72.神薙邸訪問
朝起きると二日酔いぎみ。せっかくなので自分の体を使って検証。アンクーシャを使ってみる。
残念ながら二日酔いは治らなかった。異常状態には効果がないということか。実戦でも試してみて確証を得よう。
神薙邸に向かうのに今日は何も手土産を用意していない。まあ、いいか。時間的にお店は開いていないから、東京駅で適当に何か買って行こう。
神薙邸の裏の勝手口の前にいる。
正式にお呼ばれされているわけではないので、正門を使わず勝手口からご訪問。
黒服さんではなく最初からお手伝いさんがご対応で中に入れてくれた。
「あなたねぇ、玄関から来なさいよ」
「こっちのほうが気兼ねしなくていいんだよ」
お手伝いさんたちがクスクスと笑っている。俺は小市民なんだよ。取りあえず、買ってきたどら焼きと人形焼きを渡しておく。
「あら、ありがとう」
東京駅で買ったお土産用のものだけどな。
一応、瑞葵父にご挨拶。まだ、時間まで三十分ほどあるので
「うむ。あとで少し話をしよう」
瑞葵の部屋に行くと青い猫どらちゃんを抱っこしている麗華がいた。挨拶を交わすが、いつもどおりシャッキっとした姿勢。二日酔いらしき姿には見えないな。まじで酒に強いようだ。もしかして笊か?
「それにしても、この子は
「さすがに野生に青いタヌキはいても、青い猫はいないと思うぞ? それに召喚用の
「
「おい、お前。人の生気吸ってないよな? 吸ってたら始末するぞ」
どらちゃん、ビックっとして麗華の胸にスリスリと、僕は悪い
羨ましいことをしてやがる。それだけでも殺意が湧いてくる。
麗華は黒のシャツに白のスーツ姿、タイトスカートから見えるお美しいおみ足にドキリとしすぐに目を逸らす。
俺の殺気を感じたどらちゃんは麗華から離れ、俺の所に寄って来てニコリとしてにゃ~と鳴く。
何がしたいんだ? と思ったら瑞葵が何かを渡してくる。
「うちのどらちゃんは人の生気なんて吸いませんわ! 最高級の猫缶のほかに、おやつにそれをあげているのです。生気なんて必要ありませんわ!」
チュ~〇だな。〇ュ~ルを見た瞬間、くれくれともの凄い満面の笑みで愛嬌を振りまいてくる。そこまで好きなのか?
封を切って差し出すと必死にペロペロし始める。そんな姿を見て麗華が羨ましそうな顔をしているので、持っていたチュ~〇を渡してやった。それに引きずられてどらちゃんも移動。凄い喰いつきだ。確かにこれなら生気は必要ないかもな。
いなばさん、凄ぇ~な。
待てよ、たしか犬用のワン〇ュ~ルってのあったよな。ということは、犬系の
常備しておくべきか? 日持ちはするし、値段もそれほどではないしな。なにより戦術の一つになるかもしれない。
それにしても、最高級猫缶まで食べているとは。高級猫缶になると、俺の食費以上の値段になるものもあると聞く。神薙家だからな……。さらに殺意がわいてくる。
俺の殺気にビックっとしながらもちゅ~〇を舐めるのをやめないどらちゃん。その食い気に免じて矛を収めよう。まあ、生気は吸っていないようだからな。
なんてくだらない話とスケジュールアプリの話をしていると、約束の時間になり
「本日は神薙家ご当主様とお目通りが叶い、まことに恐悦至極でございます。
副所長? まあ、いいか。
「剛田? 前国土交通省大臣剛田君の関係者かね?」
「はい。甥にあたります」
適合率が低いな。今の話を聞くと縁故採用か天下りか? 前国土交通省大臣剛田ってのはたしか六十を過ぎていたはず。その甥ということは瑞葵父とそう歳は変わらないか少し上と思われる。
そんな甥と同じくらいの歳の者に君付けされるって……力の差がはっきりしているな。
「それで、今日私に面会を求めたのはどんな理由かね? 私はこれでも忙しいのでね、手短に頼むよ」
「この度は我々
「子飼いのホルダーか、まあいいだろう。だがな、理由はどうあれ、ということは君たちの非は認めていないということか?」
俺は子飼いになったつもりはないが、瑞葵は娘だから子飼いといえば子飼いなのかな?
「い、いえ、そういうわけではございません。ですが、ホルダー同士の諍いなどは日常茶飯事でございますので、そこまで騒ぎ立てることではないかと」
「ふむ。どうやら君では話にならんな。そもそも、なぜ副所長如きが来ているのだ? ここに来るべきは所長が筋ではないのかね?」
そう、そこだ。俺もそこに引っかかっていた。
なぜに副所長が来た?
普通は所長かそれ以上の事実上のトップの者が来るんじゃね?
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