熟れた香り

熱い夜

 顔にはシーツが被されていた。


「レン……っ♪」


 同じシーツの中で、ボクとお姉ちゃんは、顔だけを入れている。

 吐息同士がぶつかり合い、暗闇の中でお姉ちゃんが首や頬に舌を這わせてきた。


「ふ……ふ……ね……ちゃん……」

「何も考えなくていいから。全部、お姉ちゃんに任せて」


 唇を擦りつけながら、お姉ちゃんが優しい声色で言った。

 鎖骨の辺りを擦られながら、ボクは目を閉じる。


「……ぁ……む……んも……っ」


 シーツの外からはくぐもった声が聞こえてきた。


「次は、わたしにさせてくださいよ」

「ん、あなたは、っ、はぁ、そこで見てなさい」

「えぇ―。わたしも舐めたい」

「ランは機嫌が悪いのです。たくさんイジメられましたから」

「普段イジメられてるの、こっちなんですけど!」


 股の辺りがス―スーしていた。

 度々、柔らかく滑りのある感触が這いまわってくるので、ボクは声を出さないように我慢した。


 どうしても漏れてしまった声は、お姉ちゃんの舌で塞がれ、唾液の中に音が消えていく。


「レンっ。レンっ。本当に好き。ん、む。もう、離したくないわ。ずっと、この日を待っていたの」


 隅から隅まで、口の中をお姉ちゃんの舌が散歩した。


「んふふ。気持ち良さそうにしちゃって」


 頬にキスをされ、ボクは喉を鳴らす。


「はぁ、はぁ、ねえ。もう、おかしくなりそうだよ」

「大丈夫ですよ」

「そうそう」


 シーツの外から二人が言う。


「いっぱい、狂いましょう❤」


 安城さんが、聞いた事もない艶のある声を漏らした。


「もっと声が聞きたいから、たくさんお喋りしようね」


 カリンさんの口が、股の内側に押し付けられているのが分かる。


「二人は無視していいから。お姉ちゃんだけ見て。レン」


 額から流れる汗をお姉ちゃんが舐めとり、顔中に唇が押し付けられる。


 狂うほど、甘い夜だった。

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