88.意見の相違

 石とカメラを回収して撤収。


 帰りの間、水島顧問は終始無言。何か言ってくると思っていたのだが、肩透かしを食らった感じだ。


 まあ事務所まで十分そこらだから、事務所に戻ってから何か言ってくるのかもしれない。


 事務所の前で降りカメラなどの備品を事務所に運び込んだ後、俺は近くのコンビニに買い物。


 いつもならファミレスなどでミーティングだが、今日は水島顧問がいたからそれをしなかった。代わりにコンビニでお酒やつまみ、お菓子などを買い込む。水島顧問が帰った後にミーティング兼祝勝会だ。もちろん経費で。


 戻るとみんな座って俺を待っていた。なんだ?


「あれが君たちの戦いか?」


「見たとおりだと思うが?」


 何か不満でも?


「あんなのが戦いだとでも?」


「何を言いたいのかわからないが、いつもあんなものだ。最初に瑞葵と麗華の訓練。それが終わったところで俺の訓練。その後に止めのパターンだな」


 いつもとおりの無駄のない戦い方。俺たちの定石だ。


「舐めているのか?」


「言っている意味が理解できない。お前は何を見ていた? どこに危険があった? 安全マージンはちゃんと取っていた。それに気づいていないのか? 瑞葵はこの戦いでプチ剣術のスキルを発現しているぞ」


「なに!?」


「車の中で確認しましたわ。恢斗のいうとおり、プチ剣術を覚えていましたわ」


 だよな。急に瑞葵の動きが変わったからそうだと思っていた。


「だが……あんな戦い方ではいつか死ぬぞ」


「何をもってそう言っているのかが理解できない。強い化生モンスターと戦わなければ強くなれない。あんたたちの古いやり方では、それこそ引退する頃にやっと一人前になれるのが一握りいるくらいだろう。何度もいうが、手緩いんだよ」


「しかし、懸っているのは命だぞ!」


 考え方が根本的に違う。水島顧問はじっくりと安全にレベルを上げさせることが、強いホルダーになると思っている。


 俺は違うと思っている。強いホルダーにするならスタートダッシュこそが一番大事だと。ここで経験を稼げなければ強いホルダーになるのが、どんどん遠のいていくことになる。


「言っとくが、俺はまったくと言っていいほど力を出していないぞ。もし仮に瑞葵や麗華が即死のような致命的な危機に陥った場合でない限り、助けられる自信も方法も持っている。それを今のあんたに教える気はないがな」


「くっ……。その自信とやらで後悔しないよう願おう。いつか、君の周りの仲間がいなくなっていることがないように……。もうこれ以上は私は言う気はない。自由にやればいい」


 そう言って水島顧問は帰っていった。


「言いすぎじゃないかしら? 水島顧問は本当にあなたたちのことを思って言っているような感じだったわ」


 だとしてもだ、


「弱者の戯言に付き合う気はありませんね。俺たちのことを本当に思ってのことだとしても、それが間違っていることであれば、それは俺たちにとって害でしかない」


「そこまでの自信があるのね。瑞葵さんと麗華さんはどう思って?」


「私は恢斗が間違っているとは思いませんわ」


「そうだな。実際に今まで恢斗の言っていることに間違いはない。逆に水島顧問がそう言うのであれば、向こうがそういう根拠を出して説得するべきだろう。水島顧問の言うことは、己の経験上からくる感情論でしかない」


 だよな。というより、そういうデータ取りをしていないと思われる。


 なにせ、日本のこういう古くからの組織ってのは閉鎖的で、古い考えを世襲し新しい考えを排除する世襲保護的なところがある。日本の政治家を見てみろ、世襲政治家ばかりだ。日本の首相なんて七割が世襲政治家だぞ。


 そういう組織にどっぷりと浸かってきた者から見れば、俺たちの考え方は異質に見えるだろうからな。そして、それが正しいこととわかったとしても、認めたくないと思うことだろう。


 だからこそ、そんな奴らに引き下がることなく目に物見せてやる。


 などと月山さんと話をしている間に赤星さんが撮ってきた化生モンスターとの戦いの視聴準備していたようだ。今からみんなで鑑賞するらしい。


 なので、さっきコンビニから買ってきたものをテーブルに出す。


「恢斗、気が利くではありませんか」


「では、私はビールを頂こう」


「まだ、就業時間中なのですが……」


 就業時間と言っても俺たちの仕事はもう終わっている、実質、二時間もかかっていないがな。


 鑑賞会の間に俺はドロップ品の確認をしておこう。


 麒麟美酔きりんびすいの角×2    210000P×2   

 麒麟美酔きりんびすいの皮×2    290,000P×2

 麒麟美酔きりんびすいの心臓    400,000P

 麒麟美酔きりんびすいの髭×2    90,000P×2

 麒麟美酔きりんびすいの鎧     820,000P      

 麒麟美酔きりんびすいの兜     120,000P 

 麒麟美酔きりんびすいの刀     1,120,000P 

 麒麟美酔きりんびすいの腕輪    170,000P 

 麒麟美酔きりんびすいのイヤリング 260,000P 

 麒麟美酔きりんびすいの酒×3    770,000P×3 

 雷魔法のオーブ(15/50) 600,000P

 雷の魔玉×5      800P×5

 七等呪石       25,000P


 ※特殊アイテム

 恢斗 美酒満開

 瑞葵 戦術の書

 麗華 火魔法のオーブ(25/50)



 ・明光鎧・堕麒麟 (BP+340) 雷・炎耐性(小) 

 麒麟美酔きりんびすいの鎧

 ・黄麟兜 (BP+130)

 麒麟美酔きりんびすいの兜

 ・青龍刀・麒麟+1 (+270)  麒麟の力を宿した青龍刀 雷光TP40 武器合成可(0/1)

 麒麟美酔きりんびすいの刀

 ・雷の腕輪(中)  (BP+30 TP+30) 雷半減  

 麒麟美酔きりんびすいの腕輪

 ・意思一対のイヤリング 身に着けて同士で意思の疎通ができる。(範囲500m)

 麒麟美酔きりんびすいのイヤリング

 ・美酒散乱 天上の極上の酒の失敗作 味は天にも昇るほどの極上。一合飲むごとに歳を取る。一升で一歳。

 麒麟美酔きりんびすいの酒

 ・美酒満開 天上の極上の酒 天界で神仙が飲む極上品。一合飲むごとに歳が若返る。一升で一歳。

 ・戦術の書 使用するとTPに永続+50 使い捨て


 なんか、ヤバいのがあるんですけど……。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る