第2話

「らっしゃい狂華…今日は何をお探しで…?」

『この子の武器選びにちょっとね』

店内に居るのは、ゴリゴリの明らかに堅気ではない男。

男はアルマを全身舐め回すように見つめると、歩み寄り、唐突にしゃがみこんだ。

アルマが怯えたように数歩後ずさる。

男がアルマの頭に手を伸ばしていく。

アルマは目を瞑り、痛みに備えている。

そして男はその握りこぶしを…


開いてアルマの頭の上においた。

アルマはきょとんとして男を見つめる。

「よ〜しよしよしよしかわいいねぇ〜〜!」

この男、小さい子供には目がないんですよ。

『ちょっと、アルマ一応十歳なんだからね?』

「アルマって言うのか〜!いい名前だな〜!」

『あの。武器選びに来たんだってば。』「よーしよしよし♡」

『おーい。聞いてるー?』

男はアルマを夢中で愛でている。

アルマがこちらに視線を送る。明らかに「タスケテ…」。かわいそう。

『あ、じゃ、私武器見とくんで。』「( ゚д゚)ハッ!すっかり忘れてた」『だと思ったよ。』


「坊っちゃんみたいな小柄な子でも扱いやすいのは…やっぱり拳銃だな。これなら力もいらねぇし、間合いも詰められにくい。」『なるほどねえ…でもエイム力は試されるね』「そうだな…感覚的に扱える武器はやっぱり力がいるもんになってくるな」『そっかぁ…うーん…』

アルマは店内を見回す。武器だけではなく、拷問道具や使い方のわからない道具まで、様々置かれている。

そして、一つの道具が目に入る。

その黒く長い、蛇のような姿を見た途端、記憶が一気に蘇る。


__お前なんてそこら辺の犬以下、ゴミなんだよ

____あ゛?なんだよその目つき。塵のくせに歯向かってんじゃねえよ

___塵にやる飯なんてねえよ。大人しくそこら辺の塵でも食べとけ

毎日それに打たれ、ボロボロので弄ばれ、全身にはしっている傷を思い出す。





唐突に地面が傾いた。

苦しい。息が苦しい。吸っても吸っても。苦しい。苦しい。苦しい。息が出来ない。


『アルマ!?大丈夫!?』「大丈夫だ。落ち着け。ゆっくり吸って…吐いて…」

大きくて、暖かくて、ごつごつした手が背中をさする。


「少し落ち着いたか?」アルマは小さく頷く。

『よかった…やっぱり、鞭とかがトラウマなんじゃないかと思ってたけど…』

狂華にはすべて見透かされていたというのか?

アルマは、改めてこの美女の実力を思い知らされる。

『さてと…これから、アルマが何人もの悪人を地獄に送るための武器。自分で、好きなのを選びな』


悪人…あの男を。

あの男を地獄に送るための武器…

散々塵だと罵っていた僕に、いとも容易く殺される。

それがあの男に対する一番の復讐であり、見返しであり、侮辱になる。

なら、あの男が散々僕で遊んでいた大好きな、ガラクタので、

僕が今度は遊んであげることにしよう。



「坊っちゃん、本当ににそれでいいのかい?!この中でも最低価格の、ずっと売れてない、玩具みたいなもんだぜ?!」『いいんだよアルマ、どんだけ高くても買えるから!』

僕は、初めて首を横に振った。絶対にこれでなくてはならない。

『絶対それがいいの?』「…はい!」『…わかった。それがアルマにとって大きな意味を成すってことなんだね。』『一応、普段遣い用のも買っておくか…』「じゃあ、二点でお買い上げだな。」



狂華が店主に金を渡す。


「じゃ、坊っちゃん。これは自分の手で受け取りな。」

店主に差し出されたそれ。僕と同じように、なんだかボロボロだった。

傍から見れば塵かもしれない。でも、僕にとっては、とっても大切な塵だ。

こういうのを、ガラクタと呼ぶらしい。

なんだか、これは僕の分身のように思えた。







ガラクタの僕。ナイフを握る。

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ガラクタの僕。ナイフを握る。 ハルカズ @harukazu12

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