第4話
セイガは走っていた。
昨日のボロボロになってしまった衣服ではなく、家にあったズボンと白いTシャツ、黒いジャンパーを身に着けていた。
今日は学園に行くことにしたのだ、ただし遅刻しそうだから走っているわけではなかった、敢えて鍛錬の為に走っていたのだ。
時間としては目指す授業まではまだ充分時間がある。
(それにしてもまさか温泉まであるとは思わなかったなぁ)
セイガは走りながら昨日の様々な出来事を思い出していた、いきなりの戦闘のこと、ヤミとの邂逅のこと、レイチェルとの一夜のこと…レイチェルにも言われていたので昨夜はあの後、お風呂に入ろうとしたのだが、それはなんと家の外にあった。
石畳が床に敷き詰められ、岩であつらわれた浴槽、取水口からは熱い温泉が止めどなく流れ続けている、そんな天然掛け流しの露天風呂がそこにはあったのだ。
(とても気持ちよかったけれど…アレは掃除が大変そうだな…まあ、鍛錬の一環だと思ってやっていこう)
セイガは走り続ける、そんな中でも色々な発見があった。
例えば道、充分な舗装がされており、たまに行き交う馬車や乗馬にて通行するもの、それから自動車と思われる鉄の車も通っていた。
時々見える幾つもの建物は各自の住居だろうか、セイガの家と同じような造りの物もあれば、かなり古式な物、逆にセイガが見たことのない高さや材質で出来たものなど、様々な様式だった。
それから空、そこにも様々なものがあり、見上げるとまた、今度は竜らしきものが飛んで行った。
鉄の塊のようなものも先程大きな音を立てて飛来していた、さらに青い月のようなものが複数遠い空には浮かんでいたりと本当にここは自分のいた世界とは全く別物なのだなぁとセイガは感嘆した。
そうして走っていると、眼前にかなり大きな建物が見えてきた。
どうやらあれが学園のようだ、さらにしばらく進むと立派な門があった、そこでセイガは立ち止まる。
「ここが学園…か」
息を整える、英語らしきもので「学園 第4リージョン、17支部」と書かれた表札があった、何故かセイガにはそれが読めた。
「さて、時間もあるし少し休むとするかな」
入口から少し歩いたところ芝生や花に囲まれたスペースに
遠くを見ると入口から何名も学園に来る人達が見える。
セイガと同じ体格の人影も見えれば、明らかに体躯が大きい者や、羽をもって浮遊する者、ケモノのような風体の者、人種も様々だった。
(…言葉は通じるのだろうか?)
ここに来る以上、敵対する者ではなく、おそらく意思疎通が可能な人達だと思うのだが、セイガにもちょっと上手くやる自信は無かった。
水筒に持ってきた水を一口…喉が渇く、やはり少し緊張しているようだった。
額窓を開くと、レイチェル先生の授業の場所を検索する、この一晩、色々この端末を調べ尽くしたので、セイガはこれを大分使いこなせるようになっていた、元来新しい物が好きな性質なのである。
セイガは建屋の中に入る、やけに高い廊下が続くが先程の巨人等を見たので納得する、そんな廊下を進むと、果たして、その教室はあった。
軽く息を吸い、意を決して入室する。
そこは非常に広い部屋だった、教師が使うであろう教壇があり、その背後には大きなガラスのような板がついていた。
聴衆側の椅子は舞台の観客席のように並べられ、段状になったそこには既に数十人ほどの人が好きなように座っていた。
セイガは比較的前の席を選ぶと座ってみた、すると目の前に机のような形状のものが出現した。まるで額窓のような材質のそれはどうやら自由に出し入れできるようで、同様に荷物を入れることも可能だった。
(これは便利なものだな)
使い勝手も額窓と同様だったので比較的簡単に機能が理解できた。
見ると人によっては同じく机として使っていて手帳のような物を広げている人もいた。
数刻後、ドアが開いてレイチェル先生が入ってきた。
「生徒の皆さん、おはようございます♪」
今日はグレーのスーツ姿で、タイトスカートから黒いタイツへと繋がる絶対領域がまた絶妙だった。
『おはようございます』
