甘々お姉ちゃんと艶母

 ノックがして、部屋の扉を開けた。


「レ~ンっ❤」


 お姉ちゃんが甘ったるい声を出して笑う。

 海から帰ってきたのか、潮の香りがした。


「二人は?」

「堤さんがイジメすぎて、海の中でお仕置きを食らってるわ」


 二人だけで遊ぶくらいには、仲良くなったみたいだ。

 それを聞いて、どこか安心してしまう。


「勉強見てあげるわ」


 そう言って、中に入ってくるお姉ちゃん。

 ベッドには、本を読んでるシズカおばさんがいた。


「うげぇ!」

「……なによ」


 おばさんに気づいたお姉ちゃんが、蛙をすり潰しのような悲鳴を上げる。


「ど、どうして、お母様がここに!?」


 本から顔を上げて、しれっと言う。


「ここは、わたくしの部屋でもあるからよ」

「はあ? 意味が分からないわ」

「レンくんの勉強は、わたくしが見ているから大丈夫よ。安心して部屋に戻りなさい」


 バチバチに火花が散っていた。

 だけど、気の強いお姉ちゃんは、一歩も譲らない。


「だったら、息抜きが必要ね。レン。お姉ちゃんと遊びましょう」

「え、でも……」

「いいのよ。年増は体が軋んで動けないんだから。ゆっくり休ませておきなさい」


 手を引かれ、部屋の外へ連れて行かれようとする。

 しかし、おばさんはそうはさせなかった。


「一人で遊びなさい。子供ではないでしょう」

「寂しいこと言わないでくれる!? 何が悲しくて、海に来てまで一人で遊ぶのよ!」


 予想通り、親子は仲が悪かった。

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