安城ストップ
荷物をベッドの横に置いて、室内を見渡す。
ボクに準備されたのは、一人部屋だった。
ベッドがあり、隣を見ると窓がある。
窓の向こうは、海を一望できるベランダがついていた。
トイレとシャワーは同じ室内にあるようで、ユニットバスになっていた。
狭いけれど、ボクにはこっちの部屋の方が落ち着く。
コン、コン。
「はい」
ベッドで座りながら跳ねていると、ドアがノックされた。
ドアを開くと、そこには笑顔のカリンさんが立っている。
「うす」
「カリンさん」
「入っていい?」
部屋に通すと、カリンさんはベッドに座った。
シャツとショートパンツのラフな格好で、太ももは日焼け跡が見えていた。
「いい部屋だよね。狭いけどさ。景色最高」
「うん」
「ね。こっちきて」
手招きされて、一緒にベランダに出る。
ベランダは部屋と同じで狭いけど、景色を眺めるだけなら、問題なかった。
むしろ、高級過ぎなくて、落ち着くくらいだ。
「恋人同士で、一緒の景色見られるって最高じゃん」
後ろから抱き着かれ、ドキドキとする。
背中に当たる胸は、気温も相まって熱かった。
「こっち向いて」
「う、うん」
首だけを曲げ、横を振り返る。
目の前には、カリンさんが目を閉じて、顔を近づけていた。
「……ん……」
柔らかい唇が吸い付いてきて、意識まで持っていかれそうになる。
「もっと、キスしたいんだけど」
「でも、ここ、外だから……」
「見せつけてあげようよ」
首を抱かれ、カリンさんが救いあげるように、下唇を甘噛みしてきた。
何度か水音を鳴らし、目が惚けてくる。
糸を垂らす艶めかしいキスに蕩けそうになり、お腹に手を添えられた。
「ほっほー。やっぱりね」
後ろからお姉ちゃんの声が聞こえ、カリンさんがビクつく。
「あーらら。あーららのら」
真顔の安城さんが、じーっとカリンさんを見ていた。
「あ、え、ラン様」
「ラン様?」
お姉ちゃんが顔をしかめ、首を傾げた。
「ランの目を盗んで、レン様と乳繰り合うんですね。なるほど。躾のなってない泥棒猫です」
「べ、別にいいじゃん! わたし、彼女だよ!?」
「節度のある付き合いをしてください。もっとも、付き合うこと自体、ランは許しませんが」
「鬼!」
カリンさんが二人に引きずられ、部屋から出て行く。
「お、お姉ちゃん? 安城さん?」
鍵を忘れないよう手に取り、ボクも後を追いかけた。
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