体育祭 二日目 朝

 昨日から、お姉ちゃん達の愛情に変化が表れた。

 食事をする際、食卓ではなく、ソファで取ったのだが、両側からお姉ちゃん達に挟まれる形となった。


「レン。魚はきちんと食べないと。あ~ん」


 お姉ちゃんが、甘々になったのだ。

 ツンツンした名残は、ほんの少しある。

 けれど、昨日からずっと密着してきて、頬ずりを欠かさなくなった。


「レン様。乳牛のは病原菌に罹っていますので、こちらを」


 ほうれん草を箸で摘まんで、口に運ばれる。

 安城さんは母性に満ちた笑顔で、襟足を手ぐしで整え、優しく撫でてくれる。


「二人は、食べなくていいの?」

「食べるわよ」

「ええ。心を満たした後に、ゆっくり頂きます」

「いや、ギリギリだよ。今、時間ヤバいんじゃない?」


 7時30分に起きるはずが、7時50分だった。

 正直、ソワソワして食事どころではない。


「あぁ~……、離れたくないです」


 安城さんに抱きしめられる。


「あたしだって嫌よ。家から一歩も出たくないわ」


 腰に腕を回され、頬ずりをされる。


「ねえ。食べようよ!」

「はぁ……。時間が止まればいいのに」


 お姉ちゃんらしくない一言だった。


「どうして、二日もやるんでしょうね。お弁当、昨日の内に半分は済ませてますけど。正直、ダルいです」


 安城さんまで、くってりと寄りかかってくる。


「もう。今日は騎馬戦なんだから」

「これ以上、惚れたら、あたし何するか分からないわよ」


 謎の脅しをされ、


「レン様は負けても、可愛いです」


 片方は蕩けている。


「レン~っ❤」

「レン様ぁ❤」


 朝から、愛情の板挟みだった。

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