賑わう体育祭
『これより、体育祭を始めます!』
生徒会長が大きく手を挙げ、開催宣言をする。
大きな拍手が起こり、グラウンドには歓声が起こった。
グラウンドは、6月なのに日差しが強い。
おかげで、すでにみんなは汗だく。
ボクは前列で拳を硬く握った。
頑張る。
クラスの足を引っ張らないよう、頑張る。
カリンさんとの騎馬戦練習は、エッチな練習の一回きり。
とはいえ、バランス感覚が悪いのは本当の事だ。
ボクは家にいる時、あえて足場の悪いところに立ち、バランス感覚を
カリンさんの告白は、受け止めるつもりだ。
お姉ちゃんには邪魔させない。
ボクの青春は、ボクのものだ。
*
初めの種目は個人競技の徒競走だ。
ボクは応援側なので、クラスの
「頑張れ! ぶっ飛ばせ!」
「うお、超速い!」
この学校は、ほとんどが足の速い生徒ばかりで、100mは11秒から12秒の人が目立っていた。
陸上部の人は得意種目なので、10秒台は普通に出してしまう。
「が、がんばれ」
せめて、口は大きく開けて、精一杯応援をしているフリはする。
熱気がすごくて、勢いに負けてしまう。
そうして、何人かが走った後、スタート地点にはカリンさんが立っていた。
「位置について――」
みんなが一様にしゃがみ、
「よーい――」
尻を上げ、『パン』という破裂音と共に、一斉に前へ駆け出した。
カリンさんは、一位になると宣言していた。
本人の口ぶりは
「はっや!」
クラスの男子が声を上げた。
「あいつ、11秒台だぞ」
「うわ、陸上に来いよ!」
最早、スプリンタークラスであった。
クラスの男子が話しているのを聞くに、性別はあまり関係ないけれど、それでも女子で11秒台は、かなり速いとのこと。
スタートダッシュを切った時には、やや遅れて駆け出した。
その後は、徐々にスピードが上がり、あっという間に並走していた生徒たちを追い越していく。
「うおおお! っしゃ。勝ったぞ!」
「次の奴も期待してっからな!」
ゴールに着いたカリンさんは、両腕を上げて、笑顔を振りまいた。
日光を浴びた褐色の天使が、こっちを向く。
にっと笑って、ピースをした。
輝いていた。
他の生徒たちは、大手を振って「ナイス!」などと、声援を送る。
肩で息をして、カリンさんは小走りで天幕へ戻ってきた。
汗が額から首筋に掛けて、滴り落ちていく。
腕や太ももまで、汗の光沢で輝き、クラスメイトとはハイタッチをした。
「はぁっ、はっ、……ッッはぁ」
「お疲れ~」
「ん、ありがと」
カリンさんと目が合う。
爽やかな笑顔と共に、「まずは、一つ」と報告をしてきた。
「お、お疲――」
「堤、ヤバいね。お前、陸上来いよ」
他の男子に遮られ、ボクはどんどん後ろの方に流れていく。
「水泳の方が、はぁ、楽しいんで」
「もったいねえ!」
その後、再びスタートの破裂音が鳴り響き、みんなはグラウンドの方に振り返る。
「がんばれぇ!」
再び、熱い声援が続く。
ボクも口を開けた。
「がんば――」
言いかけた時、手が握られる。
「彼女に、……一言ないの?」
隣に立ったカリンさんが、首を傾げる。
こめかみから滑落した汗が、グラウンドの土を汚す。
「お、お疲れ」
「ん。どうも」
頬を押され、ボクたちは一緒にクラスメイトを応援した。
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