レイチェル先生の明るい呼びかけに各々の生徒が声を返した。どうやら何か違和感があるがセイガにもちゃんとそれは聞こえていた。
「皆さん元気そうで良かったです、それでは…あ」
レイチェル先生が壇上からゆっくりと生徒達を見渡すと、不意にセイガと目が合った。
「今日はまず、新しい生徒が来ているので紹介します」
そう言うとセイガに対して手招きをした。
少し緊張しながらもセイガが壇上に立つ。
「セイガ君です♪それでは自己紹介をお願いします」
「ええと、聖河・ラムルという者です。昨日ここに来たばかりで記憶も知識も殆どない若輩者ですのでどうかご指導ご鞭撻お願いします」
「…堅いですねぇ、他にアピールとか何か言いたい事はありますか?」
軽く微笑みながらレイチェル先生が促す。
「失礼しましたっ、ええと…それと好きな食べ物はレイチェル先生に作って貰った『はんばーぐ』です!」
途端教室内に笑いが起こった。レイチェル先生は少し照れながら
「ハンバーグのイントネーションがおかしいのはともかくとして、彼はご覧の通りとても真面目でいい性格なのでどうか皆さん、よろしくお願いしますね♪」
そう皆に伝えたのだった。
「それでは、折角セイガ君が壇上に来てくれたのでまずは『
教室が静かになる、その中で手持無沙汰になったセイガだった。
「セイガ君、まずは剣を出してみて」
レイチェル先生がそう切り出す。
「はい、わかりました」
セイガが集中すると、『剣』が現れ、そこからアンファングを取り出した。
「ありがとう、セイガ君の『真価』は『剣』、このように剣を作る事が出来ますね、さらに発展すれば別の剣を作ったり剣を使用したスキルが発動するでしょう、その力の使い方はセイガ君の希望や能力に呼応するものです」
後ろの板、モニターが点灯し『真価』の文字が映る。
「『真価』は各自最初に決めたものから変更は出来ません、しかし能力を増やしたり新たな解釈を加えたりする事は可能なのです、それは経験値という形で表されるのですが…そうね、誰かセイガ君と戦ってくれる人はいませんか?」
教室がさらに静まる…セイガは内心焦っていた。
(戦うって…いやいやレイチェル先生が言うことだから生死に関わるような事案じゃない筈だ…落ち着かないと)
とはいえ心臓の音は大きくなる。
「ならば、我が相手をしてやろう」
教室の最上段、一人の青年が立ち上がった。それと同時に周囲にどよめきが走る。
その左右の席にはお付きのように小柄なメイド服(スタンダード)を着た少女と背の高い黒いスーツの男がいた。
青年は意志の強そうな青色の瞳でセイガを見下ろしていた。
サラサラの金色の髪、すらりとした長身でありながらも引き締まった肉体、一見して高級なものだと分かる服装、そして容姿はかなりの美形の部類といえた。
「それではエンデルク君、お願いするわ…丁度いいかも知れないわね」
エンデルクと呼ばれた青年は静かに威厳を保ちながら通路の階段を降りてきた。そのような立ち振る舞いも様になっていた。
そしてセイガの前に立つ、その後ろには少女と男も控えていた、
「我の名は『エンデルク・ノルセ・プライム』、王だ」
「聖河・ラムルです。よろしくお願いします」
強く言い放つエンデルクに対して、セイガは頭を下げ静かに名乗った。
その間にもセイガはエンデルクの実力を量っていた。
「それで、どう戦えばいい?」
エンデルクの方はセイガには目もくれずレイチェル先生を見やった。
「そうね…エンデルク君が本気で戦うと大変な事になるから、あの例の防護壁を出してくれないかしら、それをセイガ君が突破できるかという勝負にしましょう」
「なるほど、それなら死人が出ないな、了解した」
エンデルクは物騒なことを含みながら深く頷く。
「レイチェル先生、流石にこのスペースで戦闘をするのは難しいと思うのですが…」
セイガが思ったことを口にした、この教室自体は広いが、戦闘するふたりが対峙しているのは教壇と生徒席の間、幅1m程の通路だからだ。
「それなら大丈夫よ、ほら」
