62.麗華能力

「七等呪位の化生モンスター狩りは明日から行うが大丈夫か?」


「そうだな。さすがに毎日は無理だが、できるだけ参加するようにしよう」


 今年卒業で司法試験合格を目指す才女だ。そんなに暇なわけはないよな。


「後で共有できるスケジューラーを作るからそれを活用しよう。基本、今の二人は俺がいないとレベリングが難しいから、俺とのスケジュールが合わない時は休みだな」


「私と麗華お姉さまの二人で七等呪位狩りは無理かしら?」


「もう少し瑞葵が強くなれば可能かもしれない。が、そこまでリスクを負うことはない。その辺についても安全で効率的なレベリングを検証して、マニュアルを作っていきたいと思っている」


 やらなければならないことが多い。鑑定持ちが俺一人というのがネックだ。ホルダーの適合者探しは人海戦術が望ましいのにそれができない。


 いろいろな検証を行うにしても基礎的知識がないので、そこから知る検証を行わないといけない。なるべく早く、知識を持つ引退したホルダーを顧問に迎えたい。


「じゃあ、今日はこれで解散かしら?」


「いや。麗華のスキルの検証だけしよう」


「私のスキルか?」


 名前だけで効果がわからないからな、ぶっつけ本番はちょっと怖い。マイナス効果はないと思うが、どんな効果があるかを知っているのと知らないのでは全然違う。


 人影のない近くの公園に移動して、設定でPT編成をしてからバトルフィールドを展開する。これで近くに誰も寄ってこなくなるから、見られる心配はない。


「勇撃の波動を使ってみてくれ」


「勇撃の波動」


 やっぱり声に出しちゃうんだな。事前にちゃんと声に出さなくても発動することは言ってある。


 そしてこれは感じたことがあるぞ。そう、アンクーシャを使った時に回復と共に感じる高揚感。俺はやるぜ! って感じになる。


 だが、これだけか? お互いを見た感じほかに変わりはなさそう。


「ステータス値に変化がありますわ」


 そうなん? ステータスを確認してみる。確かに微妙に数値が増えている。


 増えている分をスマホの電卓で計算すると全ステータス値が5%くらい増えている。そして、その効果は五分で切れた。TP50を使用するようなので連発はできないな。


 全ステ値5%アップと高揚付加、効果時間は五分ってところか? レベルがあるところを見るとレベルが上がると効果も上がるんだろう。


 ステ値の高いホルダーがより恩恵を受けやすく、勇撃の波動のレベルが上がればより恩恵を受けられる。コマンダーらしく凄いスキルだ。大器晩成タイプのスキルだ。


「追撃スキルのほうはどうだ?」


「使おうとしても使えないようだ」


「パッシブスキルみたいだな」


「パッシブスキルとは?」


 ゲームなんてやらないだろうから知らないんだろうな。瑞葵は知っていたけど。


「ゲーム用語で自分の意志で使うのではなく、常時発動していたりある条件下で自動的に発動するスキルのことだ」


「なるほど、そういうものか」


 そういうものです。


「ホルダーの中に何か武器のようなものが入ってないか?」


「ん? ホルダーの中……入っているな。指揮棒だな」


「麗華お姉さま、タクトですか?」


 指揮棒? 演奏指揮者の指揮棒のこと?


 麗華がホルダーから出したのは、俺と瑞葵が想像したものではなく杖だな。新体操で使うバトンに似ている。世にいう元帥杖じゃないのか? コマンダーだけに。


 指揮棒+1 指揮+10 全体の士気を上げる。武器合成可(0/1)


 攻撃力表記がないところをみると打撃武器ではないようだ。代わりに武器合成ができるようだな。魔杖などと合成させるのがベストかな。


「麗華は武道などの嗜みは?」


「合気道を少々。手慰み程度だがな」


 やろうと思えば体術は取れそうだが、こうしてみると後衛タイプのようだ。


 こうなると、一度武器防具の見直しをしたほうがいいだろう。俺が前衛、瑞葵が中衛、麗華が後衛って感じだな。


 麗華に瑞葵の黒魔導士セットを渡して象牙の小手も装備させる。


 瑞葵には俺の水流槍を渡し鋼の鎧を装備させる。


「鎧は重くないか?」


「そうね、少し重く感じるけど、ローブより魔法戦士っぽくっていいわ!」


 機能より見た目ですか……。まあ、いいけど。


 俺は水流槍の代わりに花咲戦で手に入れた剣を装備。


 鬼殺の剣 (+190) 鬼系化生モンスターにダメージ15%UP 


 瑞葵に持たせるか迷ったが、これを瑞葵に持たせると遠距離攻撃の術がなくなるので水流槍を渡した。


 まあ、こんな感じかな。


 明日、実戦で使い心地を確認しよう。







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