22 埋めて再会

 こんにちは。


 実は昨日、インコを埋めたんです。場所は去年の春に亡くなった子が眠っている植木鉢です。

 その時にも書いたと思いますが、埋めてしまえば……手放してしまったなら、この先どんなに願っても触る事が出来なくなる。実物を見る事も出来なくなる。それが辛くて。

 持ち上げると、まだ生きて寝ているような、笑っているような、そんな顔でした。


 最近雨が降っていないので、土は乾燥してパラパラ。スコップ(関東ではシャベルと言うかもしれない。小さい方のやつです)で浅く掘りました。

 春に埋めた子はどのあたりに埋めたか、当時気が動転していたのもあるのか、あんまり覚えていなくて。去年の四月からで、遺体が一体どれくらいまで無くなっているのかも分からず。鳥の骨って空洞ですからね。肉体は無くなっているのは分かるのだけれど、インコの亡骸を包んでいた綿のダブルガーゼで作った袋もまだ分解されずに残っているかもし知れないし。


 少し掘って、ここには何も無さそうだな?と思い、穴にダブルガーゼを敷いてスイートピーの花をその上に広げ、インコの亡骸を乗せました。もちろんインコを手から離し辛く……私に理性が無かったなら、葛藤する余裕が後少しでも欠けていたなら、この先どんな状態になったとしても花の上には置かなかったでしょう。でも、どうするべきなのか無理矢理に答えを押し付け、手放したくない気持ちをねじ伏せた。

 あと一日元気だったらあげていた、一週間に一回のお楽しみのおやつのドライイチジクを二つと、いつも食べていたシードの餌をキッチンペーパーにくるんで、顔の近くへ。ガーゼを一枚被せて土をかけました。

 綺麗な羽に土がつくのがどうしても嫌で。本当はガーゼなんて要らないんでしょうけれど。


 土を被せていると掬った土に、ふと、大きな塊があったのです。ゴミだったら捨てようと拾い上げると、小鳥の頭蓋骨でした。春に亡くなった子だったのです。どうやら私は去年と全く同じところを掘ってしまっていたようです……避けようと思って端っこを掘っていたのに。人の行動ってすごいですね。

 春に使っていたガーゼも跡形もなく。こんなに早く分解されるものなんですね。コロナが始まった頃はそれでマスクを作っていたような、結構しっかりした生地だったのだけど。


 こんな事を言うと、やっぱりちょっと頭がアレな人だからなぁと思われるかもしれないですが……その頭蓋骨がものすごくかわいかったのです。鳥って頭蓋骨と嘴が一体化しているので、骨になって殆ど顔のフォルムが変わらなくて。「骨になってもかわいいなんて、さすが○○。すごい。」と口をついて出ました。

 体の骨はやはり脆いのか(探したわけでは無かったですが)見当たらなかった。頭蓋骨だけ。その骨は、墓石替わり置いてる小鳥のオブジェの下に埋め直しておきました。そしてその子もドライイチジクが大好きだったので、二個お供えをして、花束もお供えをして終わりました。


 もちろんと言うべきなのか、表現の正解が分からないですが、すぐに後悔しました。今でも後悔しています。触れる事が出来ないって、こんなに辛い事なんだなぁと実感する。人間の家族はもちろんだけれど、動物を亡くしてしまった人たちは、これを乗り越えているんだなぁ。何度同じ目に遭っても慣れないけれど。何度でも悲しみが新鮮で、乗り越え方を忘れてしまう。

 大型の動物になると火葬は必須だし、予約も取らないといけないし、自分のタイミングでお別れなんて出来ない。みんなすごいな。乗り越えている人たち。


 私の生活の中で喜びを占める割合の殆どがインコだったので、今温かな気持ちになれる源が無くなり、全ての瞬間が惰性です。そう思うと、犯罪や戦争で突然に肉親を失った人はどれだけの喪失感だろうかと思いを馳せてしまう。

 人が生きるのに必要なものは、お金や衣食住は当然ですが、それだけではないですね。人それぞれが大切にしているものを、その人の生活の中で占める割合が大きい何かを奪われることは、生きていても生きていないような、そんな状態に落とされるのだなぁ。

 たかがインコと大げさに聞こえるかもしれないですが……最後の子でもあったし、あの子とは色々とあったのです。色んな事を乗り越えて、意思疎通できる状態になったので。


 大量のシナモンを食べたら、会えるだろうか。そんな訳ないよなぁ。


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