レイチェル先生が口にした瞬間、その通路だったはずの場所は15m四方の空間に伸びたのだった。
「わわわ」
平衡感覚がおかしくなる、ただ立っているのに地面が揺れる感じがしてしまう。
「ここは戦闘等の実演も出来るように作られているのよ」
机にしてもこの通路にしてもセイガにはまだ理解できない高度な技術を持っていた。
(本当に…この世界は面白い)
戦闘前にしてはやや不謹慎だが、セイガは想像を超え続ける世界と人達に興奮していた、勿論目の前の相手に対しても。
「準備は出来たぞ」
エンデルクはただ、立っていた。
しかし、よく見るとその前の空間はレンズの先のように歪んで見える。
おそらくアレが防護壁なのだろう。
「それでは…そうね、3分間セイガ君が攻撃して防護壁を突破出来たらセイガ君の勝ちという事で、スタートはセイガ君が決めて頂戴」
背後のモニターに「03:00」と時間が表示された。
「わかりました」
レイチェル先生の説明を聞き、セイガはアンファングを両手で構える。
本来アンファングは片手剣だが、全力で威力を高める為に両手持ちを選択したのだ。
大きく呼吸をする、姿勢を整え、その期を見据える。
「聖河・ラムル……参る!」
一足で間合いを詰める、狙うはエンデルク本人…ではなく、その少し前にある見えない壁…
「はあああああっ!」
上段から剣を振り下ろす。
力が充分に乗ったその瞬間、空間が光る、まさに壁が現れセイガの一撃を弾いた。
「くはっ」
反動でセイガの姿勢が大きく崩れる。だが諦めず体勢を立て直すと今度は連撃をあちこちに放つ。だがどこにも隙は無く、悉く剣は弾かれた。
「どうした、お前の力はその程度か」
挑発するエンデルクを無視するように今度は同じ場所を何度も打ち、最後に突きを出した、がそれも無駄となりセイガは反動で膝をついた。
息が荒れていた。どうやら防護壁は床から円柱状にエンデルクを囲むように展開しているようだ。時間はまだある…考えないと…
その時、エンデルクと目が合った。
エンデルクは特に感情を見せない表情だった。おそらくまだ全力なんかではないのだろう、それでも油断をしているようには見えなかった。
(俺に出来ることは、全てやらなきゃ…だな)
セイガは昨夜、額窓を見ていた時のことを思い出していた。あの端末には自分の能力、『真価』の事柄も記載されていたので分かる部分を何度も読み返したのだった。
セイガの『真価』には過去の達人の技についても書かれていた。
果たしてセイガがそれを使いこなせるかと言えばそれはまだ無理かもしれない、それでもここで試す価値は…ある。
レイチェル先生が教壇のモニターを視界に置きながらふたりの動向をみつめていた、時間もセイガの体力もそろそろ終わりが近付いている…
セイガが遂に動き始めた。
「いくぞ…精神を加速させろ」
身体強化、基本であり奥義ともいえる力…セイガは瞬足でエンデルクに向かう、体勢を低くして、そのスピードを生かしたまま一気に剣を切り上げた。
「無駄だな」
それでも防護壁は破壊されず、強い反動でセイガは天井まで飛び上がった…が、それはセイガの想定通りだった。
「やぁぁぁぁぁぁ!」
反転して天井を踏み台にする、そして先程の身体強化を使いとんでもない速度で落下する、さらに同時で昨夜調べた別の技…
「ヴァニシング・ストライク!!」
刃に紅い煌きが集まる。
それは突きに高エネルギーを纏わせて攻撃する御業、本来なら体全体をも包む苛烈な姿なのだが、今のセイガにはアンファングを強化するのが精一杯だった。
それでも今できる最大、最強の一撃だった。
教室に大きな音が鳴り響く、アンファングが防護壁の一点、エンデルクの頭上を突き…そして刺した。
防護壁を完全に壊すことは出来なかったが、確かにセイガの剣は防護壁の内側まで届いたのだった。
セイガは弾かれ床に転がったが、アンファングはそのまま防護壁に刺さったまま宙に浮いていた。
「…通った…のか?」
エンデルクが防護壁を解いた。
アンファングが軽い音を立て床に落ちる。
