第3話
「では カール 目覚めの儀式に行きましょう」
母に呼ばれ、馬車で教会に向かう。 馬車の中は父のフィリップ・フォン・アーレンハイトと母のアグネスと俺の3人だ、後は馬車の御者としてハワードとシンディーが座っている
「父上、母上 目覚めの儀式って何をするんですか?」
俺は初めてのイベントにワクワク、ドキドキしながら尋ねた。
「う~ん そうだな、まぁ 教会に着いたら分かるぞ!」
「え~~~ 父上 それは無いんじゃないかな! 教えて下さい」
やっぱり父上はアバウトだ、よくも伯爵家の経営が出来るもんだ
(まぁ 実態は第1夫人のマルガレータ母さんが全て仕切っているのだけどね)
そんな話をしている裡に教会に着いてしまった。
シンディーが馬車の扉を開けて、父、母 そして俺の順で降り立つと 教会の前には既にリザイア司教が立っていた
「領主様 本日はご子息様の目覚めの儀式 おめでとうございます。 本日、儀式を執り行う 司教のリザイアでございます。」
「リザイア司教殿 フィリップ・フォン・アーレンハイトだ! そして妻のアグネスと5男で目覚めの儀式に望むカールだ 本日は宜しく頼む」
挨拶が済むとシスターに導かれ 質素だが綺麗に整えられた応接室に通され儀式の準備が出来るまで待つ事になった。 その間にリザイア司教から目覚めの儀式について説明を受ける
先ずは祭壇の前で俺が跪いて至高なる創造神の女神ディアナへ挨拶をする事から始まるらしい、まぁ 挨拶と云っても名前を云うだけだけど その後 リザイア司教殿が女神ディアナへ俺の才能を目覚めさせる聖句を唱えるらしい。
その聖句により聖光を浴びる事で聖紋が発現し目覚めの儀式が終わる。
目覚めの儀式が終わると胸に直径2cm程の小さな聖紋が浮かぶ、人によって聖紋の型は違うのは個人の才能を表している為らしい。
通常は偏りが有る為に歪な三角形や稀に四角形が現れる、過去には五角形や六角形も居たらしいが綺麗な正多角形は現れないみたい そしてこの聖紋は儀式の後に見えなくなる 聖紋を表すには本人が聖句を唱える必要が有るみたいだ。
言うなれば 才能という物を聖紋と云う形で具現化する事が目覚めの儀式らしい。
そして聖紋の型はそのまま女神ディアナ様からの加護とみなされる
魔法寄りの加護だったり、剣技寄りの加護だったり、知性寄りの加護だったりするようだ
よし 今度 父上や母上の聖紋を見せて貰おう。
(実は男女間で聖紋を見せ合うのは親子、兄弟姉妹、夫婦間だけらしい)
兄さんや姉さん達の聖紋はどうなんだろうな、そう云えば一度も見たり、聞いたことが無いな
きっと第1夫人のマルガレータ母さんはバリバリに知性に特化した聖紋で、俺の母である第2夫人のアグネス母さんは魔法に特化しているのだろうな、と云う事は第3夫人のマティルダ母さんは剣技に特化しているのか
長女のアンナ姉さまは魔法の才能が有るって言ってたから、多少は才能って受け継がれるのかな?
では、ハワードはどうなんだろう? 剣技も魔法も中級って言ってたな 。。。。 解らん!
