230.鑑定のスクロール
俺たちが先駆者。だから、データ取りをしている。
「いつか頭打ちになるとは思っている。だが、それは今すぐじゃない。だからこそ、レベルの低いうちにできるだけ適合率を上げる必要がある。今はそれほどでもないと感じるが、レベルが上がれば上がるほど、その真価を見せつけるものとなる」
「知ると知らないでは、将来的に大きな差になるな。それも、埋めることができない絶対的な差ということか。恢斗」
「恢斗がやり直しが利かないという意味がよくわかりますわ」
俺は上を目指す。二軍や三軍が何を考え何を目指すのか知らない。だが、七等呪位を専門に狩る部隊があったほうがいいのも事実。適合率が低い者でも、七等呪位狩りができるぐらいには育てられると思っている。
今後は組織として、そういうことも考えていかないと駄目なんだろうな。
「まっ、そういうことだ。二人の鑑定に期待する。そろそろ、時間だ出掛けよう」
フィットネスクラブでトレーニングを行っていると、さっそく麗華と昌輝がホルダー候補を見つけてきた。だが、適合率120%には満たない。一応、メモしておくようにだけは言っておいた。事務所でリストを作成してもらえればいいだろう。ホルダーとして誘うか誘わないかは別としてもな。
プールでプカプカと浮かびながら考える。効率的にホルダーを探すにはどうしたらいいのかを。自衛隊みたいに自ら人が集まってくる状況を作るにはどうするか? 無差別に集めると年齢的なものもあるし難しい。
人を集めるから難しいのだ。なら、逆の発想で最初からその年齢が集まる場所に行けばいいのでは? そう、学校だ。大学と高校の健康診断にスタッフとして潜り込むってのどうだ? 鑑定し放題の青田買いってやつだ。
雪乃製薬の系列病院でそういうのやってないか? 確認しよう。
鑑定のスクロール、もっと欲しいなぁ。
クレシェンテの事務所に戻ると、椅子の業者が来ていて大会議室と中会議室に椅子を搬入し終わっていた。結構な数の椅子がある。どうやら、社員全員が選んだ椅子があるらしい。
中会議室にある椅子はリクライニングチェアではなく、寝椅子ってやつだな。寝るための椅子だ。もう、ベッドでいいんじゃね? って感じだ。
大会議室に移り自分が選んだ椅子や、ほかの人が選んだ椅子に実際に座って確認する。それは、実際に座ってわかることもあるってこと。倒してみたり動かしてみたりして確認する。
レザーは高級感に見えるが滑りやすく、そして暑苦しいので駄目だな。そうなると、ファブリック製がいいな。形はやっぱりフィット感のあるバケットシートが良かった。結局、自分が選んだオットマン付きゲーミングチェアに決めた。
各々、選んだものが明日には搬入されるらしい。寝椅子のほうは男女で揉めている。結局男女別々の物を選んだみたいだな。
今、月山さんたちがこの上のフロアーが借りられないか交渉しているそうだ。半分空きで、半分テナントが入っているから入っているテナントに、どこかに移ってくれと頼んでいるみたいだ。頼んでいるとは言っているが、もしかして金と権力で追い出すのか?
さて、今日の狩り場は昨日と同じでいいか。あそこは
今日はかりんも連れていく。PTに入れるとどうなるのか確認してみる。
「恢斗は鬼ですわ! こんな可愛い子を狩りに連れていくなんて!」
「きゅ~?」
かりんは
「戦わせるかはまだ決めていない。まずは確認からだ。着替えて出発するぞ」
今日は赤星さんがサポートに付く。車で移動し目的地に着く。
ローブを深く被り大きな杖を持っており、御伽噺に出てくる魔法使いって見た目だ。明らかに搦手系の
赤星さんのカメラの設置を手伝いながら三軍に説明。
「今日の敵は魔法使いタイプの
魔法をTPで相殺する方法は説明はした。特訓の時に昴と翼、幸彦には実際にやらせている。隼人の時に順位付けを目的としていたのでやっていない。隼人と柊は明日以降の特訓の時に教えるつもりでいた。まあ、なんとかなるだろう。
柊に
「では、始めろ」
隼人がバトルフィールドを展開する。
柊が
それと、瑞葵さんと麗華さん、それと赤星さん、かりんに構っていないで三軍の戦いを見てあげましょうよ!
「興味ないですわ」
「恢斗が見ていれば問題ないだろう?」
「かりんちゃんは可愛いでちゅねぇ~」
「きゅ~」
駄目だな……。
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