069 祭囃子が麓から──

    ◆2023年7月23日

昼から聴こえだした祭り囃子ばやしの音が、暮れきってなおやみません。

調子づいてる太鼓や笛が遠く近く夜気にうねるのを、今年また聴けるころとなりました。地元に知己もない山暮らしとて確かではないけれど、たぶん国道へ下山する途中の神社祭りにそなえた練習が始まったんでしょう。


夕方、貯水タンクからポリ容器で水運びした時は汗したものの、今はすっかり涼しくなったので虫のすだきと共に心地良く耳をすましてる。

卓上スタンド灯りだけで過ごしだしたらボロロプレハブ内ごと真闇となり、人界からの響きは夜を伝って毛穴にまで沁みこむ気にさせられます。

こんな感覚は人なつかしさからなのかも…………。




といって、山頂ぽつん暮らしがことさら淋しいのではない。


孤独を忌み恐れ、やむなく望まぬ人間関係に身を縛る人もいるそうだけど、私のはたぶん…寂しさであって淋しさじゃない。


🔰山棲みの夏夜 祭囃子まつりばやし麓より




金欠で下山しての社交ままならず、始めた夜の灯りの乏しさにもすっかり慣れたように、人界がなつかしめるこの海月山でこそ山ん姥になりきった暁には野垂れ死んでもいい──と思えるようになりました。




その時こそようやく生存の不安から解放されるのかななんて、遠太鼓のリズムに心音を重ね聴く、夜更けなのです。

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