第36話 欠陥奴隷は戦利品を掴み取る
爪が刺さった宝玉に亀裂が走り、甲高い音を立てて砕け散った。
中枢を破壊されたゴーレムは完全に停止した。
魔力の光が消えて、全身が瓦礫となって崩れ始める。
「うぉわっ!?」
支えを失った俺は転げ落ちた。
瓦礫に巻き込まれる寸前、身体が浮遊した。
そしてゆっくりと降下を始める。
俺は何もしていない。
突然の現象に困惑していると、真下にいるサリアに気付いた。
「大丈夫?」
「あ、ああ……助かった」
どうやら彼女が魔術で助けてくれたらしい。
無事に着地した俺は各スキルを解除する。
大きく息を吐いて、脱力して地面に座り込んだ。
消耗が思ったよりも激しかった。
「無事に倒せたわね。さすがルイス君だわ」
「かなり危なかったがな」
「そんなことないわよ。まだまだ余裕があるように見えたもの」
サリアはそう言うも、さすがに買い被りである。
俺は間違いなく全力を出していた。
長期戦になれば魔力は枯渇し、太刀打ちできなかったに違いない。
スキルの連打で勝てると確信したからこそ攻められたのだ。
余裕はほとんどなかった。
「果実は私が採っておくから、ルイス君は戦利品を貰っておいてね」
「言われなくても、分かっている……」
俺は重たい身体を動かす。
瓦礫の山と化したゴーレムの死骸をよじ登ると、その中から砕けた宝玉を発見した。
>スキル【魔力回復】を取得
>スキル【魔力駆動】を取得
>スキル【高速思考】を取得
>スキル【並列思考】を取得
>スキル【魔術耐性】を取得
>スキル【怪力】を取得
>スキル【守護】を取得
>スキル【魔術回路】を取得
>スキル【手加減】を取得
予想以上に大量のスキルを獲得できた。
使い道がよく分からないものがあるが、全体的に大収穫と言えよう。
詳細な効果を調べていると、果実を抱えたサリアが戻ってきた。
「すごいじゃない。たくさん増えたわね」
「苦労の甲斐はあったな」
「次は何のスキルを合体させるか楽しみだわぁ」
サリアに相談するのも良い気がする。
何気に的確な助言をしてくれるかもしれない。
ただし、好奇心から変な組み合わせを提案する可能性があるから、最終的な判断は自分でしなければ。
サリアは来た道を指すと、俺の手を引いて歩き始めた。
「これで試験は終わりね。さっさと帰りましょ」
「そうだな」
「――マイケル、あなたも先に帰ったら? もう見所は無いと思うわよ」
サリアがそばの茂みを見て、ギルドマスターの名を呼んだ。
茂みがほんの少しだけ揺れた気がする。
慌てて【混合探知網】を使うも、何の反応も無かった。
「誰もいないが……」
「マイケルはずっと私達を監視していたわ。きっと試験の合否を判断するためね」
サリアは当たり前のように言う。
彼女はずっと気付いていたらしい。
(まったく気付かなかった)
サリアが無意味な嘘を言うとは思えない。
どうやらギルドマスターは俺達を監視していたようだ。
俺のスキルでは気付けなかったことから、かなり高度な隠密系スキルを有しているものと思われる。
「私と殺し合える天才よ? いくらルイス君でもまだ敵わないわね」
俺の内心を察したのか、サリアは愉快そうに言うのであった。
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