14.動き出す刻

 有象無象バスタードガネーシャの牙  300,000P

 有象無象バスタードガネーシャの邪眼 200,000P

 象牙の小手   40,000P

 ジャマダハル  30,000P

 フィランギ   15,000P

 七等呪石    25,000P


 討伐ポイントは6,700P。やっぱり少ねぇ……。


 それよりもだ! 七等呪位なのに八等呪位のアイテムドロップよりしょぼい! どーなのよ、そこんとこ!


 だが、今回はこれがある!


『特殊アイテムを使用しますか?』


 もちろん、Yes! パジェ〇! 〇ジェロ!


『アンクーシャを取得しました。ホルダーに収納します』


 あ、あれ? ルーレットはなし? そういうパターンもありなのね。


 アンクーシャ ヒンドゥー教の神の一柱ガネーシャの持つ聖なる杖。回復(+500)・治療(中)・高揚(中) TP50 65,000,000P


 ショップで売ったら六千五百万円かぁ……。この性能なので売る気はない。俺の作戦は命大事にだ。


 BPが500回復して怪我も治り気分も高揚する。加速と同じTP50使用なので多用はできないけれど、今の俺なら瀕死になったとしてもぴんぴん状態まで回復できるってことだ。


 さ~て、今日も俺は頑張った。帰ろう。


 夕飯を食べ風呂に入った後、ホルダー内の少し溜まったアイテムを確認する。大まかに分けると武器防具、錬金素材っぽいもの、その他になる。


 防具ははどうしようもないな。防具を装備すれば安全率が上がるのだろうけど、間違いなく職質を受ける。コスプレでは誤魔化せないと思う。もったいないがしょうがない。


 武器は水流槍以外はいまいち。その水流槍も水球というのが使えるが攻撃力は低くあまり魅力がない。


 水流槍 (+70) 水の力を宿した槍 水球 TP10 250,000P


 霊子ナイフに合成するか迷う。


 錬金素材っぽい系は錬金なんて出来ないし、これが本当に錬金素材なのかも不明。なので俺にはどうしようもない。換金的には魅力的だが当分死蔵かな。いつかどこかで役に立つ日がくる。くることを信じたい。くるよね?


 さてと、問題はその他のカードとオーブ。


 カードは必要枚数集めると、そのカードに描かれた化生モンスターを味方として召喚できるようになる。一度使用するとリキャストタイムがあり倒されてもカードに戻り、リキャストタイムが伸びるだけ。エコ仕様で助かる。ソロの俺にはありがたい。これは積極的に集める価値ありだな。


 オーブは魔法を覚えられるようになるアイテムみたいだ。プチ鑑定をスクロールで覚えたけど、それの魔法版のようだ。これも必要個数集めると使えるようになるらしい。だが、ドロップし難く、多くの個数を集めないといけないので大変そう。いわゆる、レアドロップアイテムといったところか。しかし、恩恵は大きいだろう。


 最後に今回増えた機能のホルダーランク対戦。


 ホルダー同士で仮想空間で戦え、ランクを掛けた戦いができるらしい。勝者にはランク差によってショップのポイントとアイテムがもらえ、相手が自分よりランクが上の場合、自分のランクが上がる。


 ランクの低い者がランクの高い者に挑戦するメリットはあるが、ランクの高い者がランクの低い者と戦うメリットってなんなんだ? まあ、今のところどうでもいい機能だな。


 寝よ。



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 某所 ホルダー管理対策室。


「これはどういうことかね?」


 オールバックの四十台前後の男がPCをみながら、部下らしき男に問う。


「報告書のとおり、S市近郊において立て続けに七等呪位の化生モンスターが何者かに狩られたようです」


 部下の男は額に流れる汗を拭きつつ、オールバックの男に説明を行うが声色は低く暗い。


「そんなことは報告書を見ればわかる。どこの誰がという意味で聞いたのだが、理解できなかったようだね。それと残留呪位からそれ以外の化生モンスターも倒しているようだが?」


「我々政府機関のホルダーではないことはわかっています。民間のホルダーを抱える組織に問い合わせを行いました」


「それで?」


「該当者なしです……」


 部下の男が緊張のあまりごくりと唾を呑み込む。


「アウトサイダーの可能性が高いということかね?」


 オールバックの男が目を細め、部下の男を睨むよう見てさらに問う。


化生モンスターと戦う場合にドームを使っていないことから、使い方を知らない成り立てだと思われます」


「ホルダーになったばかりの者がエリアボスを倒したと? 本気で言っているのかね? 七等呪位を倒すのにどれだけの準備と人手が必要か、君が知らないわけがあるまい?」


「しかし、アウトサイダーが集団で戦えば、必ず形跡が残ります。今回の件でその形跡がほとんど残っていません。解析チームも我々の知らない強力な能力保持者と考えているようです」


「まだ、どこかの組織が隠匿したダンジョンでホルダーを育てたと言われたほうが、真実味があるのだがね」


 オールバックの男は少し考え、


「それで、該当する者の目星はついているのだろうね?」


「はい。監視カメラから該当するアウトサイダーと思われる三名を確認しました。うち二名には既に鑑定者を送り接触。一名は完全なシロ。もう一名は適合率98%の親から引き継いだ成り立てのアウトサイダー。ですが、能力的にシロと判断しています。ちなみに、当組織に勧誘済みです」


 オールバックの男はデスクの上に肘をのせ手を組んで部下を見る。


「最後の一人は?」


「はい。S市に住む風速はやかぜ恢斗かいとという大学生です。身辺調査を始めておりますが、近親者にホルダーはおりません」


「ほかの組織に接触される前に、速やかにホルダーを接触させ確認させろ。本命なら何としても囲い込め」


「承知しました」


 部下の男が部屋を出た後、オールバックの男はビルの窓からネオン輝く街を望む。


「アウトサイダー、いや闇ホルダーでさえ遊ばせておくわけにはいかんのだよ……今の日本のホルダー界は。馬鹿な政治家のせいで多くの上位ランカーを失った、日本のホルダー界を立て直さねばならぬのだから」


 こうして、恢斗の知らぬところで事態は動き出す。






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