「壊す事は出来なかったけれど、突破は一瞬とはいえ、していたから…セイガ君の勝ちね♪」
レイチェル先生がそう宣言すると教室中から歓声が上がった。
生徒は誰一人セイガが勝つとは思っていなかったからだ。
それほどエンデルクの実力が高いということである。
「なあ…やはり片方だけ攻撃するのは不公平ではないか?」
エンデルクが静かに呟く。右手を後ろに回しながら。
「今度は我が攻撃してお前が防げたら勝ちという方にしないか?」
再び防護壁が現れる、本来この防護壁は『自分の攻撃から』自分を護るための安全装置なのだ。
「だめです~ここでエンデルクさまがこうげきしたらセイガさまなどしにんがでてしまいます~!」
お付きのメイド少女がエンデルクの右手にぶら下がり本気の制止を求めていた、しかしぷらぷらと揺れるその姿は少し滑稽で愛らしかった。
「負けたからって大人げないですよ?ここは素直に相手を称賛するのが王たるものだと思いますがね~(笑)」
お付きの男の方はからかうような口調だったが、やはりセイガをかばってくれていた。
それでようやくエンデルクは右手を下ろした、周囲に安堵の雰囲気が生まれる。
「セイガと言ったか、今回はお前の勝ちだ」
それだけ言うとまた静かに自分の席へと戻っていった。
「はい、今の戦闘では色々な事が分かりましたね、エンデルク君とセイガ君では経験値…つまり『真価』の威力は大きく違いました、けれどもセイガ君は自分の『真価』をより深く知り、新たな力と、それから沢山の工夫でエンデルク君の壁を突破しました。以上の事から経験値=強さ、ではなくどれだけ『真価』を使いこなすか、そして自分自身を高めるかでその人の能力はどんどん強くなるのです、皆さんも頑張らないとダメですよ?」
一気にレイチェル先生が説明すると、モニターにも先程の戦闘の要点が表示されていた。
「ありがとう、セイガ君も下がっていいわよ」
そう言われてはじめて、セイガは自分が床にへたり込んでいることに気付き慌てて元の席へと戻ったのだった。
自分の席でレイチェル先生の授業を聞こうとするが、息が整わない…セイガの体と心は未だ興奮状態だった。
エンデルクやレイチェル先生というおそらく自分よりずっと強い存在…それに
「セイガく~ん、ちゃんと聞いてますか~?」
「あっ、ごめんなさい!」
「はじめての授業ですし、いきなりの戦闘で疲れているとは思うけれどきちんと聞いてくださいね?」
レイチェル先生が優しくたしなめる。自分の未熟さをその青い瞳で見透かされていそうでセイガは恥ずかしくなった。
そんなこんなもありながら初めての授業は終了した。
レイチェル先生と少し話をしたかったが、彼女は数人の生徒に囲まれ忙しそうだったのでセイガは早めの昼食を取ろうと学園内の食堂へと足を運ぶことにした。
学食はまだピークタイムではない筈だが非常に賑わっていた。
ここの敷地も本当に広い、ここまで大きな食堂は初めてだった。
うろうろと見渡すと、壁際に料理の注文が可能な場所を発見する、メニューは多岐に渡って選ぶのが悩ましかったのでセイガは日替わりの定食というものを頼むことにした。
魚やエビなど魚介類のフライとキャベツの千切り、小皿にはポテトサラダと漬物、ごはんに味噌汁が並んでいた。
因みに支払いは額窓を店員に見せただけで完了していた。
「本当に便利なものだなぁ」
両手でトレイを持ち、食べる場所を思案していると、外に面するテラスに幾つか席が空いていた。
席に着く、さやさやと流れる風が心地よい…改めて料理に向かうと揚げ物の香ばしい匂いが食欲をくすぐる。
一口、しゃおと食べる音と共に美味しさが溢れる。
黙々とセイガは食事を進めた。
その時、不意に視界の端に自分に目をくれる人影を捉えた。
「あ、ココにいたんだ~(喜)」
見知らぬ少女が近付いてきた、顔立ちは非常に美人だが、不思議と何かが欠けている印象をセイガは持った、失礼に当たると思ったのでひとまずそれは保留にしたが。
