは可愛いからいいんじゃないか? 恢斗」


 麗華さん、そういうことではないのですが……。


「まあいい。やることは変わらない。さっさとやるぞ」


 三軍から預かった使役化生モンスターのカードを瑞葵と麗華に渡す。


 バトルフィールドを展開。


 使役化生モンスターたちを召喚しアンクーシャを高骸骨魔術師ハイ・スケルトンウィザードに持たせる。


 瑞葵のムジナが進化して。


 大貉むじな・☆ ランクGジー プチ妖術Lv3 プチ指揮Lv1 ☆盗む △身体強化Lv1


 になっている。


 指揮スキルはこのスキル持ちが前線に立つと、攻撃力と異常状態耐性が2%上がるというもの。プチとレベルがあることから有望なスキルとみれる。


 今回は三軍がいないから最初から瑞葵も麗華も参戦。使役化生モンスターもだ。おに小堕天使デミフォーリンエンジェル小悪魔レッサーデーモンは筋トレな。


 麗華が勇撃の波動を発動。身体強化を使った瑞葵が動く。ガングレトが瑞葵の双剣を箒で受ける。


 ほ、箒かよ!? 


 瑞葵の双剣を箒で防ぐ姿はシュールというかコミカル? 


 瑞葵が攻撃している隙に青銅人形ブロンズパペットが槍で攻撃するが盾……鍋の蓋で防ぐ。


 な、鍋の蓋ですか?


 凄い箒と鍋の蓋だな……。ドロップアイテムに出ないよな? どんなに性能が良くてもあんな装備いらないんですけど。もし出たら、二軍か三軍に使わせよう。箒って武器の種類的に何になるんだ?


 それにしてもこのガングレトおばさん強ぇな。瑞葵だけでなく使役化生モンスターも加わった攻撃を防ぎ、いなし、反撃して魔法攻撃までしている。八面六臂はちめんろっぴの働きだな。


 そんなガングレトおばさんが一瞬の隙を突き跳躍。瑞葵たちと距離を取り地面に箒を叩きつける。六つの光の円から人型が浮き上がる。


 三体は容姿が麗しく背が高い、残りの三体はずんぐりむっくりの背の低い髭面。まさかのエルフとドワーフだ!? こいつら、化生モンスターとして出てくるんかい! 


ガングレトおばさんは俺が押さえる。瑞葵たちはそいつらを頼む」


「仕方ないですわね」


 っていうか、ガングレトおばさんが凄い目で俺を睨んでいるのだが? やはり、六等呪位ともなると言葉を理解しているのか?


「おばさん」


 怒りに満ちた表情をしたガングレトおばさんが、ほかの連中のことなど目に入っていないかの如く、俺に猛烈に襲いかかってくる。


 煽り耐性が低いな。それと、やはり言葉を理解しているようだな。


 太刀・霧獣と小太刀・威霙で応戦するがBPが少しずつだが減っている。箒の先端の枝が俺に掠っているようだ。枝一つひとつが刃と同じってことか。


 あの箒、凄ぇな。


 ちょっとだけ欲しくなったかも。








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