48.ランクバトル勝利(木村戦)

 仕込み剣が水流槍に引っ付いた挙句、地面に刺さった仕込み剣が抜けなくなった。


 チッ、水流槍を封じられたか。やってくれる。


 水流槍から手を離し木村と間合いを取る。


『これであいつの攻撃の手は封じた。これで、僕の勝利は間違いない。ぐふふふ……』


 だから、心の声が駄々洩れだぞ。それに勘違いも甚だしい。水流槍はけん制用の予備武器だぞ?


 しょうがない、アホな木村の勝利が確定したというノリにちょっとだけ付き合ってやろうか。お遊びで喜ばせた後に後悔のどん底に叩き落としてやろう。


「くぅー。俺の武器が使えなくなっちまったー」


「クックックッ……もう君には僕に勝つことは不可能。潔く倒されたまえ」


「ちくしょうー、何か手はないかー」


「さあ、愚者よ踊れ! 貫け、炎雀えんじゃく二連!」


 札を二枚飛ばし二羽の火の雀が飛んでくる。そいつ、さっき見たし、まっすぐにしか飛ばないんだろう? 躱すだけなら加速も必要ないが、炎耐性があるのでわざと受けてみる。


 ドスドスっと体の軽い衝撃を受ける。爆発でもするかと思ったが何もない。火による攻撃というより物理系よりの攻撃のようだ。


「うわぁー」


 わざと大袈裟に後ろにのけ反りダメージを受けた振りをする。二羽の火の雀の攻撃を受けたがBP10しか減っていない。この攻撃なら百回受けても問題ないな。


「この攻撃を受けてまだ立ち上がるか。意外と君、タフだね。じゃあ、とっておきの術で止めを刺してあげよう」


 とっておきねぇ。おそらくさっきの攻撃は相当自信のあった攻撃だったんだろうな。あれで俺を倒せると思っていたんだろうな。


 見せてもらおうか、土屋幸若序列六位のとっておきの術とやらを!


「掛けまくも畏き 風天 諸々の禍事・罪・穢 有らむをば 祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せ 恐み恐みも白す。オン バヤベイ ソワカ!」


 長げーよ!


 しかし、その効果はあったようで、木村の周りに風が渦巻き始める。どうする? 受けてみるか? 木村の必殺技なのだろうが、こいつの実力を見る限り、たいしたことはなさそうなんだよな。だが、窮鼠猫を噛むって言葉もあるからなぁ。


 よし、受けてみよう。


 木村の周りを渦巻いていた風が俺に襲いかかる。台風の目の中に入った状態になり、BPが減っていく。どうやら風の刃のようなもので攻撃されているようだ。


 結局、この渦が消えるまで待ってみたが、減ったBPは三分の一ほど。俺のBPを三分の一減らした攻撃は称賛に価するが、肩で息する木村を見る限り連発は無理そう。正直、微妙……。


「うわぁー、やられた~」


「ハッハッハッ! 僕の勝利だ!」


「んなわけねぇだろ!」


 倒れる振りの体勢から一気に木村との間合いを詰め、霊子ナイフを突き刺す。


「ば、馬鹿な! なぜ倒れない!」


「お前の攻撃が俺には効いていないからに決まっているだろう。確かにお前は田村より強いのかもしれないが、俺から見れば団栗の背比べだ。結局はザコなんだよ!」


「ふ、ふざけるな! 僕は土屋幸若序列六位! いや、土屋陰陽会の次期当主になる男だぞ!」


 ははは……笑わせる。こいつが土屋陰陽会の当主になれるのなら、土屋陰陽会ってのはたいした組織じゃないな。柿崎が現当主は強者だなんて言っていたが眉唾ものだ。


「井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知るというが、お前は空の青さ深さを学ぶべきだ!」


「何をわけのわからないことを! な、なんだ!? BPが減っていく!」


 呪いが発動したようだな。そろそろ、終わりにしよう。


「お前の敗因は人を見下して、真実を見据えることができなかったことだ」


 ホルダーから火炎の杖を取り出し木村に向ける。


「燃やし尽くせ。フレイム」


 木村を中心に巨大な炎の柱がそそり立つ。これ、範囲攻撃だな。直径10mくらいだろうか。見た感じ凄い熱量の気がする。


『YOU WIN』


『ホルダーランクが上がりました』


『ホルダーにアイテムを送りました』


『260000ポイントが加算されます』



「この僕が負けた……」


「勝ったみたいね。恢斗」


「当たり前だろう」


 木村の仲間たちはまさか木村が負けるとは思っていなかったようで、驚きを隠せないでいる。その木村も敗戦のショックで呆然自失。


「約束だ。オークションについて教えてもらおう」


 木村が使い物にならないようなので、仲間のほうに聞く。


 全員目が泳いでいたが、仕方なくといった感じで説明を始める。


 説明といっても簡単なものだった。


 HPのアドレスを教えてもらい。ログイン画面でホルダーランクを入れるだけ。そこからオークション画面に移動する。オークションに参加できるだけでなく、出品もできるらしくショップのポイントでも現金でも参加は可のようだ。


 ということは、何者かは知らないがホルダーランクを知る術を持っているか、管理している者がいるということだな。


「おい、木村。呆けるのはいいが、約束の物を出せ」


「……持っていけ」


 火魔法のオーブ(1/50)、ゲットだぜ。






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