そんな詰らない事を考えていたら、目覚めの儀式の準備が整ったよで シスターが迎えに来た。
正面には天上界と女神ディアナ様の様子が描かれ、祭壇には綺麗な花が生けられ燭台には火が燈されている。
俺は父上、母上に挟まれ祭壇の前でリザイア司教の始まりの言葉を待っていた。
「これより カール・フォン・アーレンハイトの目覚めの儀式を始める!」
静寂に包まれた教会の中を威厳に満ちたリザイア司教の声が響き渡る
「カール・フォン・アーレンハイト 至高なる創造神である女神ディアナ様の前で跪き宣誓の挨拶をしなさい!」
「女神ディアナ様 カール・フォン・アーレンハイトでございます 本日は宜しくお願い致します。」カールは祭壇前より一歩前に進み出て祈りを捧げた。
次はリザイア司教の聖句の発句である。
「至高なる創造神である女神ディアナに聖句を捧げ。。。。。。」から始まり
言葉と云うよりも音楽のような様々な音階による言葉の羅列 この間 10分以上 よく聖句なんか覚えているな~ 眠くなってきた。
「カール・フォン・アーレンハイトに聖紋を授け願いあげます。」
やっと 終わったと思ったら頭の上から聖光が下りてきて そのまま気絶をしてしまった。
この時、天上界では女神であるディアナと彼女の担当上級神であるユピテルが待ち構えていた。
これは事故の説明と補償について話さなくては成らない為だった。 但し担当上級神であるユピテルは現時点では神格の関係でカールに逢う事は出来なかった。
これは現時点で一級神(仮)である女神ディアナレベルまでしかカールの魂が馴染んでいない事が原因だった。 今後、カールの魂が数百年の歳月を経て上級神であるユピテルの神格まで馴染む事に成り、その時点で女神ディアナの神格を抜く事になってしまうのだが。。。。。
そんな関係でカールへの説明は全て女神であるディアナが行うべき事として決められていた。
更に今回の事故は天上界でも初めての事案であり、各方面の神々が注目をしていた。
その為に女神であるディアナと彼女の担当上級神であるユピテルは事前に何回もリハーサルを繰り返し、カールから質問される質疑応答集が作られていた。
事故の説明は事実を話すしかない。 そしてひたすら謝る。 そして問題になるのが補償と云うか賠償である。
問題はカールの魂であった。 この魂が邪悪な存在だった場合は最悪のケースを考えなくては成らない。 質疑応答集はこの問題をメインとして作られていた。
自分が管理する次元とは異なる次元の人間に対して如何なる補償を行うかである。 実を云えばディアナには出来る補償など限られていた。
元々、自分が管轄している次元や時間、時空なら問題なく元に戻す事が出来るのだが、自分より上位の神が管理する管轄の事には神としての権能が及ばなかった。
そして上級神であるユピテルは自分の管轄内で起こった神身事故に対して介入する事が許されていなかった。
何故、今までこの様な事案が発生しなかったかと云えば、当たり前である。
幾ら神だからと云え、他の神が創った世界に干渉する事は出来ない。 また一級神(仮)である女神ディアナでも自分の創った世界で有れば、神としての権能で次元や時間、時空を巻き戻して修復をする事が出来る。
もし、今回の神身事故で綾小路公麿の魂がユピテルが管理する次元や時間、時空に飛ばされていれば、話は簡単であった。 ユピテルが自身の権能において巻き戻して修復をする事が出来たのだが、残念な事に綾小路公麿の魂が自身の管轄外に飛ばされてしまったのだ。
そういう意味で今回の事案は特殊であり不幸な出来事だった。
綾小路公麿の魂=カール・フォン・アーレンハイトは数奇な運命を辿る事になる
カールは女神であるディアナと彼女の上司である上級神ユピテルの権能の一部を受け継いでいた。
この時点でカールは既に半神と云える存在であった。
これから始まる面談の如何によって女神ディアナは一級神(仮)の仮が取れるかどうかが決まるのだ、更に最悪の場合には降級もあり得るだけに真剣だった それは別室で待機している上級神ユピテルも同様だった。
下界では カールが跪き、司教が女神ディアナへ呼び掛けが始まっていた。
身嗜みを整えた女神ディアナもカールを饗すもてなす準備は万全であった。 全ては初めの印象に掛かっている
そして天上界では女神ディアナが進退を掛けたカール・フォン・アーレンハイトとの面談が始まろうとしていた。
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