一途で歪んだ愛情

 夜中に、肌寒くなり、目を覚ます。

 横を向くと、窓が半開きだった。

 風が入ってきて、カーテンがゆっくりと捲れる。


 カーテンの布は、送り込まれる風の強弱で不規則に捲れた。

 小さく、小さく、揺れる。

 それから、一段と強い風が吹き、大きく捲れ上がった。


 その陰に、誰かが立っている。


「……レン」


 お姉ちゃんだった。

 冷めきった目つきで、いつものように腕を組んで、隅に立っていた。


 体を起こし、ボクはお姉ちゃんにどう声を掛けていいか迷う。

 すると、一歩だけ前に出て、床を指した。


「四つん這いになりなさい」

「お姉ちゃん。あのね……」

「早くしなさい」


 高圧的な言葉に、ボクは従う。

 床に手を突いたところで、「あら?」とお姉ちゃんが声を上げた。


「どうして、服を着てるの?」

「どうして、って」

「脱ぎなさい」

「お、怒ってるのは知ってるけど。でもね、ボク……」


 べちんっ。


 久しぶりに頬を叩かれ、驚いたボクは命令に従って、服を脱いでいく。

 一枚ずつ、ベッドに服を置いていく。

 その度に、お姉ちゃんは妖しく嗤った。


「じれったいわね」


 肩を強く押され、ボクは転倒。

 最後の一枚は、お姉ちゃんがすぐに脱がし、その辺に放り投げた。


「お、お姉ちゃん」


 仰向けになったボクの腰に、お姉ちゃんが跨っていた。

 感触と温もりから、お姉ちゃんは何も着ていない事が分かる。


 カーテンが揺れて、月明りが一段と眩しく注ぎ込んだ。

 照らされたお姉ちゃんの豊満な肉体は、しっとりと汗ばんでいて、妖しく嗤うお姉ちゃんは綺麗だった。


「レン。……誰のおかげで生活できてると思ってるの?」

「……ごめん、なさい」


 べちんっ。


 謝罪と同時に、頬を叩かれる。

 怖くて、何も言えずにいると、お姉ちゃんが顔を近づけてきた。


 ほんのり甘い匂いがして、ボクは顔を逸らしてしまう。


「レンは、あたしの物。……でしょ?」


 お姉ちゃんに無理やり振り向かされる。

 股間に密着した局部を小さく揺り動かしてくる。

 すると、粘りっ気のある水音が下の方から聞こえてきた。


「あたしの物でしょ? 言って」


 こんな状況なのに、ボクは股間に熱が集中した。

 お姉ちゃんから目が離せなかった。


 変なことは度々されてきたけど、今日のお姉ちゃんは、やっぱり変だった。


 つい、最近まで中学生で、普通とは違う日常を過ごしてきた。

 とはいえ、この状況に漂う雰囲気は、とても刺激的だった。

 お姉ちゃんの艶やかさが、ボクの心臓をドクドク脈打たせ、遠慮のない色香が鼻孔や下腹部などから入り、どこまでも支配してくる。


「言って」

「ぼ、ボクは……」


 お姉ちゃんが股と股を擦り合わせる度に、音がどんどん大きくなっていく。

 皮膚を擦り合わせて、濃厚な蜜をかき混ぜているようだった。

 お姉ちゃんの吐息に当たっていると、顔が熱くなり、つい流されてしまいそうになる。


 だが、ボクの頭にはカリンさんが言った『おかしいよね?』というセリフが繰り返しこだましていた。


「こ、こんなのおかしい」


 頑張って、負けそうになる気持ちを振り切る。


「やめようよ。……うっ!」


 再び、頬を叩かれた。


 目の前には、ボクを睨むお姉ちゃんの顔があった。

 けれど、目は潤んでいて、怒った顔を近づけてくる。


「お、お姉ちゃ……んぐっ……っ!」


 両手を押さえつけられ、無理やり口を奪われてしまう。

 唇で甘噛みするようなキス。

 唇だけでなく、頬や顎を舐められ、口の中に舌が入ってくる。


「んふぅ……ふぅ……っ。っはぁ、……あたし、言ったでしょう。我慢できない、って」


 手が強く握られる。


「あたしは、……レンが好きなの。大好きなの! どうして、分からないのよ! バカな弟ね!」


 頭を抱えられ、集中的に局部へ刺激を与えてきた。

 蜜でヌルヌルになった股間は、お姉ちゃんの温もりを直に感じて、さらに反応してしまう。


「嫌いに、……なったんじゃないの?」

「なるわけないでしょう!」


 吐息が耳に近づいてくる。


「だから、……こんなに……濡れてるんじゃないの……」

「お姉ちゃん。ボク……」

「レンは、お姉ちゃんが嫌い?」


 すぐに首を横に振った。


「大、好き」

「レンっ!」


 力強く抱きしめられ、大きなお尻がさらに局部を圧迫してくる。


「このまま、……しちゃいましょう。ね? お姉ちゃんに任せて」


 あぁ、流される。

 ボクは何も言わずに、お姉ちゃんの腰に腕を回した。


「セックスはダメって言ったでしょう」


 甘い空間を切り裂く声が闇から聞こえた。


「きゃああ!」

「あ、安城さん」


 下着姿の安城さんが、前で手を組み、人形のような何も感じてない目でボクらを見下ろしていた。


「濃密な触れあいで、愛するだけにしましょう。……ほら」


 安城さんがボクの鼻に触れる。

 指の平を見せてきたので、二人で注目すると、そこには赤い液体がついていた。


「今日は、ここまで。さ、レン様。こちらへ」


 ズルズルと引きずり出され、すぐにティッシュで鼻を押さえられる。


「も、もうちょっとだったのに」

「ランが抜け駆けさせると思います?」

「ちょっとぉぉぉ……っ!」

「はいはい。寝ますよ」


 お姉ちゃんは尻をベチベチ叩かれ、ベッドの端に誘導。

 ボクは鼻血が止まるまで、安城さんに看病してもらった。


 お姉ちゃんに嫌われてない、と分かったボクは気持ちが軽くなった。

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