存在の主張

 初めに行った競技は、部活対抗リレーだった。

 水泳部からは、カリンさんが出た。

 美術部からは、お姉ちゃんが出た。


 まさかのカードが揃ったボクは、別の意味で注目してしまう。


 この部活対抗リレーは、ハチマキの色で各部活のカラーを示すのではなく、ユニフォームが色の代わりだ。


「水泳部、……くそ。エロすぎるって!」

「なあ、誰か写真撮ってないか!?」


 水泳部は競泳水着を試着して走る。

 一方で、美術部はベレー帽を被って、下は制服。


 スタートを切る前から、みんなの注目は熱がこもっていた。


 水泳部の他には、バレー部や陸上部、新体操部などの部活が男子たちには人気だ。


 女子からは、サッカー部とテニス部が人気だった。


 初めは他の先輩達が走り、後輩にバトンを渡し、周囲からは歓声が響く。


 ここで強いのは、やはり陸上部だ。

 短距離走というガチ勢が出てきてしまい、一位はスタートの時点で分かり切っていた。が、水泳部には異変が起きていた。


「やっぱ、堤速いわ」

「マジで陸上にこいや」


 そう。カリンさんがバトンを受け取ると、あっという間に差をつけてしまい、ごぼう抜きをしてしまったのだ。


 これのせいで、番狂わせを食らった陸上部は、焦りの表情が窺えた。


「本当に速いなぁ」


 バトンを受け取った先輩らしき女子は、大手を振って駆けていく。


「あー、……チンコ痛ぇよ」

「まじで、股間に悪すぎんだろ!」


 お尻に食い込む水着。

 露わになった体の曲線美。

 水泳部は会場を魅了していた。


「おお、藤野先輩だ!」


 そして、反対側で足首を回していたのは、お姉ちゃんだった。

 助走をつけて、バトンを受け取る。

 その瞬間、周囲からは大きな歓声が起こった。


「うおおおおお! 揺れてるうううう!」


 ぶるん、ぶるん、と大きく波打つ胸の肉。

 下には短パンを履いているとはいえ、スカートが捲れ上がると、見えてしまう大きな尻。


 男子たちはお姉ちゃんに首ったけだった。


 きわどい水着の衣装より、服越しでも存在を主張する乳房が、男子たちは好きなのだろう。


「アンタらね。藤野先輩に失礼でしょうが!」

「だって、揺れてるんだもん!」

「うっさい!」


 女子がメチャクチャに男子たちを粛清していく。

 正直、弟のボクは少しだけ気が晴れた。

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