34.索敵

 レーダーについて歩きながら説明を行う。


「私たちが狙う七等呪位は紫丸なのね?」


「ああ。それと間違っても黒丸には近づくなよ。おそらく六等呪位以上、俺たちだと瞬殺される可能性がある」


「恢斗は七等呪位を倒せるのでしょう? なのに六等呪位に瞬殺されるわけ?」


「元々、等呪位毎の間にはかなりの実力差があるが、六等呪位は別格だ。口惜しいが、以前に見たが勝てるイメージが湧かなかった。死のイメージしか湧かなかったな」


「そこまでなのね……」


 まじでそこまでなんだよ。あれを倒せるようになるのだろうか。


「ねぇ、この星印はなに?」


「そいつはホルダーだな」


 レーダーの端に丸と星多数が重なっている。十等呪位か九等呪位とホルダー五人のようだ。正直、そんなにホルダーいらねぇだろうと思ったが、常時PTパーティーで戦っているならそんなこともあるのかなと思い直した。


「私たちが相手をするのは七等呪位よね?」


「そうだな」


「この丸赤だから十等呪位か九等呪位よね?」


「そうだな」


「ホルダーが五人いるけど、十等呪位や九等呪位と戦うのは普通何人で戦うのかしら?」


「知らない。ザコに興味はない」


「そ、そう……」


 おっ、レーダーに紫の反応あり。


「あっ!?」


 瑞葵も気づいたようだな。


 その場所に行くと再開発のためか解体しているビルの工事現場。人が入れないように金属製の仮囲いがされている。


「入れないわよ?」


「いや、入る。バトルフィールド展開」


『バトルフィールド展開』


 元々、駅裏を探していたので人通りは少ない。この場所も人影は皆無。入り口の蛇腹のゲートを乗り越える。


「不法侵入じゃない!」


「正義のヒーローは不法侵入も家の中を物色して、壺を壊そうが物を盗もうが犯罪にはならないんだよ」


「あなたねぇ……。これでも弁護士志望なんですけど」


 知るか! こっちはしがない経済学部だよ!


 取り敢えず外から見えない仮囲いの内側に移動して、戦闘前の打ち合わせ。


「今回初バトルだからな、実際に戦う必要はない。絶対に戦おうとするなよ。いいか、これはフリじゃないからな! 瑞葵は自分のスキルの検証だけしてくれ。それとこれを装備しろ」


 黒魔導士のローブ(BP+60 TP+20 INT+10)

 黒魔導士の杖(TP+30 INT+20) ダークバレット TP10

 象牙の小手(BP+50)


 今俺が持っている装備品で瑞葵が装備できそうなのはこれくらい。


「私、魔法戦士希望なんですけど」


 それは自分で装備を調達してから言ってくれ。


「いいから、さっさと装備しろ。言っとくがその装備だけで三十六万するんだからな」


「へぇ、意外と安いのね」


「……」


 住んでる世界が違うんだな……。三十六万円は端金か……。


 一応、黒魔導士の杖からはダークバレットという魔法が放てることを教えておくと、私も魔法を使えるのね! って目を輝かせていた。


「ステータスでBPとTPの値を確認するの忘れるなよ。前にも話したがBPがある間は攻撃されても痛みも体にダメージもない。TPはゼロになるとTPが回復するまで体が動かなくなるからな」


「わかっているわ。それより、私たちPTパーティーを組まないのかしら?」


PTパーティーを組む?」


「知らないのね……。正直、あなたとバディになることに不安を覚えてきたわ」


 瑞葵が言うには設定の中にPTパーティー設定があるそうだ。知らんかった……。だから、俺は説明書読まないでゲームする派なんだよ!


『ホルダー6453からPT申請されました』


 Yesと回答。


 PTは六人まで組めるようで、使役している化生モンスターは別枠になる仕様。ということは、やろうと思えば数の暴力でボコることも可能ということか? まあ、一人何体までとかの制限はありそうだけど。そこは要検証案件だな。


 化生モンスターカード、結構重要なアイテムのようだ。


「最後の忠告だ。相手に呑まれるなよ。七等呪位からは死を間近に感じさせるほどの恐怖と威圧を受けるはずだ。取りあえず動け。同じ場所に留まるな。逃げているだけでいい。止まったら死ぬぞ」


「わ、わかったわ」


 黒曜こくよう 七等呪位 仙人が使役していた虎が妖魔化したモンスター。妖魔化したことで空飛ぶ力を失ったが、少しの妖術を操れるようになった。


 黒い虎だな。フレーバーテキストからは弱点は見当たらない。妖術というのには注意が必要だな。


 瑞葵に相手のことを説明して準備はいいか確認。


「ば、ばっちこいよ!」


 表情がだいぶ引きつっているようだが、ここにきて怖気づかないだけましか。


「では、始めよう」






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