人間にしてはやや耳が長い、その少女は茶色い長い髪をふわふわと揺らしながらセイガの前の席にすとんと腰かけた。
揚げ物をも越える何かすごく分かる華やかな匂いがする。
「ラムル君…いやセイガくん?まいっかオコ達って『運命の出逢い』だと思わない?(照)」
キラキラとみつめながら少女はいきなりそう言った。
「すいません、俺はきみのことを知らないのだけれど」
「えええええ? だってさっき教室であんなにお互いみつめあっていたじゃない!オコのこの美貌とスタイルを忘れるなんてホントありえないよぅ?(ぷんすこ)」
どうやらレイチェル先生の授業にいた娘らしい、しかしセイガには少女を凝視した覚えは本当に無かった。
「それはさておきオコは大沢…ってうん、本名の方は覚えなくていいから気軽に『オコ』って呼んで(嬉)」
「はぁ…」
「オコの『真価』はもう気づいたと思うけれど『美』よ。あんまりハッキリいうのも恥ずかしいけれどオコってホラ、元々美人なんだけど『真価』でさらに磨きをかけているの。そうそうセイガくんの『剣』凄くかっこよかったね(憧)」
「ええと」
「ちなみにオコはハーフエルフなんだけど人間の方に近いからまだぴちぴちの17歳よ、そこは間違えないでね(大事)」
「はーふ、えるふ?」
「あ、セイガくんは分からないのか。エルフっていう長命で美形で知的な種族と通常の人間の夫婦から生まれた子供をハーフエルフというの、つまり両方のいいとこ取りってコトだよね(えっへん)」
「…大沢さん、ところで」
「オコって呼んで(☆)」
話すら聞いてくれない。
「オコさん、俺に何か要件があるのですか?」
あまりにグイグイ来るのでセイガは少し困っていた。
「モチロン☆さっきの戦いを見てオコ感激しちゃった!きっとこれからもセイガくんは強敵と戦うのよね…オコは美人だけれど戦う力は無いからずっと見守るだけ…でもセイガくんの傍で力になるねっ(願)」
両手を顔の前で組んで少女は捲くし立てた、支離滅裂でセイガには未だ状況がはかれなかった。
「次に挑むのは『剣聖アルザス』?それともまさか…あの学園最強の『大佐』に挑むの!?キャー!、そんな展開、オコっワクワクしちゃうっ(胸熱)」
どんどんヒートアップしていく少女。
「…ごめん、オコさんが何を言っているのか分からないのだけれど、俺は今後自己鍛錬は積んでいくつもりだが、必要もなく誰かと戦ったりはしないよ?それと君のことも良く知らないから力になるとかは…」
正直困った。
「そんなっ…まさかセイガくんからそんな言葉を聞くなんて…そんなのダメ、ダメダメよっ(怒)」
少女は拳を握りしめて言い放った。
「やはり話は盛り上がるべきよ、ヒロインを交えて!!(断言)」
ドドーーン、と背後で爆音が鳴っている気が、セイガにはした。
「それでね、最後に愛情を深めたふたりは…ってはにゃ?(困)」
「はいはい、また『モブ沢』の新人狙いが始まった」
モブ沢さんが急に浮き上がった。
背後に、とても高い、おそらく2m以上あるであろう女性が立っていてモブ沢さんを片手で持ち上げたのだ、その女性は肌も褐色で独特なオーラというか雰囲気を持っていた。
きっと種族が違うのだろうとセイガは思った。
「モブ沢じゃないもんっ、その呼び方はホントやめてよキナさんっ!(イヤイヤ)」
「セイガさんだっけ、コレも根は悪い子じゃないから許してあげてね~、ただとにかく綺麗だけど残念な子なのよ…あ、因みにうちの名前は『
綺麗だけど残念、それは凄く理解できた。
「だからオコの話を聞いてってば(ジタバタ)」
キナさんはモブ沢さんの首根っこを軽くつかんだまま去っていった。
「今度こそ運命の出逢いなのー、セイガくーん、たすけ…(悲)」
その一部始終を見ながらセイガはただ、無言で座り尽くすのみだった。
「モブ沢さん…『運命の出逢い』か…人との出会いをそんな風に思えたらきっと本当に嬉しいのだろうな…」
そう、その時のセイガは思っていたのだった。
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